【森島 賢・正義派の農政論】国民民主党の醜い媚態2018年7月2日
国民民主党の事実上の賛成で、労働規制がさらに緩和されることになった。その狙いは、労賃の実質的な切り下げである。いよいよ「国民」は労働者の側に立つのではなく、労働者を搾取する側に立つのだろうか。
先週、「国民」は高プロ制度、つまり、残業代なしで長時間労働を強いる制度の成立に加担した。「国民」は「立憲」を排除し、「自民」や「公明」などと共同して、付帯決議をしたのである。「国民」は、最悪の事態を避けるためだというが、しかし、これは苦しまぎれの言い訳に過ぎない。
これが「国民」の、いわゆる対案路線の本質である。
ここには2つの問題がある。
1つめの問題は、今後、政府は野党「国民」の考えも取り入れたとして、この制度の正当性を主張することである。それは間違いない。「国民」は、そうした口実を政府に与えることで、醜い媚びを売ったのである。
政府は、この付帯決議を尊重する、というだろう。しかし、実際には尊重しないことを、農業者はTPPの付帯決議で、苦い経験をしている。
2つめの問題は、「国民」が野党の連携にヒビを入れたことである。「国民」が、こうしたことを続ければ、来年に迫っている参院選での野党間の選挙協力にもヒビが入るだろう。その結果、野党統一候補が立てられず、複数の野党候補が共倒れになり、選挙に負けて、安倍一強政治が続くだろう。
つまり、安倍晋三首相に醜悪な媚態を示し、安倍一強政治に加担することになる。
◇
なぜ、こんなことになったのか。
「国民」には、高プロ制度が成立したのだから、これで反対運動は終りだ、と考える幹部が多い。しかし、そうではない。反対運動は、今後も続く。続けねばならぬ。
もしも、反対運動を続けなければ、今後、高プロ制度の適用業種は広げられるだろう。また、いまは年収1075万円以上の労働者に限定して、適用する労働者をしぼっているが、やがて引き下げられるだろう。
それは、以前からの財界の執拗な要求である。経団連は年収400万円以上を主張している。反対運動をやめれば、対象になる労働者は、とめどもなく増えるだろう。
◇
しかし、反対運動を今後も続ければ、この制度を骨抜きにすることができる。それは、対象業種を広げない運動であり、年収の限度額を下げない運動である。
もう1つの反対運動の方法は、該当する各企業に対して、高プロ制度を採用しないことを、労組の力で要求することである。労働者の力を労組に結集すれば、それは実現できる。
こうすれば、高プロ制度は有名無実の制度になる。
このような運動の中でこそ、農業者や労働者など経済的弱者のための野党は強力になる。その結果、支持率も高くなる。それは、安倍一強政治の打破へつながっていく。
◇
以上のように、高プロ制度に反対する運動は、まだ終わっていない。大きな山を越えたとはいえ、運動は今後も続く。その途中で、「国民」は「自民」や「公明」に媚を売って、運動から離脱したのである。
このことを、「国民」の幹部たちは分かっていない。自分自身の政治行動が何をもたらすかが、全く分かっていない。そんな幹部は、政治家になるよりも、無責任な評論家になればよかったのだ。
◇
ではなぜ、こんなことが分からないのか。
それは、「国民」が現場の労働者の声を聞かないからだろう。聞くための組織さえもないからだろう。だから、自分の小さなアタマの中だけで考えるしかない。運動の中で考え、誤りを見つけ出し、それを修正する、という科学的で、しかし、初歩的な訓練ができていない。
そんな政党の存在意義はない。来年の参院選で淘汰されるしかないだろう。
「国民」が、そのような政党にならないためには、政治家を志したときの初心に立ち帰り、農業者や労働者などの弱者のための政治を目指すことである。そうして、こんどの誤りを真摯に反省し、弱者のための野党間の連携に立ち戻ることである。
弱者は、そうすることを「国民」に期待している。対案路線などといって、強者に媚びを売ることは期待していない。
(2018.07.02)
(前回 米朝の核攻撃の意志と能力)
(前々回 弱者にとっての朝鮮問題)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(1)新しい仲間との出会い 次世代へつなげるバトン 青森県 JA八戸女性部 坂本順子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(2)この地域を、次世代に繋ぐ、私たち 山梨県 JA南アルプス市女性部 保坂美紀子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(3)私たちの力で地域をささえ愛 愛知県 JA愛知東女性部 小山彩さん2025年1月23日
-
旧正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第325回2025年1月23日
-
地元産米を毎月お届け 「お米サポート」スタート JAいずみの2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日