【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(091)会社名と業務内容がつながらない...2018年7月20日
前回、精密農業のことを記したが、精密機械の世界では名前を聞いただけでは門外漢には業務がわからない企業が数多く存在する。こうした他業界の動きを見ると、将来的には農業・食料分野でも似たような傾向が加速するのかもしれない。
7月の3連休を活用し遅れていた日々の作業を消化しつつ、Apple社のSupplier Listを簡単に検討した。昨年6月22日、日本経済新聞の電子版記事で「実は幻想、iPhoneの『日本製部品頼み』」という記事が流れている。同記事は、「アップルサプライヤーとして掲載された269社中、台湾企業は71社、米国企業は60社、日本企業は55社である」としているが、これは本社の国・地域別のようだ。
しかし、日本企業には、日本人が設立した企業もあれば、外資系企業の日本法人もある。さらに、日本と海外の合弁会社もある。その上で55社の日本企業をどうリストアップしたのか、やや気になっていたのだが、なかなか良く見る機会がなかった。
今回見た2018年2月の公表リストでは、上位200社が調達の98%を占める。リストにはサプライヤーの名前と住所(アドレス)がアルファベット順に掲載されているため、日本企業らしい名称と、住所が日本国内のものを拾う地道な作業を30頁実施した。
※ ※ ※
アルプス電気、旭硝子、第一精工、ダイキン工業...あたりまでは馴染みがある。ダイキン工業は昔の大阪金属工業だったな...と。Dexerials Corp....これはデクセリアルズ...、確か筆者が宮城大に来た頃、ソニーケミカルがソニー宮城を買収し、その後ユニゾン・キャピタルの出資した持株会社の傘下に入り...名称が変わる。フジクラ、浜中松琴工業、ヒロセ電機、日本航空電子工業、ジャパンディスプレイ、JX金属、京セラ、マイクロン、ミネベアミツミ、村田製作所、日亜化学工業、日写。
以上のうち、浜中松琴工業は台湾企業であり、Googleで検索しても全て中国語だ。漢字表記のため1982年創立はわかるが、門外漢の筆者には会社名が何故日本語読みなのかがわからない。いずれ少し深く調べてみたい。日本航空電子工業はNECグループ、ジャパンディスプレイは、ソニー、東芝、日立のディスプレイ部門の連合軍、JX金属は旧日本鉱業と理解した方がピンとくる。マイクロンは米系、ミネベアミツミは、日本最初のミニチュアベアリング(当時は日本ミネチュアベアリングと表記)の製造企業であり世界に展開している。日写も現在ではNISSHAだが、元々は日本写真印刷という会社である。
さらに、日新製鋼、日東電工、そしてNOK Corp. これは旧日本ベアリング製造である。パナソニックの前後にはON Semiconductor とPegatronという恐らくは外資系2社が日本の住所を所有している。次はルネサスエレクトロニクス(Renesas Electonics Corp.)である。こちらは三菱電機と日立製作所から分社化したルネサステクノロジと、NECから分社化したNECエレクトロニクスが経営統合した企業である。
ローム、セイコー・アドバンス、シャープ、SMK Corp.とここは有名どころだ。SMKは老舗の昭和無線工業の略称であり、世界的な電子部品メーカーである。そして、ソニー、住友化学、太陽誘電、TDK、戸田工業、東レ、豊田合成、ツジデン、となり、最後にUAC J Corp. これは少し悩んだ。
旧古河電機工業が1964年にスカイアルミニウムという会社を設立したが、2003年に経営統合して古川スカイとなる。一方、旧住金属工業が住友軽金属となり、古川スカイと経営統合し、2013年にUAC Jとなる。業界が異なると全くわからない。
ちなみに豊田合成はトヨタグループの企業の中で唯一、トヨ「ダ」と発音するし、上には述べていないが、東陽理化学研究所のように、サプライヤーリストの住所は中国江蘇省崑山市だが、1950年に新潟県燕市で設立された立派な日本企業であり、金属の表面加工では世界トップレベルの技術を持つ企業もある。アップル製品の輝きはその賜物である。
ざっと見てきたがこれだけだと40社程度に過ぎない。筆者が見落としている企業がまだまだあると思うが、コラム故、ご容赦頂ければと思う。これらの企業を見ると、ローカルとグローバルが混然一体としている。それにしてもアルファベットの略語の企業名はよくわからない。それも企業戦略の1つか。
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