【城山のぶお・リメイクJA】第5回 職能組合・地域組合論の終焉2018年9月14日
職能組合・地域組合論は、JAの組織的性格を論ずるものであったが、今回の農協改革を通じて、この議論で対応していくのは無理があることが明らかとなった。
それは、例えば地域組合論の行き詰まりにみられる。地域組合論の主張は、鈴木博の意見に見られるように、戦後の農協は一元的な職能組合ではなく、地区内の居住者を職業のいかんを問わず組合に加入できる組織であると考え、JAは必ずしも農業者・農家だけの組織ではないというものだが、この主張では、もはや農協改革への対応が不可能になっている。
今回「規制改革会議」が打ち出した准組合員の事業利用規制は、JA解体を意図するものであるとしても、一方でJAとはそもそもどのような組織かが問われている問題としてとらえることが重要であり、JAとして正面からこの問題に対峙していくことが求められている。
とくに、鈴木が問題提起した時点での、全国の准組合員比率が28.5%―正組合員564万1000人・准組合員224万4000人(1980年度・総合農協統計表)という状況と、総体として准組合員数が正組合員数を大きく上回る、准組合員比率57.3%―正組員443万3000人・准組合員593万7000人(2015年度)という状況の変化はあまりにも大きい。
しかも、正組合員数が減少する中で、准組合員数は増加し、年々准組合員比率が高まってきている。准組合員問題は、JAグループとして長年にわたって放置してきた重要課題と認識すべきであろう。
地域組合論の立場に立って、JAに農家でない異質の組合員がいることを認め、それはJAが地域組合であることの証左であると主張するのは良いが、それではその部分は信用組合や生協等の別の協同組合に衣替えすべきではないかという議論に繋がらないのか。
この点、地域組合論の立場に立って、1970年の「生活基本構想」(第12回全国農協大会議案)が唱える、JAは農業者だけの組織たるにとどまらない組織であるなどという方針を、いま打ち出せば、准組合員の事業利用規制ばかりかJA分割の格好の口実を与えることになるのではないか。
また、インフラが整ってない地域では、JAしかサービスの提供ができないからJAは農家以外の准組合員を抱えているのだというインフラ論も、山間へき地等は別として多くの地域で銀行、保険会社、コンビニ・量販店等が乱立している状況では説得力を持たない。
今回「規制改革会議」が打ち出した准組合員の事業利用規制問題について、准組合員は、制度として認められているものでその数によって云々されるものではないと唱えるだけで、有効な対応策を打ち出せないでいるのは、JAグループが従来通りの地域組合論に立っているからであろう。
今の状況で地域組合論を唱えることは、JAにとって一般的な協同組合の意義・重要性を謳い上げるのには有効であっても、切迫したJA解体の課題解決の論拠たりえず、この理論からの脱却が求められている。
もともと、職能組合・地域組合論は、組織性格面からJAを説明するものであって、それ以上のものではなかった。地域組合という協同組合は現実には存在しないし、同様に職能組合という協同組合も現実には存在しない。
JAは職能的性格を持つと同時に地域的性格を持つ協同組合であり、漁協、生協、信用組合など他の協同組合組織も同様だ。およそ、地域性を持たない協同組合など存在しない。
こうした地域組合論については、職能組合論についても同じように説明できる。JAは地域性を持つと同時に職能性を持つ協同組合であり、漁協、生協、信用組合など他の協同組合組織も同様だ。現行法制の下で、職能的性格を持たない協同組合は存在しない。
そこで職能組合・地域組合論に代わる新たなJA論が必要になるが、それには、職能組合・地域組合であれ、JAは、農協法1条に規定されているように農業振興を旨とする総合農業協同組合であることの前提に立った議論展開が必要である。
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