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【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(098)さらに足元のグローバル化2018年9月14日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 先週、出張でニューヨークを訪問し、途中、移動で地下鉄を利用した際、座席の上の網棚に相当する物置の上の広告を何気無く見た。日本でも良く目にする地下鉄広告だが、全く同じ内容の大きな広告が3枚並んでいた。左から中国語、英語、スペイン語の広告である。座席に座りながら、その3枚をじっくり見比べた。

 さて、2017年7月1日時点で米国の人口は3億2572万人である。英語はもちろん公用語だが、スペイン語や中国語の使用人口も多い。米国センサス局のデータでは、全人口のうち、ヒスパニックあるいはラテン系とされる人口が18.1%と示されている。黒人あるいはアフリカ系米国人は13.4%、アジア系は5.8%である。その他(ネイティブ・アメリカンや太平洋諸島出身者、複数の人種の混血等)2.9%を合わせると、40.2%となる。言い換えれば、現在の米国はヒスパニックあるいはラテン系以外の白人が約6割、それ以外の人種が約4割ということだ。もちろん、具体的な構成比は地域により異なるが、全体としてみれば何となくイメージが掴めるのではないかと思う。

 

  ※  ※  ※

 

 地下鉄の広告に戻ると、筆者は中国語には全く不案内だが、漢字文化圏の強みで何となく3分の1位は意味がわかる。そこでわからない部分は英語広告に移り、再び中国語を見るとほぼ全てが理解できる。さらにそれをスペイン語で読み直してみると、同じ表現が非常にうまく言い換えられていることもわかる。これはトシの功であろう。
 どちらかというと新しい語学の習得は苦手な筆者だが、こうして3つの言語を同時に何気なく見比べていると、現代の「ロゼッタ・ストーン」に出会ったようで、疲れた地下鉄の移動の間にも少なからず頭の体操が楽しめた次第である。特に、中国語と英語の変換は日本人なら多くの人が楽しめるのではないかと思う。別に語学が好きだとか嫌いだとかいう問題ではなく、極めて普通の日常生活の一コマを、どの言語でどう表現するか、というレベルに過ぎない。筆者が目にした広告も日本語に直せば「ニューヨーク市内には○○人の専門的知識を備えた医師のネットワークがあり...」のようなものである。こうした多言語環境が周囲に自然にあることにより、自然に外国語の単語や表現が身に付いていくのであろう。

 

  ※  ※  ※

 

 帰国して数日後、通勤用のバスを待っていたところ、外国人の女性から声をかけられた。「鈎取(カギトリ)」に行くバスはどこで乗ったら良いですか?」と、極めて流暢な日本語である。答えを返した後で、その女性がこう言った。「外国人には困るんですよね。バス停は英語で書かれていても、行先が全て日本語だけしかない。これでは読めないよね」と。彼女の日本語は非常に流暢であったにもかかわらず、漢字はやはり苦手なようだ。言われて初めてバス停を「意識して」見たところ、「NAGAMACHIEKI-HIGASHI-GUCHI」と句読点の無い大文字アルファベットの羅列表示はあるが、確かに時刻表の行先は全て日本語のみである。これでは確かに読めない。

 

  ※  ※  ※

 

 何でもかんでもアルファベット表記にすれば良いというものではないし、最近のテレビの字幕のように、明らかに簡単な漢字すらひらがら表記することにも違和感がある。それにしても、「国会議事堂前」を「Kokkai-gijidomae」と書くのは間違いではないが、英語ではなく単なるローマ字表記である。

 

  ※  ※  ※

 

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、実はこうした町の各所にある名称を外国語でどう表記するか、これは真剣に取り組むと多大な時間と費用がかかる作業なのではないかと思う。
 それにしても、日本橋はNihonbashi Bridgeの一方で、勝鬨橋はKachidoki Bridgeと表記したり、利根川(Tone River)と荒川(Arakawa River)など、日本人でも混乱する英語(ローマ字)表記は多い。

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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