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【熊野孝文・米マーケット情報】パックご飯はコメ・コメ加工品の輸出拡大の切り札になるか?2019年2月5日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 1月31日に溜池山王のジェトロ本部でジェトロ幹部とメディアとの新年懇談会が開催された。懇談会でジェトロが輸出支援策の一環として取り組んでいる海外商談会出展計画の一覧表が配布された。コメ関連商品が出品される今年度上半期の計画を見てみるとSialChina2019(上海5月14日~16日 世界最大級の食品見本市)、NRAshow2019(全米レストラン協会主催 5月18日~21日)、SummerFarayFoodshow2019(米国東海岸最大の高級食材見本市 6月23日~25日)などに出品する計画が記されていた。
 今年2019年は政府が掲げた日本産農産物・食品1兆円目標達成の年で、コメ関連は600億円を達成するという計画。現在、コメ・コメ加工食品の輸出がどうなっているのかと言うと貿易統計で明らかになっている2018年1月から11月までの累計輸出金額は前年同期比18%増の273億円になっている。2割近く増えたものの年間通しても300億円程度で、今年はその2倍の額を輸出しなくてはならない。ちなみに昨年11月までのコメ・コメ加工食品の品目別内訳はコメが33億円(数量1万2296t)、米菓40億円(数量3665t)、日本酒199億円(2万3152kl、コメ換算1万3041t)になっている。これで明らかなように日本酒がコメ・コメ加工食品輸出増加の牽引車になっている。なんと原料米換算でも日本酒の方がコメ本体の輸出数量を上回っているのだ。
 農水省は「コメ海外市場戦略プロジェクト」を立ち上げ、プロジェクトには1月末現在、戦略的輸出事業者が67事業者、戦略的輸出基地が237法人・団体が名を連ねており、13万6000tの計画が立てられている。 このコラムはありがたいことに海外の読者もおり、現地でコメを販売している事業者からも情報が寄せられる。具体的には記さないが、現地での日本米販売合戦は熾烈を極めており、安売り合戦に歯止めがかかっていない。大手卸の中には海外のミドル層に日本米を買ってもらえるようにするため格安の日本米ブレンド米を仕立てて輸出するところもあるのだから安売り競争は益々激しさを増すだろう。
 精米の安売り合戦ではなく、清酒以外に付加価値を持ったコメ加工食品はないのかというと冷凍米飯やパックご飯が挙げられる。以前、このコラムでも紹介したが沖縄では輸出専用の冷凍白飯の工場が設立された他、冷凍いなりを海外に輸出し始めた冷凍食品製造業者もいる。変わったところでは離島の学校給食用に米飯を冷凍にして製造していた業者が飾り寿司を冷凍にして輸出にチャレンジし始めた。ただ、冷凍の場合海外の冷凍物流がしっかりしていないと商流に乗らないという障壁がある。その点常温で賞味期限が長いパックご飯は輸出用商品として有望視され、最大手のテーブルマークも1月1日に海外輸出の専門部署を立ち上げた。ジェトロもパックご飯のメーカー商品だけではなく、コメ産地や生産者の輸出支援策として3000パックから委託製造して輸出するという事業を始めている。
 ただし、これもすでに海外の量販店には数多くの日本産パックご飯が販売されており、香港の量販店では22アイテムのうち18アイテムが日本産。シドニーでも日本産パックご飯が売られているが、その売価はマルちゃんのあったかごはん200g、邦貨換算289円。サトウのごはん200g300円。
 これに対してタイ産パックご飯は250g135円、地元豪州産は250g225円、韓国産250g323円で、日本産に比べかなり安い。日本国内の業者の中にはSBSで輸入された長粒種を原料にしたパックご飯を製造して輸出したらどうか検討しているところもあるが、すでに海外マーケットではタイの高級長粒種ジャスミンライスを原料にしたパックご飯が販売されており、こうした商品と競合することになる。
 農水省はコメ輸出拡大策の一環として31年産米から新規需要開拓米枠の括りの中で新規に輸出用米に取り組む産地に対して10a当たり2万円を加算する予算措置を講じた。この額はその地区の産地交付金の使い方によって違って来るが、単純に最大額を輸出用に回せば4万円になる。農水省に確認したところパックご飯でも輸出用としての契約があれば助成対象になるという。10a4万円なら10俵穫れる原料米を使えば1俵4000円の助成金になる。その分原料米を安く購入出来ればパックご飯の製造コストも下がる。

 

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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