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【リレー談話室・JAの現場から】対話の効用・変わることで自己改革2018年9月13日

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【日本協同組合連携機構企画総務部長・藤井晶啓】

◆農協運動の再構築へ

 いまJAグループは、自己改革の一環として組合員との対話運動に取り組んでいる。組合員の世代交代と多様化がすすむもとで新たな世代の組合員とJAが対話を通じて、協同組合としての農協を再構築しようという運動である。
 では、「対話」とは何か。従来のコミュニケーションとの違い、狙いについて考えたい。

 

◆対話重視は世界的な流れ

 農水省も、「農業者と農協の徹底した話し合い」を求めている。そのベースには、金融庁と東京証券取引所が2016年に策定したコーポレートガバナンス・コードの5原則の一つ「株主との対話」にあると推察できる。
 世界経済が混沌するなかで、株式会社が持続的な経営を確保し、中長期的に企業価値を高めるためには、重要なパートナーとして株主と長期かつ安定的な関係を確保することが不可欠、という考え方が多くの企業に浸透している。
 日本の上場企業でもシャンシャン総会という形式的な総会運営を改め、少数意見でも丁寧に聞く姿勢への転換がすすんでいる。また、総会時だけでなく日常的に丁寧に対応するなど、対話を建設的に行う動きが広まっている。
 さらに、今年6月に金融庁は対話ガイドラインを発表し、株主と企業が重点的に議論すべき事項を整理した。そこには、上場会社は法令順守という結果報告で済まさず、自社の考え方など株主に説明すべき事項はきちんと対話を深めるべき、という考えがある。
 このように、対話は協同組合だけでなく、株式会社でも世界的な潮流となっている。

 

◆常勤役員さえ白熱

 これまで勤めてきた全国農協中央会でのべ4年間、新任のJA常勤理事を対象にした研修に関わってきた。今年度も自己改革をテーマにした対話のワークショップをおこなった。参加者は出身県もJA規模も異なる。組合長から常務まで、学識経験者、組織代表といろいろ。対話は100分を超えるが、途中、だれることはなく議論が尽きない。「もっと時間を」という意見はいただいたが、多くの参加者は対話の楽しさを体験した。

 

◆対話はなぜ楽しいのか

 辞書によると対話とは向いあって話をすることである。相互に話すことで、「もやもや」がすっきりした経験は誰にもあるはずだ。対話には、(1)他者に聞いてもらうことによるカタルシス、(2)あいまいなことでも話すことで自分の考えが明確になる、(3)他者の意見をもらうことで自分の意見の妥当性がわかるなどの効果がある。だから対話は楽しくなる。
 これに対して、従来の会議体でのコミュニケーションは、いかに楽しくないものが多かったのか。数十人がロの字で長時間、資料説明をうけ、最後に「忌憚のないご意見を」と促されても、意見は出るものではない。勇気を絞って出した意見に対し、事務的な答弁を繰り返すことは対話ではない。

 

◆3種類ある「議論」

 議論には、「討論」、「議決」と「対話」の3種類がある。
 討論(ディベート)は、勝負をつけることが目的である。賛成派、否定派、審判の三者に分かれ、兼務は不可。最後に審判が判断する。裁判がよい例だ。
 議決は、集団としての意思決定が目的であるので、勝敗を言い渡す審判はいない。メンバーは賛成と反対の間を揺れ動いてよく、最後に全員で決定する。
 一方、対話は、自分とは違う意見を聞き、理解を深めることが目的なので、勝負も合意もゴールではない。これまでのわれわれの議論の多くは議決であるが、意見がほとんど出ないまま結論をいそぐ。合意なき決定だから形骸化する。

 

◆自ら気づき、変わる

 対話では他者を打ち負かすのではなく、他者がなぜそういう意見を持つのか、という理解を深める過程を通じて、自己の見方や考え方の前提への気づきを得ることができる。それが「自らが変わる」きっかけになる。
 「自ら変わる」ことが対話の効用である。なお、組合員とJAとの対話の前提には、JA内での対話がなければならないことは言うまでもない。

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