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【熊野孝文・米マーケット情報】7月中に新米刈取り 千葉の農家2018年7月10日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

五百川 7月4日に君津市の稲作農家を訪ねた。地元のコメ集荷業者の案内で訪れた稲作農家Yさんの水田は緩やかな傾斜地に棚田状に広がっており、一番高い場所にある水田に植えられた水稲はすでに穂が出ていた。Yさんによると出穂した日は6月24日だという。早期米産地千葉県の中でも刈取り時期が早い君津市だが、それにしても早過ぎる。刈り取り時期は7月25日と見込んでおり、今月中に30年産の新米が出回ることになる。

(写真)穂揃いした「五百川」

 

 この極早生品種の名前は「五百川」で、2003年に福島県中通りの生産者がコシヒカリの中から特に早く出穂した突然変異体を8年かけて育種し、2010年に品種登録された。
 名前の由来は近くの川の名前からとった。本来、福島県で作付が拡大すべき品種なのだが、不幸にして2011年の震災、原発事故により、作付地区は宮城県、秋田県や山梨県、千葉県へと広がって行った。29年産では宮城24t、秋田27t、福島82t、埼玉26t、山梨69t、千葉91t、合計318tが検査を受けている。千葉県で本家の福島県を上回る検査数量が積み上がっている。
 昨年11月にこの品種の普及拡大を図っている東京の卸と山梨県の業者が千葉県の集荷業者や生産者を集めて30年産での作付依頼をした。卸や業者がこの品種の最大の魅力としているのは、積算温度が低くても早く登熟することで、収穫期が早いため大規模生産者が作期分散して農作業効率を上げるのに適しているという。千葉県で普及を図るのは、五百川であれば七月下旬から八月上旬の刈り取りが可能で、台風が来る前に収穫できることをあげる。
 また、端境期には千葉県で超早期米が収穫されれば関東圏の工場で直ぐに精米して消費者に届けられることもメリットとしてあげている。昨年の11月ごろは、29年産米が逼迫し、端境期の今年6月から9月にかけて価格の上昇が見込まれていたことから、この時期に出回る極早生米を入手したいというのはどこの卸でも同じ思いであった。その魅力を感じているのはYさんも同じで、昨年から五百川を栽培しているが、昨年産は自社で搗精・袋詰めして農協の直売所で㌔550円で販売したが、8月4日に販売開始して19日には売り切れたというのだから、消費者にとっても盆前に出て来る新米は物珍しかったに違いない。
 Yさんが五百川の魅力としてもう一つあげるのが、この品種が短稈であること。取材した7月4日は東京からアクアラインで君津に向かう際、強風で大型バスが振れるほどであったが、五百川は倒伏しないという。また、コシヒカリの突然変異体であることから、食味についても「粘りはやや劣るが、甘みはコシヒカリより上」と評している。
 30年産の収穫時期が早いのは、こうした極早生品種だけではなく、南九州の早期米コシヒカリも刈取り時期が早まっているからだ。宮崎県によると30年産早期米は西南暖地では7月14日から16日の連休中に刈取りが始まると予測している。今週12日には、その早期新米の7月中渡し条件の取引会が予定されており、例年より1週間早く新米の取引価格が明らかになる。
 まさに新米商戦の口火が着られようとしている矢先に驚愕すべきニュースが流れた。それは新潟県で30年主食用米の生産量が当初見込みより4万1000tも増えると県が公にしたこと。プレスリリースしたのではなく、県議会の産業経済委員会で議員の質問に答える形で明らかにしたもので、6月に実施した県内35の再生協議会からの聞き取りで、3月時点での調査結果52万4000tから56万5000tに増えたというのだ。新潟県では主食用米の生産量が増える要因について(1)30年産から直接支払い交付金10a当たり7500円が廃止されたこと、(2)ナラシ対策の達成要件が無くなったことを上げているが、これらのことは当初から分かっていたことで、僅か3か月の間にこれほどまでに主食用米の生産量が増えるという説明では十分ではない。最大の要因は、やはり主食用米の価格高騰にある。特に新潟コシヒカリは量販店等で販売される家庭用精米の絶対量が不足したことから高騰を続けており、生産者にとっても現在の価格は魅力であるに違いない。
 30年産主食用米増産は新潟県だけの特別な現象なのか? それは違う。東北、北陸、関東では主食用米の生産量が増える。東北のある県では、商系集荷業者が30年産の方針として主食用米対主食用米の集荷取組方針をこれまでの6対4から8対2にする方針を組織決定したところ、その情報を知った農協の中にはその比率を10対0にする宣言したところもあった。

 

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