【浅野純次・読書の楽しみ】第35回2019年2月13日
◎菊池正史
『「影の総理」と呼ばれた男』
(講談社現代新書、950円)
本書の主人公は強面(こわもて)で知られた野中広務ですが、野中の活躍した時代の政治状況が克明に、しかもバランスの取れた見事な視点から描かれるので、戦後政治を振り返る手掛かりとしても優れています。
京都の町長、府議としての破天荒な活躍から始まり、国会議員としてあまりに個性的な一生が生き生きと描かれとても面白い。敵は容赦なく追及するけれど、敵が味方に、味方が敵に入れ替わっていく波乱に富んだ政治家像が描かれます。
何よりも生涯を通じ座標軸がはっきりしていました。反戦を貫き、差別や特権は容赦せず中産階級を育てることを目標としたのです。
非差別部落の出身だったが故に差別には敏感であり、軍人として死を覚悟したからこそ平和を何より大事だと感じ行動しました。戦争の臭いには極めて敏感だったそうです。
引退後も国会に参考人として呼ばれて、集団的自衛権に突き進む安倍政権を批判するなど、最後まで揺るぎはありませんでした。
野中広務という良質の保守政治家を失ったのは、日本の政治にとって大きな損失だったと改めて感じました。優れた政治家論であるとともに、昨今の政治を考える上でも予想外の収穫が得られて大いに満足しました。
◎相澤冬樹
『安倍官邸NHK』
(文藝春秋、1620円)
元NHK記者による貴重なノンフィクションです。著者は代半ばですが、管理職の道を断り一社会部記者として活躍、森友学園問題に遭遇しスクープを連発します。いえ、実際は、原稿は差し障りないものに書き換えられ、せっかく特番が企画されながらお蔵入りしたりしたのですが。
籠池理事長の信頼を得て単独インタビューに再三成功したり、大阪地検内部に食い込んだり、記者の鑑(かがみ)のような人ですが、安倍官邸に気を使う部長や局長の前に、渾身のスクープもなかなか放送に至りません。
取材の技術、提出原稿と放送された原稿の対比、局内のやり取りなど、NHKの深部まで描かれていてぐんぐん引き込まれます。
NHKはこの本に対し、虚偽が随所にあると批判していますが、具体的に指摘していないのでそれ以上の話にはなっていません。記録や記憶が生々しいこともあり、本書の大半は正確なのだろうと思う人が多いのではないでしょうか。面白くてためになる本――これも見逃せません。
◎吉田太郎
『タネと内臓』
(築地書館、1728円)
面白い書名ですが、食べ物と人間の内臓には深い関係があるとして、良質の穀物、野菜を保証するタネについて考察するとともに、胃腸の重要性を論じた警世の書です。
本書でいちばん問題視されているのは遺伝子組み換え作物です。種子法改正は日本の農業と食と健康にとって大問題ですが、米国でも実は反対運動が広がっているとして、その報告がなされます。
そしてフランス、ロシア、ブラジルでも政治家、学者、官僚、市民などがさまざまに、遺伝子組み換え作物から子どもや妊婦(もちろん普通人も)を守る取り組みが盛んに行われているのだという報告も貴重です。
著者は有機野菜などオーガニック食品を高く評価する立場にいるので、人によっては抵抗があるかもしれませんが、こうした主張にも耳を傾けてみる価値があるのではないかと感じました。ある意見が絶対ということはない。いろんな報告から学ぶことが大事です。
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