【浅野純次・読書の楽しみ】第34回2019年1月18日
◎丸山俊一ほか
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』
(NHK出版新書、885円)
NHK・BSの「欲望の資本主義」「欲望の民主主義」に登場して話題になった哲学者の語りを書籍化したというので、興味をそそられました。それも東京、京阪を訪ねながら「ニッポンを哲学する」というのですから。
いちばん面白かったのは、東京の街を最高に評価しているところでした。丸の内のビル街は実にすばらしく、銀座はとても魅力的、渋谷のスクランブル交差点は超現実そのものである、と。
民主主義やSNSについての哲学的考察が本論なのですが、日本の街の観察は意外性が高すぎました。東京の姿はドイツやフランスの街とはまるで趣が違うにせよ、ここまで絶賛されるとは。
でもそれ以上に、世界的ロボット学者の石黒浩氏との対談がとても良かった。「ロボットを人間に近づけるためには人間の定義が必要だ」から始まり、日独文化比較も。二人の意見は一致したりしなかったり、とてもスリリングな対談です。
ドイツと日本は似ているようでいて実は似ていないところも多いというのも面白い。「ドイツには皇帝がいないので哲学という名の目に見えない皇帝がいる」のだとか。あるいはドイツのカード決済は非常に少なくて現金至上主義らしい。この対談、堪能しました。
◎春日キスヨ
『百まで生きる覚悟』
(光文社新書、885円)
90歳を超えた女性たちの「ご長寿本」がたくさん出ています。しかし篠田桃紅、瀬戸内寂聴、橋田壽賀子といった有名人たちは高齢になっても仕事もやりがいもたっぷりありスタッフもいます。
それに対して介護してくれる連れ合いも子もなく、安心して独居できる条件に欠けている高齢庶民は大丈夫なのか。本書は70代から90代の夫婦または独身者に聞き取りを重ねた専門家が、老齢者の問題点を分析し提案をしたものです。
まだ元気な彼ら彼女らは、なんとかなる、ピンピンコロリでいけるだろう、と屈託なく元気に忙しく暮らしています。しかし著者はヨロヨロドタリとなったときの住まいのありよう、施設の探し方、世話になる人の当てなど、さまざまな問題提起をしていきます。
葬式とか墓とかの準備はしっかりしている人が多いのに、倒れたときの身の振り方を決めている人は圧倒的に少ない。子はいないか、当てにならない時代。「身じまい」の作法を考えるのに早すぎることはない、が結論です。
◎門井慶喜
『家康、江戸を建てる』
(祥伝社文庫、928円)
NHKの新春ドラマでご覧になった人も多いでしょうが、原作が文庫化されました。テレビを見て十分満足したという方にも、小説の面白さはテレビ以上です。ぜひもう一度、活字で楽しまれることをお勧めします。
秀吉によって湿地が広がるばかりの江戸を封権された家康は、この地の将来性を見込んで大事業に取り掛かります。利根川の流れを変えて洪水を防ぐ、玉川上水を作って江戸に飲み水を供給する、江戸固有の小判を鋳造する、江戸城の石垣を築き天守閣を作る。
どれも画期的な大事業ですが、家康も家臣も現場職人も見事にやり遂げます。江戸はこのようにして成ったとは。大した時代だったことを改めて知ることができます。
刀も大砲も出てこないけれど、侍と職人が街を建てた話はどれもいぶし銀のよう。この欄で同じ著者の『銀河鉄道の父』を絶賛したのを思い出しますが、どちらも甲乙つけがたい傑作かと。
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