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【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】食と病気は不可分~農業と医療の連携強化2019年2月21日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 食と病気は不可分の関係にあるが、それは米国型の食生活と健康との関係についての次の2つの情報からも実感される。

 

◇      ◇

 

 (1)医療ジャーナリスト宇山恵子氏が、米国ミシガン大学公衆衛生学科のRobert De Vogli准教授らが、同大学発表ニュースリリースに掲載した研究(2012年)を『ヘルス&ビューティー・レビュー』に紹介しているのが興味深い。世界の26か国を対象に、人口10万人当たりのファーストフード店の数と肥満者の割合を比較した結果、ファーストフード店の数は、10万人当たり、アメリカが7.52店、カナダが7.43店で、肥満者の割合はアメリカ男性が31.3%、女性が33.2%、カナダの男性が23.2%、女性が22.9%だったのに対して、日本とノルウェーのファーストフード店の数は10万人当たり日本が0.13店、ノルウェーが0.19店で、日本の肥満率は男性が2.9%、女性が3.3%、ノルウェーの男性が6.4%、女性が5.9%だったという。ファーストフード店の密度と肥満率(つまり、安い食事への依存度と肥満率)には密接な関係がありそうだ。

 (2)米国に住むとアレルギー疾患リスクが上昇、米研究【2013年5月1日 AFP=時事】
 米国外で生まれた子供は米国生まれの子どもに比べて、ぜんそくやアレルギー肌、食物アレルギーといった症状が生じるリスクが低いが、米国に10年ほど住むことでアレルギー疾患のリスクが高まる可能性を示す研究結果が、4月29日の米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)に掲載された。
 米国では近年、食品アレルギーや肌のアレルギー反応が増加しているが、研究では2007~08年に電話調査を行った全米約9万2000人の記録を検証した。報告された症状にはぜんそくや湿疹、花粉症、食品アレルギーなどがあった。
 米ニューヨーク(New York)にあるセント・ルークス・ルーズベルト・ホスピタル・センター(St. Luke's-Roosevelt Hospital Center)のジョナサン・シルバーバーグ(Jonathan Silverberg)氏率いる研究チームは「いかなるアレルギー疾患についても、米国内で生まれた子どものアレルギー疾患率(34.5%)に比べ、米国外で生まれた子供の疾患率は著しく低かった(20.3%)」としている。「ただし、国外で生まれた米国人でも、米国での在住期間が長くなるほどアレルギー疾患リスクが増加していた」という。
 米国外で生まれたが、その後米国へ移って在住歴10年以上の子供では、米国に住み始めた年齢に関係なく、湿疹や花粉症を発症する可能性が「著しく」高く、同じ外国生まれでも米国在住歴が2年以内の子供と比べると、湿疹では約5倍、花粉症では6倍以上の発症率だった。(引用終わり)

 

◇      ◇

 

 このような米国型の食生活が浸透することの危険から日本国民の命と健康な生活を守るためには日本の安全・安心な食と農の健全な維持が欠かせない。しかし、日本の食と農は、すでに崩壊の危機に立たされており、さらに、その「総仕上げ」が日米FTA(自由貿易協定)で迫っている。これは「農家の問題」で済まされない国民の命に関わる深刻な問題だということを、生産者からも一層発信を強めるとともに、医療関係者を含め、社会全体として、国民に広く深く認識を浸透させる大きなうねりをつくらないと手遅れになる。
 一方、日本の医療も、直接的に国民の命と健康な生活を守るために欠かせないが、命を蔑ろにして、グローバル製薬企業などの儲けのために日本の医療制度を壊そうとする動きも日米FTAで「総仕上げ」の段階に入ろうとしている。命を守り、命を救うよりもオトモダチ利益を優先し、公共的・共助的なルールや組織の存在を否定し、世論操作を意図した如何なる改ざん・捏造も当たり前と化した異常事態を解消し、真っ当な国を取り戻すことができるか、我々は瀬戸際に立たされている。
 医療と食は、ともに国民の命を守る要の中の要たる2大要素であり、連携を強化して、危機を打開しなくては国民生活を守れない。日本の農林水産業の重要性についての医療関係者からの一層の発信も期待したい。

 

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