【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(115)「年齢不詳」145万人?2019年1月18日
仕事の関係で平成27(2015)年の国勢調査資料を見る機会があった。改めて見るとなかなか興味深いデータがある。全国の人口1億2709万4745人はともかく、「年齢不詳」が145万3758人もいる。
このデータは、「平成27年国勢調査人口等基本集計」「結果の概要第2部主要統計表」2頁に掲載されている。
国勢調査の結果など仕事で必要ない人はほとんど見ないし、仮に見たとしても普段はプレスリリースの「要約」で十分なことが多い。「要約」のポイントは2点である。
第1は「わが国の人口は1億2709万4745人(平成27年10月1日現在)」、第2は「大正9年の調査開始以来、初めての減少(平成22年から0.8%減、年平均0.15%減)」である。この2点はメディアで何度も報道された内容であり広く知られている。
これに対し、附属統計表の「年齢(5歳階級)、男女別人口、年齢別割合、平均年齢及び年齢中位数」(同2頁)を見ていて気が付いた点は以下のとおりである。
1) 最も人数が多いのは40~44歳の973万人、次が65~69歳の964万人
2)15歳未満は1589万人(ちなみに30年前は2603万人)
3)65歳以上が3347万人、その中でも75歳以上が1613万人、85歳以上が489万人
4) 100歳以上が6万1763人だが、その内訳は男性8383人、女性5万3380人と女性が圧倒的(男性の6.36倍)
5)「年齢不詳」が145万人(男性83万人、女性63万人)
正直、最も驚いたのは4)と5)である。4)で女性が多いことは何となく想像できたが、100歳以上の86%が女性というのは改めてみると凄い。年代別にまとめると、60代は1810万人(内訳は男性881万人、女性929万人、以下同じ)だが、70代は1397万人(男性637万人、女性760万人)、80代は808万人(男性305万人、女性503万人)、90代は171万人(男性40万人、女性131万人)と、年齢が上がるにつれて女性の数が大きく上昇する。数字はやはり確認してみるものだ。
※ ※ ※
一方、145万人の「年齢不詳」について過去の推移を簡単にまとめたものとしては、
同じ国勢調査の「就業状態等基本集計調査」「年齢(3区分)別人口の推移-全国(昭和60年~平成27年)」5頁に簡潔なものがある。
この表を見ると、「年齢不詳」は昭和60(1985)年に4万人、その後、5年ごとに、33万人、13万人、23万人、48万人、98万人と上昇し、平成27(2015)年には145万人となっている。この数字の増え方には驚くばかりである。
過日、あるテレビ番組で南米ブラジルのアマゾン地域に住む、とあるインディオ種族の最後の生き残りの一人という方の特集を放映していた。当人は、当該種族固有の言語を話すと確認されている最後の一人である。何年も彼の近くに住み、語彙の収集をしている言語学者ですら800語程度しか意味が判明しないという。ブラジルのアマゾン開発が進展していく中で起こった悲劇のひとつであることは間違いない。コミュニケーションが可能な語彙数が800語程度では、そもそも本人の正確な年齢など確認しようもないであろうし、その本人が亡くなれば言語そのものが永遠に消滅してしまうというわけだ。
※ ※ ※
しかし、現代日本において「年齢不詳」が過去10年間で97万人も増加し、145万人に達したのは何故か。ある時期、様々な理由から戸籍が無い人達についての報道は見たが、「年齢不詳」145万人は遅ればせながら初めて知った次第である。高齢化により自分の年齢すらわからない人がそれだけ増加したということなのか。あるいは単に項目の横にある英語表記(Age not reported)の通り、調査時に年齢を記載しなかったのか、それとも個人情報として記載したくなかったからなのか、調査システム上の問題なのか、国勢調査の専門家ではない筆者にはわからない。
ちなみに「年齢不詳」の都道府県別数字を見ると、東京都は26万人(男性14万人、女性12万人)である。筆者の住んでいる宮城県も約5万人(男性2万8000人、女性2万2000人)と記載されている。ご関心のある方はご自分の居住地の都道府県をご確認して頂きたい。
この手の統計データは、非常に地道な作業の積み重ねである。プレスリリースで流れるような「要約」は確かにポイントを素早く把握するには便利だが、実は「附属統計表」の方に興味深いデータが埋もれていることが多い。
人口統計の詳細な手法は筆者には不案内だが、高齢化や少子化、訪日外国人の増加の報道ばかりでなく、現代日本に「年齢不詳」と分類される人間がなぜ145万人も存在しているのか、そうした点をしっかりと調査・確認して報道するメディアがあっても良いのではないかと思う。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(120) -改正食料・農業・農村基本法(6)-2024年11月30日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (37) 【防除学習帖】第276回2024年11月30日
-
農薬の正しい使い方(10)【今さら聞けない営農情報】第276回2024年11月30日
-
「自分」を失わない努力が必要な時代【原田 康・目明き千人】2024年11月30日
-
集落機能強化加算 「当分の間、継続」江藤農相 対象は現行555組織 経過措置導入へ2024年11月29日
-
「子どもの食事って大切」 心身育成にも一役 全国オーガニック給食フォーラム2024年11月29日
-
着実な担い手確保へ JAきたみらいなど先進3JAに学ぶ JA全中・次世代総点検セミナー2024年11月29日
-
宴会やパーティーで食品ロス削減「おいしい食べきり」全国共同キャンペーン実施 農水省2024年11月29日
-
「食品関連企業の海外展開に関するセミナー」環境規制に関する事例紹介 農水省2024年11月29日
-
【農協研究会】たい肥センター核に 放棄地再生も JA佐久浅間で農業戦略探る2024年11月29日
-
日銀「地域金融強化のための特別当座預金制度」適用対象機関名を公表 農林中金2024年11月29日
-
【役員人事】JA全農くみあい飼料株式会社(11月19日付)2024年11月29日
-
内部統制と働きやすさは両論 コンプラでトップセミナー JA全中2024年11月29日
-
ノウフクレンケイってなんだ? 根本凪の「ネモト宅配便 特別編 」配信 JAタウン2024年11月29日
-
「冬の京野菜フェア」全農直営3店舗で12月1日から開催 JA全農2024年11月29日
-
柑橘王国えひめ「紅コレクション」始動「愛媛県産紅まどんなフェア」開催 JA全農2024年11月29日
-
「ランピースキン病の発生」影響に関する相談窓口 福岡・熊本に設置 日本公庫2024年11月29日
-
シニアの外国語:その可能性【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月29日
-
東日本のカシノナガキクイムシの由来を遺伝情報により解明 森林総合研究所2024年11月29日
-
島根県大田市 三瓶山麓で有機米を初収穫 報告試食会を開催 三菱マヒンドラ農機2024年11月29日