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【熊野孝文・米マーケット情報】豪州米別枠輸入の影響2018年12月18日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 TPP11で決まった豪州米の別枠SBS入札が年明早々にも実施される予定でその動向に関心が集まり始めている。関心が高まった要因は、農水省が豪州米を主食用に販売できるようにするため「マークアップを引き下げるのではないか」との見方が広がっているためだ。
 そのことに触れる前にTPP11で決まった豪州米の別枠SBS入札は、既存の10万t輸入枠の入札とは技術的に異なる点があるので、それを整理したい。
 農水省が示した別枠輸入の方式は(1)入札参加資格者は、外国法人でも日本国内で登記されれば参加可能(2)政府予定価格の設定は、短粒種・中粒種・長粒種ごとに設定(3)最低マークアップの運用は、年度内において安定的に運用(4)砕米割合を7%以下に設定(5)最低入札単位を17tに設定(6)落札した政府買入価格の最高値・最低値を公表(7)再入札の実施は、予定数量に満たなかった場合、翌日に再入札を実施(8)船積み期限を11か月に、引渡期限を12か月に延長(9)毎年度最初の3回の入札で消化率が90%を下回る場合、以降は残りの枠数量全量を入札に付す。3年度中2年度で数量が消化されなかった場合、最低マークアップを一時的に15%引き下げる-となっている。
 この技術的な運用方法で、最も関心が高いのが「マークアップを一時的に15%引き下げる」という部分である。農水省は「落札されなかった場合は15%ずつ引き下げるという意味ではない」としているが、これはむしろ当然である。なぜならTPP11で決まった別枠輸入は国内での影響を遮断すると言っているのだから、落札されるまで15%ずつ下げられたのでは遮断されたことにはならない。遮断の対策は、31年産米の政府備蓄米買入枠を増やし、その分を隔離することによって需給上の数字のバランスをとるという方式である。具体的には豪州米の別枠輸入数量は2018年度分2000tと2019年度分の6000tの合計8000tで、これは精米ベースなので玄米換算した9000tを政府備蓄米買入入札の枠に追加して優先的に買い入れるという手法。
 コメの流通業界では、こうした方式で豪州米の輸入の影響が遮断されるかされないかという議論には全く関心がない。関心がないというのは語弊があるが、買入数量を増やすという31年産がどうなるのか見通せない状況では、その影響を見通したくても見通せないというのが実情で、先ずは近々に迫っている豪州米別枠SBS入札にどう取り組むかが先決。そうした中で年明け早々に行われる2000tの第1回入札でマークアップが引き下げられるかもしれないという情報が流れているのだから、いやがうえでも関心が高まる。
 その下げ幅はkg20円という見方がなされている。既存のSBS入札は11月末に第3回目が行われたが、2万5000tの枠に対してマークアップがクリアーできなかったため落札1万963tに留まった。この時の平均マークアップはt当たり6万1126円であった。豪州産は豪州米の落札結果は、うるち玄米短粒種はt当たり買入価格が10万1000円(税別以下同)であったのに対して売渡価格は16万2000円でマークアップは6万1000円(kg61円)、うるち精米短粒種は買入価格が11万6432円で、売渡価格は17万7432円、マークアップは6万1000円(kg61円)、うるち精米中粒種は買入価格が10万3980円、売渡価格は16万5000円、マークアップは6万1020円(kg61円2銭)になっており、kg61円が豪州の既存のSBSマークアップの目安価格になる。
 豪州の2019年産米(来年四月に収穫される新米)は大干ばつで生産量が7割程度減るという見方も出ているが、応札する米穀業者は「新米でなくても2018年産でも応札する」としており、割安な原料米の確保に関心が強い。その場合、量販店でも販売しやすいオープスやうららかと言った短粒種になるが、入手価格の上限はkg193円としている。この価格であれば業務用としても販売出来るため仮にマークアップがkg20円引き下げられると国の売渡価格はkg140円程度になるため十分に応札メリットがある。問題は豪州の別枠輸入の第1回目の数量は2000tと少ないことで、しかも輸入商社が限られており、狭き門になる可能性が高いこと。これを潜り抜けるには豪州米の輸入権利を持つ商社と事前のネゴが欠かせないが、それさえうまくいけば望み通りの価格で入手できる。

 

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