【城山のぶお・リメイクJA】第3回 二軸論の破たん2018年8月31日
二軸論とは、JAは職能組合であると同時に地域組合の性格を持つ組織だと主張することをいう。今回の農協改革において、大きな争点であったはずのものが、実はこの二軸論であった。
二軸論は、政府に促され全中がつくった、「JAグループの自己改革」(平成26年11月策定)に示されている。この自己改革案の第2「農業と地域のために全力を尽くす」の中で、「JAグループは、農業者の職能組合と地域組合の性格を併せ持つ、食と農を基軸として地域に根ざした協同組合を目指す」としており、さらには、「こうしたJAが今後果たしていくべき役割を農協法上に位置付けることを検討する必要」とまで言っている。
こうした二軸論に、当時の西川公也農水大臣が苦言を呈し、農協法改正国会では審議の対象にすらされなかった。JAグループが主張してきた二軸論は、今回の農協改革・農協法改正を通じて、完全否定されたといっていい。
にもかかわらず、今次農協改革についての総括が行われていないためか、全中は依然として二軸論に基づく運動展開を続けているように見える。平成29年10月に行われた衆議院総選挙の公開質問状で、全国農政連は、JAグループは「農業者の職能組合と地域組合の両方の性格を併せ持つ組織」として認めるよう主張していることがそのことを物語っている
この結果、JAの存在意義・役割について、政府とJAの間で大きな認識の差が拡大する事態が進行しており、早急な見直しが必要になっている。
JAが、農業者の職能組合と地域組合の性格を併せ持つ組織であるということなどはどうでもいいことではないか、それを二軸論などといってことさら問題とするのに何の価値があるのか、といった声がJAから返ってきそうだ。
現に従来路線踏襲型の運動展開に疑問を呈する声はJAグル-プ内で表面化してはいない。学者研究者には、従前どおり二軸論を支持・主張する人もいる。
だが、例えば二軸論を展開する弊害は、今後の最重要の課題である准組合員対策を考える上で鮮明に出てくる。准組合員対策でJAグループが主張しているのは地域インフラ論だ。これは衆参両院の付帯決議にもなっている。
地域インフラ論は典型的な二軸論であり、インフラが整っていない地域においては、農業者でない人びとのニーズに応えるため准組合員制度は必要であるというものだ。これは、JAは全ての地域とは言わないまでも、農家だけでなく地域住民のために存在する組織であると主張しているのに等しく、これが地域組合論の大きな特徴だ。
この議論からは、インフラが整っている地域では准組合員に事業利用規制をかけても良いということになりかねず、二軸論では対抗できない。全国的に見てインフラが整っていない地域はほとんどないからだ。准組合員問題でインフラ論(地域組合論)を持ち出すことは、かえって政府に事業利用規制の口実を与えることになりはしないか。
今後の准組合員対策の基本は、インフラ論はほどほどにして、准組合員は農業振興にとって必要な存在であることを組織の内外に明らかにし、国民的理解を得ることが重要であろう。
職能組合であれ地域組合であれ、JAは農業協同組合であることに疑いの余地はない。二軸論は、戦後70年を経て清算が迫られている、戦前の産業組合時代の残滓を引きずる農協論と理解すべきで、二軸論に代わる新たな農協論が求められている。
二軸論は、これまで学者研究者の間で議論されてきた、職能組合論と地域組合論がその背景にある。次回はそのことについて触れたい。
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