【森田実の政治評論】罷り通る道義なき力づくの安倍政治の行方2018年8月4日
「剛強なるは必ず死し、仁義なるは王たり」
(『故眞宝』)
「力ずくで世を制する者は必ず滅びる。仁と義をもって立つ者は王者となる」という意味の格言です。これは歴史法則といえるものです。
◆剛強な自公連立政権
2018年の通常国会は、日本の政治が深刻な危機にあることを露呈しました。多数派の自公連立政権とこれに同調する一部の野党勢力は、主要野党の要求を無視し、数の力をもって自らの自己的主張を押し通しました。安倍政権と自民党とこれに同調する勢力は、傲慢な態度で野党を抑えつけました。
議会制民主主義は多数決原理を承認しているだけではなく、少数意見の尊重と与野党間の話し合いを前提としていますが、安倍政権下の与党勢力は少数意見を無視し野党を軽視しています。これでは議会制民主主義は成り立ちません。安倍自公連立政権が今の傲慢な姿勢を改めず、剛強路線を貫くならば、日本の議会制民主主義は死滅してしまうでしょう。
いまや日本は、形式的には議会制民主主義の国ですが、実質は独裁国家に堕してしまっています。日本は「一将功成りて万骨枯る」ような国になりつつあります。
◆利己的な選挙制度改革
2018年の通常国会は最後の段階で大きな過ちを犯しました。それは、自民党ただ一党の利益のために強引に選挙制度を変えたことです。自民党が今確保している議席を、2019年参院選で減らさないための利己的な選挙制度をつくったのです。究極の党利党略です。
選挙制度は国民にとって公正なものでなければなりません。自民党と自民党支持者だけが有利になるような選挙制度改革は自民党の党利党略であり、許されるべきではありません。
選挙制度は、少なくとも主要政党の合意にもとづいて行われるべきです。安倍政権と自民党は、今回の参議院議員の選挙制度改革において、取り返しのつかないほどの大きな過ちを犯したのです。
◆IR法の制定は道義の放棄
安倍内閣と自民党・公明党・維新が推進したカジノを含むIR法の制度は、日本の政治の堕落を示すものです。国民道義の規範となるべき国会と政府が、国家の名においてギャンブルを奨励するのは、道義に反する行いです。日本政府と自民党・公明党はどうしてこんな愚かなことをするのでしょうか。
安倍政権は否定していますが、多くの国民は安倍政権がトランプ米大統領から頼まれてIR法を制定したとの噂を信じています。真相は藪の中ですが、日本政府と自公・維新は公徳心に反することをやってしまったのです。日本国民の道義は、安倍政治によって踏みにじられたのです。
とくに看過できないのは、IR法の審議が西日本豪雨のさなかに強行されたことでした。IR法の担当閣僚は石井国土交通大臣です。石井大臣は災害現場に急行し、救助と復旧復興のために指揮をとるべき責任者です。しかし、石井大臣はIR法優先の自民党の意向に従い災害現場に入るのを遅らせざるを得ませんでした。石井大臣と公明党はIR法制定の責任を負わされることになりました。公明党の意に反することかもしれませんが、このことは今後の公明党にとって大きな負担になるでしょう。
◆嘘とごまかしが罷り通る政官界
若い頃私は宗教と道徳の起源を研究しました。今では世界宗教に成長した宗教の創始者の初期の言葉を調べたことがあります。すべての宗教の最初の宣言に、一つだけ共通した言葉がありました。それは「他人をだましてはならない」という言葉でした。あらゆる道徳の出発点は「人をだまさない」「嘘はつかない」ということでした。とくに社会において指導的役割を担う者は、人をだましたり嘘をついたりするような事は絶対にしてはいけないのです。指導者は正直で誠実でなくてはならないのです。
しかし、今の日本の指導的政治家と指導的官僚のなかには平然と嘘をついて恬(てん)として恥じない者がいることが明らかになりました。それだけでなく、官僚の最高指導者のなかに女性報道記者に下品極まりないセクハラ発言をする者がいたのです。驚くべきことです。
日本の指導的官僚は、ごく最近まで紳士だと信じられていました。紳士とは礼儀正しく品格のある人物、という意味です。
いまや指導的官僚の信用は崩れました。誇りを持たず政治権力者のゴマスリ人間のごとき卑しい人物が官僚上層部にいることが明らかになったのです。安倍総理の責任は重大だと思います。
政官界が捨てつつある道義を取りもどす必要があります。国民自身がしっかりしなければならない時代がきました。次の選挙では道義ある人物を選ばなければなりません。これが道義再興への出発点です。
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