【熊野孝文・米マーケット情報】ササニシキ系だけの食味コンテスト開催2018年11月13日
ササニシキ系だけのコメの食味コンテストが11月22日に宮城県大崎市で開催される。
ササニシキは1963年に品種登録され、ピーク時の1990年には地元宮城県だけでなく、岩手、秋田、山形、福島、千葉、群馬、神奈川、山梨まで作付地域が拡大、20万7438haも作付されていた。この面積はひとめぼれの最大作付面積15万4929haよりも広く、当時は西の横綱コシヒカリ、東の横綱ササニシキと称されるほどであった。当時は食管法下で自主流通米制度があり、東京へ搬入される自主流通米といえば圧倒的にササニシキが多かった。そのころチェーン展開し始めた寿司店(回転寿司ではない)もシャリはササニシキを使っていたが、いつの間にかあきたこまちに代わっていた。ササニシキの凋落は1993年の大冷害で大きな被害を出し、作付面積が一気に減ったとことが要因とされているが、流通業界ではそれ以前に食味の低下を問題視していた。生産者が多収に走り、窒素肥料を多投したことが食味の低下を招いた。ササニシキと言う品種はコシヒカリよりも窒素肥料投入によりタンパク値が上がり、もろに食味に影響する品種だったのである。では、タンパク値がコシヒカリよりも低ければコシヒカリより美味いと評価されるのかと言えば、そうではない。このことはひとまず置いて、22日のコンテストがどのように行われるのか紹介したい。
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ササニシキ系だけの食味コンテストの名称は「ささ王」選手権で、エントリーできる品種は宮城県内で生産されたササニシキと大崎市管内で生産された「ささ結(むすび)」の2品種だけである。なぜ大崎市管内だけで生産されたささ結だけかと言うと、このささ結と言う名前は品種名ではなく、大崎市が商標登録した商品名で、品種名は東北194号と言う。大崎市はこの品種をブランド化すべくこうした名前を付け、東京で開催される食品展示会等で盛んにPRしている。地元では寿司店16店の協力を得て、今月1日から市内で「ささ結新米フェア」を開催している。ささ結の普及拡大については大崎市が音頭をとって、地元JAばかりでなく、寿司組合や大手卸、酒造会社、農業資材会社まで参加したブランドコンソーシアムまで組織している。
ささ結は、2001年にササニシキの欠点であった冷害に弱いことや倒伏しやすいことを克服すべく、育種が始まった品種で、ササニシキを母にひとめぼれを父に人工交配、炊飯米特性で選抜、2012年に品種登録された。品種特性は第一に耐冷性が極強であることで、穂発芽性も難でササニシキより強く、倒伏もやや強い。食味・炊飯特性は①炊飯米の食味はひとめぼれに比べて、粘りが少なく、軟らかくササニシキに近い②炊飯米の冷飯(耐老化性)特性が優れる③炊飯米は表層がササニシキ並みに軟らかく、ひとめぼれより粘りが少ない④炊飯米はササニシキ並み以上に膨れる。わかりやすくささ結のご飯を表現すると「さらり、あっさり、やわらか」と言うことになる。こうした食感のご飯を美味しいと感じる人なら
コシヒカリよりささ結に軍配を上げるだろうが、残念ながら多くの人はもっちりとした粘りのあるコシヒカリ系のご飯を好むようになっており、全国各地で開催される食味コンテストでも上位はほとんどすべてをコシヒカリ系が占め、例外は龍の瞳ぐらいである。こうしたコンテストにささ結を出品してもまず上位に入ることは望めない。しかし、ささ結びにはもう一つ大きな特徴がある。それは「飽きの来ない旨さ」で、ごはんが余計に食べられるという点である。東南アジアに行かれて地元のご飯を食べた方には分かるだろうが、現地はあっさり系のご飯で、日本人も日本でご飯を食べるよりも量が進むはずである。
コンテストには62名の生産者が出品、一次審査を勝ち残った15名が生産したコメを炊飯したものを大学の教授や育種研究機関、米穀店、寿司店ら6名の審査員が試食してささ王を決めることになっている。一次審査で重要な基準値であったのが、タンパク値が6.5以下という点で、コシヒカリ系のコメは多少タンパク値が高くても食味にはそれほど影響しないが、ササニシキ系のコメはもろに影響する。コシヒカリの特徴は粘って硬いという点だが、ささ系のコメは柔らかくて粘りが少ないという点である。寿司店がささ系を好むのは「ごはんが空気を抱き込め、握っていて疲れない」という特徴があり、何よりもご飯にした時のバランスが良く、ネタの味を邪魔せず、酢との相性も良いとのことである。 ささ王に輝いたコメをシャリにした鮨を食べに行ってみたい。
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