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【森田実の政治評論】2019年は安倍政治を審判する年ー大変化の予兆あり2018年11月21日

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【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

「禍福は糾える縄の如し」(『史記』)

 

◆勝利しつづけてきた安倍政権

 2012年12月衆院選以後、安倍自民党はすべての国政選挙と統一地方選挙で勝利をつづけてきました。衆院選では2012年、2014年、2017年、参院選では2013年、2016年、統一地方選挙では2015年ーこれらすべての大型選挙で大勝しました。これほど選挙に勝ちつづけてきた政権は、第二次世界大戦後では初めてです。
 2012年12月の衆院選の勝利の最大の原因は、野田民主党政権の自滅によってもたらされたものでした。理性を失った野田民主党政権は自殺的衆院解散に向って暴走し安倍自民党に勝利を献上したのです。その後は野党陣営崩壊のなかで、安倍自民党は国政選挙と統一地方選で勝ちつづけました。この結果、安倍一強体制というべき強大な政治権力ができました。
 しかし、安倍政権にはみるべき政治上の成果はありません。最も力を入れてきた外交面では具体的成果は見当りません。すべては"これから"です。国内政治の面でも成果らしい成果はありません。安倍自民党政権が大勝利の第一の原因は、事実上の野党不在にありました。安倍自民党は敵のない闘いに勝ちつづけてきたのです。しかし流れは変わる可能性があります。

 

◆2019年に安倍政治は審判される

 2019年は選挙の年です。4月には統一地方選挙が行われます。この選挙で2019年以後の地方政治の方向が決まります。地方は衰退しています。地方自治体の動きは一様ではありません。おおまかに分類すると四つの傾向がみられます。
 第一は地方の自立をめざし、自らの努力で衰退に歯止めをかけて安定をはかる。
 第二は従来と同じ中央政府に依存して生きる。
 第三はとくに無理をせずなりゆきまかせ。
 第四は中央政府の政策を地方重視に変えさせることによって衰退を止める。
 第一の傾向の拡大が必要だと思います。
 参院選で審判されるのは安倍政治です。6年間の実績が審判されます。
 安倍総理はアベノミクスは成功したと繰り返し強調していますが、国民は経済状況に満足していません。今後を見なければ評価は決められないことばかりです。内政について安倍政権は諸々の構想を打ち出しましたが、すべて中途半端です。政策目標を目まぐるしく変えることで内閣の人気は維持してきましたが、具体的成果とはいえません。
 外交については、日朝も日ロも、何ら解決していません。安倍総理は地球儀俯瞰外交を展開してきましたが、外遊が多いだけで見るべき成果はありません。安倍政権はトランプ米大統領との親密な関係を安倍外交の成果として自画自賛していますが、これも今後をみなければ、評価は決まりません。
 しかし、日本の社会経済の現状をみると、容易でない現実があります。地方の衰退は進行しています。人口減少は止まりません。貧富の格差は広がるばかりです。日本の将来に明るい希望を抱く者は減っています。日本社会の衰退は顕著です。安倍政治にはこの問題と真剣に取り組む姿勢はみられません。
 2019年4月には4年に1度の統一地方選が行われ、4年間の地方政治の総括が行われます。この選挙では、安倍政権6年間の審判が行われることになります。その上政界では、衆参同日選挙の可能性が高いとの見方が広がっています。万が一衆参同日選挙が行われますと、安倍政権のすべてが国民の審判を受けることになります。安倍政治不信任という事態が起こるかもしれません。

 

◆国民は安倍政治に飽き始めている

 古代ギリシア詩人のホメロスの作品の中に「勝利は同じ人間の上には永くとどまることはない」という言葉があります。19世紀のアメリカの思想家エマソンは「どんな英雄でも最後には鼻につく」と言いました。安倍総理は英雄でもないのに長い間比較的高い支持率を維持していますが、マインドコントロール下におかれた政界とマスコミの批判精神の衰退が原因です。一般の国民は安倍政治に飽きてきています。
 安倍総理はすぐれた処世術の持主です。これが安倍政治が長期化した原因の一つです。
 反面、安倍政治は誠実さに欠けています。安倍政治の批判者たちの多くは「安倍総理は人間として信用できない」と考えています。安倍総理がかなりの国民から不信を持たれている原因は誠実さの欠如にあります。
 「誠実」は道徳の基本です。誠実さに欠けているということは、道義崩壊を意味しています。
 少し大袈裟に思われるかもしれませんが、政治家も経営者も官僚もマスコミも、道義崩壊を起こしています。世界中が道徳危機に直面しています。
 2019年の選挙で問われるのは「政治道義」です。日本国民の道徳力と健全な批判精神が試されるはずです。

 

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