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【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(099)糖尿病・資源・南の島2018年9月21日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 国際糖尿病連合(IDF)によれば、2017年の罹患者数は4億2500万人であり、これが2045年には6億2900万人に増加する見込みである。現時点の世界人口を77億人とすれば、18人に1人となるが、国連見通しによる2045年の世界人口は約95億人のため、15人に1人が糖尿病患者になるのが30年後の未来だ。予備軍を含めればこの比率はさらに大きくなる。

 病気の詳細は別として、国別の罹患率を見ると様々な考えが浮かぶ。
 IDFの資料から最も単純に国別(自治領等を含む)罹患率だけを取りだし、上位から並べて見た。
 マーシャル諸島(32%)、ツバル(28%)、トケラウ(25%)、ニウエ(25%)、ニュー・カレドニア(24%)、モーリシャス(24%)、ナウル(23%)、仏領ポリネシア(22%)、グアム(22%)と、ここまでが上位9位で罹患率20%以上である。
 このうち、日本で比較的良く知られているところは、マーシャル諸島、ニュー・カレドニア、モーリシャス、グアムなどであろうか。最近では国土の水没危機という観点からツバルも多く報道され知られているかもしれない。これらの島々は何となく「南の島」という感覚で総括されている感があり、具体的な位置などは新婚旅行でも考えない限り曖昧なケースが多い。そこで以下、これらの1つ、ナウルについて簡単に記してみたい。気になる方は是非、地図等で場所を確認して頂ければと思う。

ナウル(Nauru)
南西太平洋ナウル島にある共和国。人口は2011年で9322人。言語はナウル語、英語。

 

  ※  ※  ※

 

 「南の島」で糖尿病の罹患率が高い原因については既に医学的観点からの多くの研究や調査報告がある。それとは別に、このコラムで取り上げた理由は、ナウル共和国が日本、そして日本の農業を見る時にふと思い浮かぶからである。

 ナウルは島1つの国だが独立した国家だ。バチカン、モナコに次いで世界で3番目に小さい国としても認識されている。
 国土は海鳥の糞が長期にわたり堆積してできている。19世紀の終わりにイギリス人により「発見」された後、ドイツ領となった。堆積した海鳥の糞は、サンゴのカルシウムとでも化合したのであろう、時間がナウルを宝の山に作り変えた。この島は世界的なリン鉱石の産地となり、その後100年近くの間、肥料原料の輸出は島民に仕事をしなくても生活できる「夢のような」世界をもたらしたのである。
 税金無し、医療・教育は無料、全国民への年金支給で労働不要...、現在の我々から見れば「素晴らしい」生活環境かもしれないが、それが長期間続くとどうなるかという社会実験のようなものだ。
 歴史的には、第一次世界大戦時にはオーストラリアが占領、その後、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの3か国委任統治下へ、そして1942年には太平洋戦争により大日本帝国の占領下になる。戦後は米国が占領し、国連の信託統治か領の時代を経て1968年に独立している。
 やや脇道にそれるが、日本農業との関係ではかつての大日本帝国が南方のリン鉱石産地としてナウル島を認識していたのかどうかを考えると興味深い。恐らくは南太平洋戦線の悪化に伴い、日本本土へのリン鉱石輸出どころではなくなったのであろう。貿易というものは平和が維持されていてこそ成立するという思いを強くする。

 

  ※  ※  ※

 

 「アリとキリギリス」の寓話ではないが、リン鉱石の輸出という特定資源に全てを依存し莫大な富を得続けた結果がどうなるか。リン鉱石が枯渇すれば世界最高の生活水準を維持できなくなるのは当たり前である。問題は、依存度が余りにも長期にわたり、「仕事をする」という感覚や習慣そのものが多くの国民に備わらず、国も国民も目の前の果実で満足し続けた結果が、現在の厳しい状況(例えば、失業率9割以上、食料ほぼ輸入、国内に他の産業ほぼ無し、海外支援頼り)に繋がることだ。

 

  ※  ※  ※

 

 それにしても、糖尿病罹患率では約23%のナウルだが、実際には3割以上とも言われ、世界で最も糖尿病罹患率が高い国の1つという不名誉なポジションを獲得している。何もしなくても良い国はスーパーホワイト国家のはずだが、なかなか長続きはしないし、どこかに歪が生じる。国民性や気候、歴史、文化など様々な要因の影響かもしれない。理論はともかく実践においては何事も極論は良くないということの1つの例であろうが、「南の島」はやはり素晴らしい「南の島」であり続けて欲しいというのは余りにも情緒的か。

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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