【近藤康男・TPPから見える風景】国連でISDS見直し議論がされている2018年9月27日
これまでこのコラムで複数回、“外国の投資家が利益回復を求めて投資先の国家を訴える”「投資家対国家間紛争処理ISDS」について紹介し、問題点を指摘してきた。通商協定や投資協定において最も問題を抱える分野であること、しかしTPP11(CPTPP)では11ヶ国中7ヶ国がISDS除外あるいは慎重さの証として交換文書を交わしていること、日EU・EPAでは合意が成立出来ず先送りとなったこと、米・EU間の環大西洋貿易投資投資協定においてもISDSゆえに交渉が頓挫していることなど、近年の通商交渉でISDSの否定的側面に目が向けられていることを紹介してきた。
改めてISDSの問題点をあげてみよう。
これまで多くは世銀本部内に事務局を置く投資紛争解決国際センタ-(ICSID)によりISDSによる仲裁が取り扱われているが、これは常設の法廷でもなく、都度、提訴側から1名、被提訴側から1名、両者合意による1名の私的な仲裁人が参加するものでしかない。控訴することも出来ない。
最大の問題は海外の投資家のみに法の下の不平等(特権)が認められていることだ。投資家は、投資先の国内法に従うことなく、利益回復を求めて海外の仲裁機関に投資先の国家を提訴する特権が与えられている。内国民待遇や公正・衡平待遇を与えられ、国内企業と原則同等の待遇を与えられているにも関わらず、投資先の国内投資家が国内での企業活動ついては国内の司法に従うことを義務付けられているのを尻目に、海外からの投資家だけは投資先の司法の外にある私的仲裁により損害賠償を求めることが出来る。このISDSに群がるのは、仲裁による利益にあずかろうとする"ISDS追っかけ屋"ともいえるごく少数の仲裁人だ。そして、直接的損害だけでなく、逸失利益も含め、負担するのは国民だ。
◆市民団体も、国連での議論を前に、各国政府に対して声を挙げた
国際連帯をしながらTPPや日EU・EPAその他の通商協定に反対をしてきた市民団体も、18年6月26日付で62ヶ国・地域・国際規模の270団体が、ISDSを議論するために60ヶ国が参加する、国連国際通商法委員会(UNCITRAL)の第51回会合開催(18年6月25~7月23日)を前に各国政府宛の国際共同書簡に署名(日本は7団体)をした。UNCITRALからISDSの見直しを委嘱されているのが、第3作業部会だが、ISDS見直しを協議する6月28~29日には、18年4月23~27日の第35回作業部会の報告書が付された。この4月の会合には、TPP関係国からは日本と米国を含む8ヶ国のメンバ-国がこの作業部会構成国として、またオブザ-バ-としてTPP参加の3ヶ国が出席している。ここに加わっていないのはブルネイだけだ。オブザ-バ-には多くの国際機関・団体も参加している。
◆第3作業部会の報告書には多くの懸念が記されているが...
報告書は、個々の問題点や途上国を中心に挙げられた懸念を提起している。透明性、説明責任、裁定の一貫性、仲裁結果の整合性、見直しの仕組み、などの欠如を挙げている。また、いくつかの国で既にあるISDSの見直しが進められていることにも触れている。そして選択肢として、多国間投資裁判所や控訴審にも言及している。また独立性や少数の人間に偏っているという問題を抱える仲裁人の指名などに関する懸念についても検討をしている、しかし、そのうえで、これらの選択肢の検討は時期尚早で、先ずは徹底的な分析が必要だとした。
この報告書は、ISDSの仕組みに関わる個別的問題点や懸念に相当程度言及しているが、決定的に欠けているのは、投資先の国内企業と同等の待遇を受けることとされているにも関わらず、外国投資家に対して、国内の司法制度を飛び越えて国外の私的仲裁に賠償を請求できるという不平等な特権に言及していないことだ。EUがこの作業部会で強く推している常設の多国間投資裁判所という案も上述の不平等な特権はそのままにしている。韓米FTAでISDS提訴を受けている韓国はアジア地域での議論の主導に意欲的だが、日EU・EPAでもISDSに拘わり続けた日本政府の立ち位置は何処にあるのか問いたいところだ。
次回はの会合は10月29~11月2日に予定されている。弥縫策での着地だけは無しにして欲しい。
国連の報告書は右のリンクからWorking Group III
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