【城山のぶお・リメイクJA】第9回 准組合員のニーズ・心情2018年10月12日
准組合員はJAにとってどのような存在であるのか。このことについては、准組合員に対する様々な調査が行われており、准組合員は、JAの正組合員の子弟が多い、JA関係者とのつながりがある、農業に興味を持つ人が多いなどなどが指摘される。
しかし、殆どの場合、そもそもJAなどの調査主体が、准組合員をどのように位置づけるかを明確にしていないため、調査結果の分析は極めて散漫なものとなっている。
筆者は地元JAの准組合員となっているので、そうした現実的な面からニーズ・心情を述べてみたい。筆者は、なぜ准組合員になったのか。それは長年にわたってJAにお世話になったこと、またJAについて発言をするには組合員になっていなければ話にならないと思ったからという以外にさしたる理由はない。
利用しているのは、決済口座としての貯金であるが、JAを利用した方が民間企業より利便性が高いという訳ではない。JAの協同活動に意義を見つけたと言いたいところだが、それは余程の覚悟がなければできないから、そうでもないというのが正直なところだ。
筆者が加入しているJAは、合併により全国最大規模のJAになった。支店は徒歩圏内の距離にある。合併により支店名は変わったが、合併に前後して建物が立派になったこと以外、その存在感にさしたる変化はない。
准組合員である筆者とJAのお付き合いは、年度末の総会開催通知・参加案内以外にこれといったものはない。総会では准組合員席が設けられ、准組合員はそこから総会の様子を見学する。終わりには参加を繋ぎ止めるためか、テレビなどが当たる抽選会が行われる。
そのほか、たまに業者による住居のモデルハウスのチラシが入るのとグランドゴルフの案内、年度末明けに出資金配当通知がくるが、日常的に准組合員の意見を述べる場はない。
近くに巣鴨信用金庫の支店(金融店舗)があるが、JAの支店と雰囲気はまるで違う。信用金庫の支店は活気があり、利用者の数はJAに比べて圧倒的に多い。
准組合員たる筆者とJAの関わりは以上のようなものだが、そもそも准組合員はJAをどのように見ているのだろうか。准組合員のJA加入の動機は様々だが、筆者にとってJAへの興味は農業以外に思い当たるものがない。
筆者には、農業および農家の皆さんには、常日頃から申し訳ないという気持ちが強い。親の時代から農家をやめ、あげくに自分は長男で地元に止まらなければならないところ、前回の東京オリンピックの翌年に上京した。
筆者は戦後第2世代(団塊世代の少し前)だが、農業の大切さを説く評論家の皆さんはじめ、このような事情の人が多いのではないか。農業は大事だが、割の合う職業ではなく、多くの人は農業からから離れて行く。
そうした消費者もしくは、准組合員の心情を察すれば、その多くは農家の皆さんに何らかの形で協力したいと思っている。また、戦後第3・4世代たる筆者の子供や孫の世代では、人間の本能として農業に対する郷愁のようなものが消えることはない。
とくに、幼いころの農業・農村の体験は何物にも代えがたい。自然の中で夜露・朝露を肌で感ずる生活、田んぼの中でのヌルヌルした足の触感などは生涯忘れることはない。こうした機会を与える場として、JAの役割は大変大きいのではないか
JAはいま、准組合員の扱いに苦慮している。増え続ける准組合員の存在をどのように考えて良いか分からないからだ。しかし、その答えは意外に簡単なところにあるように思える。それは、JAおよび正組合員が准組合員をよそ者扱いするのではなく、農業振興をともに行う同志として受け入れることだ。
JAおよび正組合員は、准組合員との垣根を低くし、もっとフランクに農業振興について准組合員の協力を求め、また農業に関わる諸活動を准組合員に提案していくべきだろう。
他方、准組合員はじめ農業・JAの支援者には、農家が行うことは絶対という雰囲気が強いが、気の付いたことは遠慮なく意見を言うべきだ。
筆者は、いまの住所に居を移して10年以上になるが、JAの存在はあまりにも遠い。JAは、戦後の農地解放後、組合員の農地を守る組織として発展してきた経緯から農地所有者以外の人たちをよそ者扱いにしているように思える。まずは、そうした意識を変えることが問題解決の第一歩である。
重要な記事
最新の記事
-
JA熊本経済連が1000トン落札 政府備蓄米 「価格下がっても500円前後か」2025年3月12日
-
JAさがは2回目も入札 政府備蓄米放出 「今年は米騒動起こさぬため」2025年3月12日
-
政府備蓄米、入札量の9割落札 JA福井県 価格低下は限定的か2025年3月12日
-
意思決定と女性参画【小松泰信・地方の眼力】2025年3月12日
-
シロアリ防除剤「メタミサルト」、蛍光性能で薬剤の存在を可視化 最速で業界トップシェア目指す ZMクロッププロテクション2025年3月12日
-
こども食堂で富山県産牛乳の体験ミルク教室を開催 JA全農とやま2025年3月12日
-
岐阜県産イチゴのイベント「ぎふのいちごおやつマルシェ」を開催 県内17の菓子店が集結 JA全農岐阜2025年3月12日
-
農協シリーズからモナカアイス「北海道ミルク」「京都宇治抹茶」新登場 JA全農2025年3月12日
-
「いわて純情米」アンバサダーにエンゼルス菊池雄星 投手が就任 JA全農いわて2025年3月12日
-
黄金の郷のこだわり りんごとトマト、丸搾りのジュースに JAいわて平泉(岩手県)2025年3月12日
-
特産のゆずがドロップに 鼻に抜ける甘酸っぱい香り JA神奈川つくい(神奈川県)2025年3月12日
-
ハマササゲの耐塩性機構が明らかに 作物の耐塩性開発に期待 農研機構2025年3月12日
-
青りんごが赤くなる不思議 眠りから覚めた遺伝子が果皮の色を変えるメカニズム判明 千葉大学2025年3月12日
-
植物栽培の生理生態情報定量的を可視化 高知大学IoP共創センターと共同研究開始 welzo2025年3月12日
-
家庭用油脂製品7%~15%の値上げ 油脂製品を価格改定 J-オイルミルズ2025年3月12日
-
グリーンコープ生協みやざき「笑顔つながるこだわりマルシェ」都城で15日に開催2025年3月12日
-
三重県カンキツ生産者研修会開く 高品質安定生産、日焼け対策などを報告 三重県園芸振興協会2025年3月12日
-
「健康経営銘柄」3年連続選定「健康経営優良法人~ホワイト500~」は9年連続認定 明治HD2025年3月12日
-
「健康経営優良法人2025」認定を取得 ヤンマー2025年3月12日
-
令和6年度省エネ月間四国地区表彰にて「四国経済産業局長表彰」受賞 井関農機2025年3月12日