【城山のぶお・リメイクJA】第10回 准組合員問題とは一体何なのか2018年10月19日
そもそも、准組合員の事業利用規制と中央会制度の廃止は天秤にかけられる性質のものではないが、政府・自民党による巧みな誘導で、JAは二者択一を選択する立場に追い込まれた。
その際、JAグループの判断は、准組合員への事業利用規制はJA運営に深刻な影響を及ぼすことから、「中央会」という制度よりは優先されたとのではないかと推測されている。制度より事業が大事だというわけだ。
このような経過を踏まえて、JAグループには、いま次の二つの対処方向の選択が迫られることになっている。
一つは、准組合員は制度として与えられているものであり、われわれは農協法に則って准組合員の加入を進めてきたのであり、何も間違ったことをやってはいない。
悪いのはアベノミクスであり、われわれがとってきたこれまでの方針は正しいとする立場だ。これは言わば「従来路線」と呼ばれるものだ。
もう一つの方向は、准組合員の問題は、総体としてJAの准組合員数が正組合員数を上回るという状況の中で、JAはそもそもどのような組織であるかが問われている問題であり、こうした認識の下で対策を講ずべきであるという立場だ。これは言わば「改革路線」といって良い。
准組合員問題については、JAグループにとって、実はこのような二つの方向の選択を迫られているものであり、それは准組合員の個別対策では解決が難しく、JA組織の将来展望をどう描くのか、将来ビジョンの構想・策定と不可分なものと認識すべき課題なのである。
しかしながら、准組合員対策について、こうした問題提起は一切行われず、准組合員の個別対策の提起に止まっているため、JAグループ全体が混迷状態に陥っているのが現実の姿だ。
それはさておき、こうした認識のもとに、二つの方向について、JAグループが取るべき道を考えて見たいが、結論から言えば、前記の従来路線踏襲では将来方向を切り拓いていくことは不可能である。
従来路線の典型はJA全中であるが、2018年9月、全中は准組合員対策について、准組合員のJAへの意思反映や運営参画促進に向けた具体策をまとめた。年度内に各JAで要領を策定し、仕組みを整備したうえで来年度から実施する。
対象者の選定や具体的な手法など検討のポイントを示し、准組合員モニターや准組合員総代制度などの例を参考に、JAごとに取り組みを進めるという(日本農業新聞)。
この具体策のポイントは、准組合員対策について肝心な全中の位置づけが明らかにされていないことであり、それはJAごとの実態に合わせてJA自身が考えるとしていることである。
このように准組合員の位置づけを丸投げされたJAは、この具体策をみて、准組合員対策をどのように進めて行けばいいのか戸惑うばかりであろう。
全中の考えは、准組合員対策について従来路線を踏襲しつつ、今後の位置づけをJAに任そうとするものでこれでは対策にならない。
准組合員対策についての従来路線とは、制度としての准組合員を認めよということであり、農家以外の人も准組合員として加入を進めるということだ。まさかこの期に及んで、従来通り信用・共済事業推進のため准組合員の加入を進めるということなのか。
こうした方向は、准組合員制度の矛盾をますます拡大していくものでしかなく、国民の理解を得ることはできない。とすれば、今後の准組合員対策の基本は、准組合員を農業振興の同志と位置付けて行くしか方向はない。
全中は、農業振興について農業者・農家だけではその達成が難しく、正・准組合員が一体となって取り組むことで初めて可能なことを将来ビジョンとして明確にし、准組合員対策を進めて行くべきだ。
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