【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(093)コメ・米・コメ2018年8月3日
精米ベースの数字だが、2018/19年の世界のコメ生産量は4億8780万tと見通されている(米国農務省7月公表、以下同じ)。このうち、中国は1億4220万tで全体の29%を占める。第2位はインドで1億900万t、全体の22%、そしてこの2か国で2億5120万t、全体の51%を占める。中国とインドで世界のコメの半分以上を生産していることは意外に認識されていないかもしれない。
2017年8月1日時点でのコメ生産ベスト5は、中国、インド、インドネシア(3730万t)、バングラデシュ(3470万t)、ヴェトナム(2907万t)である。これにタイ(2120万t)が続き、ミャンマー(1340万t)、フィリピン(1235万t)と、ここまでが1000万t以上の生産国である。続く第9位がブラジル(802万t)で、第10位に日本(760万t)が登場する。以下はパキスタン(740万t)カンボジア(550万t)などが続く。米国のコメ生産量は676万tである。
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では、世界で最も沢山コメを消費する国はどこか。これも圧倒的に中国(1億4400万t)である。以下、インド、インドネシア、バングラデシュ、ベトナム、フィリピン、タイと続く。こちらは多少順位が変わるが、概ね生産量に対応した消費量である。
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これらのコメが世界の市場に貿易商品としてどのくらい出てくるのかを見ると、2018/19年度では4938万tと見通されている。概ね生産量の10%だ。欧米人の主食である小麦の場合、生産量に対する輸出量の割合が25%である。これと比較すればかなり低く見えるが、飼料穀物の代表であるトウモロコシの15%に比べればそれほどではない。むしろ、時代の流れを振り返れば、相当変化してきているとの感が強い。
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例えば、ウルグアイ・ラウンド(UR)農業合意は1993年12月である。わが国でコメ問題が最もヒートアップした1993/94当時、世界のコメ生産量は同じ精米ベースで見た場合、3億5540万tであり、貿易量は1630万t、つまり世界の生産量の5%にも満たなかった。言い換えれば、この当時の世界のコメは95%が生産地で消費され、国際穀物市場にはほとんど出てこない超ローカル商品であり、国際コメ市場自体も極めて「底の浅い」マーケットであった。小麦やトウモロコシと比べればまだ輸出の割合は低いものの、この四半世紀で世界のコメ貿易量は大きく増加してきたということになる。
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数値で見た場合、1993年から2018年までの25年間で、コメの生産量は絶対数では1億3240万t増加し、平均成長率は100.9%である。同じ時期に貿易量は1630万tから4938万tと3308万t増加し、平均成長率101.6%と生産量の伸びを大きく上回る。
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そうなると問題は貿易、つまり輸出と輸入である。言い換えれば国際コメ市場における主要な売手と買手は誰かということだ。UR合意後、数年を経た貿易数量と現在の数量を比較したものが以下の表である。生産量、輸出量、輸入量ともに上位5か国のみを記した。
生産量の規模は拡大しているが、上位5か国はほぼ不動である。輸出も顔ぶれは概ね変わらないが、どこが大きく伸びているかを見ると興味深い。特にインドの伸びが著しい。また、当時は中国がコメの輸出国であったことがわかる。その中国は、ここ何年もにわたり、世界最大のコメ輸入国でもある。輸入量においてEUはメンバー各国の合計数字だが、ナイジェリア、コートジボワール、イランなど、アフリカや中東諸国でのコメ輸入が着実に伸びていることもわかる。
ローカル商品であったコメは、四半世紀の時を経て、良くも悪くもグローバル貿易商品になってきた訳だ。この間、我々のコメに対する意識はどう変わったのだろうか。
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