【森島 賢・正義派の農政論】外国人労働者の受け入れで賃金が下る2018年11月19日
政府は、外国人の労働者を大量に受け入れるために、入管法を改悪しようとしている。それは、賃金を下げるためである。これは、人道的な難民受け入れとは、全く次元の違う問題である。
賃金を下げることは、資本にとって最も重大な関心事である。そのためには何でもする。賃金を下げることで、資本から委託を受けた株式会社は、利潤を増やして資本の信頼に応えようとする。
政府も、資本の要求に応えて、入管法を改悪し、外国人の低賃金労働者を大量に受け入れて、賃金を下げようとしている。その口実は、少子化による労働力不足だという。
だが、労働力不足がいつまで続くと考えているのか。労働力不足が解消したときに、外国人労働者を、どのように処遇するのか。欧米諸国は、この重大問題で頭を悩ませている。
数字でいくつか考えよう。
政府は、35万人の外国人労働者を受け入れようとしている。少子化で、将来の労働力が不足するからだという。
厚労省の資料によれば、労働力人口は、2014年は6、587万人だったが、13年後の2030年には6、362万人に減るという。225万人の減少である。
もう1つ、注目されている数字がある。それは、野村総研とオックスフォード大学のオズボーン准教授との共同研究の結果で、2015年に発表したものである。その試算では、10-20年後に日本の労働人口の49%が、ロボットや人工知能に代わるという。
2015年の10-20年後だから、ちょうど2030年ころになる。2014年の労働人口は6587万人だったから、その49%の3228万人の労働がロボットなどに代替することになる。
この野村総研の数字の精度はともかく、大量の労働がロボットに代わることは間違いないだろう。その結果、労働力が過剰になり、賃金が大幅に下がるだろう。
◇
以上の数字を整理すると、次のようになる。
上の表で示したように、少子化は賃金の上昇圧力になり、外国人労働力の受け入れとロボット化は賃金の下落圧力になる。
政府は、賃金の下落圧力のうち、外国人労働力だけをみて、ロボット化の下落圧力を見ようとしない。そうして、外国人の受け入れを法制化する口実にしている。少子化の対策には、外国人の受け入れしかない、といっている。
しかし、それよりもロボット化による賃金の下落圧力のほうが、上の表で示したように、はるかに大きいことを見ようとしない。そのほうが、資本にとって好都合だからである。つまり、ロボット化による賃金の大幅な下落を隠せるからである。労働者に対して隠しておいて、自然に下がったように見せかけ、抵抗なく自然に受け入れさせようとする狡猾な考えである。
◇
近い将来に予想されるロボット化は、賃金を大幅に下落させるだけでなく、大量の労働者を解雇するだろう。そのとき、まず初めに犠牲にされて解雇されるのは、外国人労働者に違いない。外国人労働者の使い捨てである。それに続くのが非正規労働者の解雇だろう。
このように、外国人労働者の受け入れは、非正規労働の拡大と同じで、労働者の使い捨て、という非人間的な問題である。そして、賃金を下げられ、解雇の危機に曝される労働者全体の問題なのである。
◇
ロボット化による賃金の大幅な下落は近未来の問題であって、いますぐにも問題が噴出する、と予想される問題ではない。
ここで考えたいのは、それまで米国の好況が続くか、という問題である。好況のあとには、必ず不況が来る。景気の好・不況のくり返しは資本主義の避けられない宿痾である。不況になることは、資本主義が続くかぎり避けられない。米国が不況になれば、日本も不況になる。
少子化によって労働力供給が逼迫する前に不況になるに違いない。そうなれば、労働力需給は過剰局面に転換する。そして、外国人が先ず初めに解雇されるだろう。外国人は使い捨てになり、景気循環の調整弁にされる。それに続くのが、非正規労働者の解雇だろう。
不況による解雇の嵐のなかで、ロボット化が、通奏低音のようにして長く、そして絶え間なく響き続けるだろう。そして、労働者や農業者などの弱者にとって、苦境をさらに深刻にするだろう。
◇
外国人労働者の受け入れの前に検討すべきことがある。それは、ロボット化の雇用に及ぼす詳細な影響である。それに加えて、非正規労働の法的な禁止による生産性の向上と、女性の賃金の大幅な引き上げによる生産性の向上である。そして、長時間労働の禁止である。
労働者の賃金が上がれば、生産性が上がるだけでなく、労働市場を通じて農業者の所得も上がる。それが真正の市場原理なのである。
農業者も、黙ってはいられない。
(2018.11.19)
(前回 米国の社会主義化)
(前々回 国民民主党の不可解な農政)
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