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【小松泰信・地方の眼力】子は未来へのかすがい2018年11月14日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 自民党の稲田朋美氏が11月7日のラジオ番組で、「いつか首相になる考えは」と問われて、「やはり夢は、政治家になった限りは目標に置いて頑張りたい」と、将来の首相を目指して活動する考えを示したそうだ(福井新聞ONLINE 11月8日午後5時)。
 氏は2017年7月に南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報隠蔽で防衛相を辞任した。そして、今臨時国会の衆院代表質問において、「多様な意見の尊重と、徹底した議論による決定という民主主義の基本は、我が国古来の伝統であり、敗戦後に連合国から教えられたものではありません」と、噴飯物の捏造歴史観を披瀝(ひれき)した。トモチンの夢は国民の悪夢。夢のままにしておいてネ。

◆ニンプゼイ!?

小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 「先生、ニンプゼイって知ってますか?」「何それ?」「妊娠したら税金取られるそうですよ」「そんな馬鹿な。反対でしょ」「普通ならそうですよね~。でも今の政治は、普通じゃないんですよね~」といった会話を数週間前に酒席で交わした。気になっていたら、その詳細を中国新聞(11月10日付)がわかりやすく教えてくれた。
 正式名称は「妊婦加算」で、「妊婦が医療機関を受診した際、病名や診療科(歯科を除く)にかかわらず診療費が上乗せされる制度。今年4月の診療報酬改定で導入された。支払いは自己負担3割の場合、初診で230円、再診で110円増える。深夜や休日はさらに増額される。
 問題はなぜ妊婦が多く払わなければならないかだ。この当然すぎる問いに、中国四国厚生局指導監査課長は「妊婦は服用できない薬があったり感染症リスクが高かったりする。そういった難しさに対する適切な診断や診療を評価するため」、そして「報酬を付けることで、産婦人科以外の医師にも妊婦を診療する意識を一層持ってもらう狙いもある」と回答。実際、「妊婦が服用できる薬に不慣れなドクターも多い」とは産婦人科医のコメント。
 記事は、「妊婦加算を知らない医師は多い」(広島市内の30代勤務医)との発言を紹介し、今回の診療報酬改定が介護報酬の改定とも重なり、膨大な項目の中に埋没したことを示唆する。そのうえで、「出生率を回復させるためには、妊婦が安心して医療を受けられる体制づくりは絶対条件のはず。なのに医師の意識向上のために妊婦が負担を強いられるのは、やはり理解が得にくいのではないか」と指摘する。
 もちろんこの指摘に異議はない。少子高齢化を国難の一つに位置づけ、国難突破のために衆議院を解散させた現政権である。常識的には、国難突破のためなら妊婦や子どもの医療費負担の軽減や無償化、さらには妊婦手当の支給などがあってしかるべき。負担増なぞ思いもつかぬはず。ところが常識が通じないのが安倍ネツゾウ政権。結局、少子化のことなど歯牙にも掛けておらず、政権維持、己が権勢を維持せんがための解散だったことを自ら証明している。

 

◆幼保の給食費をなぜ無償にしないのか

 内閣府が2019年10月から実施予定の3歳以上の幼児教育・保育の無償化に伴い、給食費については現行の負担方法を見直し無償化の対象としない方針を固めたことも同根である。現行のまま保育料を無償化すると、給食費が保育料に含まれている保育所と、実費払いにしている幼稚園との間に格差が生じるため、保育所に通う3歳以上の子どもも実費払いとし、給食費は無償化の対象とせず、保護者負担とする方針を固めたわけである。当然「給食は教育・保育活動の一環。どの施設でも給食費は無償化すべきだ」との声が上がっている(日本農業新聞、しんぶん赤旗、ともに11月13日付)。
 これも、国難突破への貢献として、給食費を保護者に負担させない方で調整するのが常識のはず。ここでも常識が通じない。

 

◆幼保無償化の基本問題

 幼保無償化そのものに問題があることを、高知新聞と沖縄タイムスの社説(ともに11月14日付)が明らかにしている。
 高知新聞によれば、安倍首相が国難突破解散時に突如、幼保無償化を目玉公約として表明したため、「自民党内にも周知されない唐突な変更で、党内にも不満が漏れるほど」だったそうだ。制度設計も突貫工事で、「増税分の30%が配分される地方にも一部負担を求める方向を打ち出した」ところ、「増税分の新たな歳入を想定し、その使途や活用事業を検討していた自治体が、政府の一方的な負担要請に反発」したことを「当然」とする。
 「少子化対策や子育て支援は、疲弊が進む地方にとって最重要課題だ。それを美名の看板にして振りかざし、政権方針に従わせようとする強引なやり方に映る」「保護者には......待機児童解消の受け皿づくりを急ぐよう求める声が根強い」ことや、「金持ち優遇策」といった批判も残っている、と数々の問題点を指摘する。
 そして「子育ての現場に寄り添い、将来も見据えた制度設計へ議論を尽くすべき」とする。
 沖縄タイムスも、「すべての子どもが幼児教育を受けられる環境を整えることに異論はない。しかし振り返れば、増税分の使い道を変更し無償化に充てることは、自民党内でも国会でも議論らしい議論がなかった」と、拙速な展開を批判する。
 「保育の実務を担う自治体で無償化への賛同が広がらないのは、待機児童問題が解消されない段階での効果を疑問視しているからだ。......聞こえてくるのは、『待機児童の解消と順番が逆』『保育士の確保などに財源を使うべき』といった声」と、手厳しい。
 「保育士が集まらず保育所を新設したのに開園できなかったり、受け入れ人数を制限したりといったケースも、ここ数年増えている。幼児教育が無償化されれば、子どもを預けて働きたいと考える親は増えるはずだ。それに見合った施設整備が進まなければ、待機児童が増え不公平感が広がる。さらに無償化による需要の掘り起こしは、現場を疲弊させ、保育の質の低下を招きかねない」と警鐘を鳴らし、「誰のための施策なのか、原点に立ち返る」ことを説く。

 

◆子育て世代への支援が明るい未来を届けてくれる

 時事通信社が10月に実施した「地域社会」に関する世論調査(10月5から8日、全国の18歳以上の男女2000人に対面調査方式、回収率は62.6%)における、「人口が減少する中で地域社会を維持するために必要な対策(選択肢は8、複数回答)」への回答結果は、興味深い。「若い子育て世代を呼び込むために自治体が補助する」が71.8%と際だっている。第二位は「規制緩和で働く場所をつくる」の27.9%である(日本農業新聞11月13日付)。明らかに、多くの人が子育て世代への支援を重要視している。
 「子に対する愛情によって、夫婦の間が緊密になり、夫婦の縁がつなぎとめられる」ことを意味する「子は鎹(かすがい)」と言うたとえは示唆に富んでいる。視点を変えれば、子どもは、現在と未来の鎹でもある。
 この宝物としての鎹を大切にしない家庭、地域、そして国家に明るい未来は届かない。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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