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【熊野孝文・米マーケット情報】コメ証券化と備蓄米公社構想2019年1月29日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 今年8月本上場獲得となるかそれとも上場廃止になるか瀬戸際に立たされているコメ先物市場。大阪堂島商品取引所は、本上場獲得となる最低限の条件としてクリアーしなければならない「取引高増加」に向け、ザラバシステムの導入やマーケットメーカーの参加など考えられる手段を次々に投入してきている。その最終手段と言うべきものに「コメの証券化」がある。その前段階と言うべき「コメeワラント」の販売が1月21日から始まった。
 コメeワラントって何? という感じだが、解説書には以下のように記されている。
 「eワラントとは、対象原資産である株式、株価指数、預託証券、通貨、コモディティ(リンク債)の価格変動、時間経過(一部の銘柄を除き、一般に時間経過とともに価格が下落する)や為替相場など様々な要因が価格に影響を与えるので、投資元本の保証はなく、投資元本の全てを失うリスクの高い有価証券」。
 これだけ読むとますます分からなくなってしまいそうなので、実際に販売されたコメeワラントの事例を説明した方が分かりやすい。今回コメで初めて販売されるコメeワラントは、原資対象を新潟コシ先物市場の12月限にしている。証券会社はこの新潟コシ12月限の価格と連動するリンク債を販売する。リンク債は1口3万3060円から買えるので小口の投資資本でもコメ先物取引を体験できる。
 コメ先物市場に取引員を通じて新潟コシ12月限を買った場合とどこが違うかと言うと、新潟コシの1枚当たりの取引数量は25俵なので、その丸代金の10分の1程度の証拠金を積まなくてはならない。かつ1万6500円で買ったものが1000円値下がりしたとすると追加の証拠金が必要になる。コメeワラントはその追加の証拠金(追証)が必要ない。値下がりして元本割れした場合、そこで取引は終了になるので投資家の損は元本だけの損に留まる。逆に投資家の思惑通り新潟コシが値上がりした場合、証券会社が決めた比率通りの利益が得られる。その比率は0・002なので新潟コシ12月限が1万6500円から1万7500円に値上がりした場合、コメeワラントを1口買っている人は20円の利益になる。たった20円かと思われるかもしれないが1000口買えば1000倍になるためこの辺は株と同じである。
 今回のコメeワラントは新潟コシが値上がりした時だけ利益が得られる商品だが、証券会社では値下がりした時も利益が得られる商品を3月に販売する計画。この業界では買い債権をコールオプション、売りをプットオプションと呼んでいる。
 堂島取はこのコメeワラントを販売するSBI証券が資本金479億円、顧客口座数400万口座と言う業界大手であることから、コメ先物市場が一般投資家に知られることや実際に参加して取引高が増加することによって市場流動性が高まることを期待している。
 1点だけ残念なことは、コメeワラントは現物の受け渡しを伴わないこと。一般投資家がコメeワラントを手仕舞いするのは嫌だと言って現物を受けると言っても保管場所にも困るので、すべて差金決済で終わらせるというのは当然かもしれないが、一歩考え方、システムを進めて証券会社とコメ卸が提携して一般投資家が持っているコメeワラントを買って現物に替えることが出来るようにしたらどうか。例えば現在新潟コシ12月限が1万6500円の時、コメeワラントを1口買った主婦がいたとする。1年後12月限が納会日を迎え、1万5500円になった場合、1000円の値下がりで主婦はリンク債の比率に応じて差損を払う。その代り一口分相当のコメを受け取れることにする。主婦は損をしたが新潟コシヒカリを手に入れることが出来るので、実質的には家庭内備蓄を証券で行っていたことと同じである。
 東京コメも同じような証券を発行して日本中のコメが買えるようにしたらどうか。ついでに国が備蓄米として買い入れている政府米も公社を設立してそこから買えるようにしたらどうか。そうするとコメ証券を持っている主婦はいつでもその証券を持っていってコメと替えられる。現在の政府備蓄米は買入代金も保管料も餌に売却する際の巨額の差損も全て税金である。そうではなくコメ証券でだれでもいつでもコメを買えるようにしたら家庭内備蓄が実現でき、かつ大幅な財政負担軽減になる。「コメ証券化と備蓄米公社構想」を本気になって考えた方が良い。

 

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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