【熊野孝文・米マーケット情報】新米価格は高いのか? 安いのか? 現物取引会の現場から2018年8月28日
南九州の早期米に続き、8月上旬には千葉、茨城の早期米の刈取りが始まり、盆前にはピークを迎え、先週は北陸、新潟からも初検査の情報がもたらされるなど例年より早いペースで30年産米の収穫作業が始まっている。
8月17日には全国の米穀業者が千葉市に集まり新米取引会を開催したのに続き、翌18日には茨城でも新米取引会が開催され、22日には日本コメ市場が主催した取引会が全国3会場で開催され、ここでも新米が取引された。
30年産米の価格はどう動くのか? 業者間の新米取引会の模様を通じて、30年産米の巡る環境の動向をリポートしてみる。
◇ ◇
17日に千葉市内のホテルで開催された千葉県穀類連絡協議会主催の新米取引会には例年より多い65名が参加したなか3名の場立ちを立て取引会が始まった。始まったもののなかなか買い声が上がらない。
声が出ない原因は、売り手の産地側が買い手の消費地側業者の買い声を待っていたためだが、第一声は新米価格の位所を示す水準になるため買い人も慎重であった。ようやく買い声が上がったのが茨城コシヒカリ1等の買いで、競り合った結果、9月10日まで受渡し条件で置場1万3800円(税別以下同)で1100俵が成約した。
この後、8月中渡し条件で千葉ふさこがね1等が置場1万3300円で次々に成約、即積み条件で千葉コシヒカリ1等が置場1万4000円で成約するなど活発な取引が進み、埼玉の彩のかがやきや彩のきずな、栃木のあさひの夢などが10月まで渡し条件で成約、総計で1万230俵が取引された。
昨年の新米取引会の状況と比較すると何点か異なる点がある。第一点は参加者数が多かった割には成約数量が昨年と比べ約半分に留まったこと。特に千葉ふさおとめの売り物が出なかったことや千葉・茨城のあきたこまちの売り物も極端に少なかった。この取引会で最も売り物を多く出した集荷業者に聞いてみると「あきたこまちは地場の業者が庭先で高値集荷をしており、そこまでの価格で我々は買えなかった」と言っていた。
また、農協系統の買取価格も高値でそこまで追随できなかったため、生産者には「とりあえず内金で出してもらうことにした」とも言っていた。例年あきたこまちを売りに出す地元の集荷業者によると資本力のある大手は自前のパレットを用意、それで集荷するように依頼して来たところもあるとしており、大手資本に因る囲い込みが進んでいることが伺えた。盆明けには大手量販店で千葉ふさおとめが5kg1680円(税別)で山積みされていたのを見て、こうしたルートが出来上がっているのを得心した。
第二点は、取引会開始前に収穫されたばかりの新米のサンプルが回され、1、2等格差が500円に設定されたことで、取引の中では1等500俵、2等500俵というセットで成約したものもあった。農産物検査法では1等、2等の格付け基準の規格はあるのだが、30年産米は高温障害による背白、腹白、基部未熟、胴割れ、充実度不足などが際立っており、検査官は格付けに苦労しそうだ。
実際、初検査したあきたこまちのサンプルの画像を見せてもらったが、とても1等の等級印を押せるような代物ではなかった。品質劣化は関東ばかりか三重や北陸、新潟も同様で今後大きな問題になりそうだ。このことが余計に消費地業者の新米手当てに水を差している。業務用小売店の中には「29年産1等が持込1万3200円で買えるので、30年産は様子見です」と言っているところもあるほか、新米の荷動きが芳しくないためか仲介業者なかには「卸さんは29年産を11月まで引き延ばすつもりじゃないんですかね」と予想しているところさえある。
こうした米穀業者の見方が良く価格に反映されているのが、東京コメ先物市場である。
8月24日の引け値は当限の9月限は1万3400円であるのに対して期先の2月限は1万2900円まで下落している。当先の鞘は500円もの逆ザヤになっている。29年産の最終受渡月である9月限がしっかりしているのに対して30年産米の受渡し限月の10月限から2月限まで軒並み弱い。これは当業者が30年産は"先安"と見ているからに他ならない。
ところがJA系統の30年産米概算金は前年産にくらべ500円から700円、中には800円も値上げしているところもあり、現在、確認されている概算金では昨年より値下げしたところはない。これだけ見るとJA系統と商系業者は真逆の対応をとっていると言える。
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