【城山のぶお・リメイクJA】第11回 自民党リップサービスの恐しさ2018年10月26日
准組合員の事業利用規制問題について、2018年6月7日のJAグループ政策確立大会で、自民党の二階俊博幹事長が「准組合員の事業利用規制やJAが行う信用事業の代理店化について、押し付けるつもりはない、組合員が判断すればよい。しっかりと党として約束をしておく」と述べた。
この発言以降、JA内には一種の安堵感だけでなく、この問題はもはや終わったかのような雰囲気さえ漂っている。二階幹事長の発言は、2019年夏に予定されている参議院選挙に向けた自民党圧勝の期待を込めたリップサービスであることは疑いがなく、このような政治力をたよった対応はJAの将来を大きく誤ることになる。
というのは、一方で安倍首相は、18年7月19日に、日本農業新聞との単独インタビューに応じ、この問題は、「しかるべき時期が来たら法律の条文に即して適切に対応を判断する」と述べている。
また、「新世紀JA研究会」が18年の6月5日に行った要請活動のなかで、安倍首相側近の自民党の森山裕国会対策委員長は、准組合員問題について、「とくに都市化地帯のJAでは対策をよく考えておくように」とわざわざ発言しており、これも時期が来たらこの問題に必ず手を付けるという申し渡しと考えて差し支えないだろう。
二階幹事長の発言は、明らかに選挙対策用のもので、これにゴマ化されてはいけない。第一、准組合員の事業利用制限は組合員の自主判断に任せるとはどういうことか意味不明であり、自主判断ならなぜこの問題を持ち出したのか理解不能である。
安倍政権の目玉である働き方改革での、事実上の残業規制を撤廃する「高度プロフエッショナル制度」の導入についても、それは企業の自主判断であると説明された。政府にとって「自主判断」は、新たな制度導入にあたって関係者に安心感を与える常套句なのである。
このようなJA関係者に安心感を与える発言で、全中などのJA指導者は安心を装い、結果を自民党議員の責任に転嫁することになれば、JA運動そして協同組合運動そのものが死滅していくことになる。
協同組合第4原則で謳われる、協同組合の「自主・自立」は、単なるお題目やきれいごとではない。過去における日々の戦いと苦い経験の中から協同組合が必死になって作り上げてきたものだ。
今回のアメリカトランプ大統領との物品貿易協定について反対運動が起きない背景にも、自民党とJAとくに全中との間にこうした相互もたれあいの事情があるのではないかと思うのは筆者だけではあるまい。
そもそも、准組合員問題は、JAの准組合員が総体として正組合員数を上回っていることを背景としており、JAの組織的性格を問われている問題である。
21年3月までの検討期間を経て、政府からどのような案が出されるのか予断を許さないが、問題をこのように認識すれば、その結果にかかわらず、JAにとっての喫緊の課題は、政党対策はさておきまずは、自らの准組合員対策を確立していくことである。
この問題を仕掛けた農水省自体も、大澤誠経営局長発言に見られるように、JAからの提案を求めている。
准組合員問題は、JAの死命を制するとして政治力に頼るとしても、既存の利益擁護だけでJAに改革案がなければ話にならない。全中はじめJA役員に、自民党任せの気持ちと、決着は21年3月で、任期中にこの問題は表面化しないとして手を打たない意識があるとすれば、結果は悲劇的なものになる。
この問題は、政府与党から案を出された時点で決着する。准組合員問題について、JAは自らの対策を早急に構築し、国民的理解を得る大運動を展開すべきである。残された時間は少ない。
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