【城山のぶお・リメイクJA】第26回 准組合員への対応姿勢2019年2月22日
JAの准組合員への対応の曖昧さは、JA運営には正・准組合員とも分け隔てなく参加してもらうという姿勢に端的に表れている。このこと自体を取り上げれば何も悪いことではなく、先進的な取り組みのように思える。
だが、こうした対応への背景に、JAはいわゆる地域組合であり、JAは必ずしも農業振興が目的ではなく、協同活動を通じて組合員が幸せになればいいという認識があるとすれば、それは今後における有効な准組合員対策とはいえないのではないか。
地域組合論から言うと、正と准は同じ協同組合たるJAの組合員であり、両者を分けること自体に問題があるということになる。この結果、准組合員問題に関して、「准組合員は組合員である」というような、意味不明の何の解決にもならないようなことを口にする人さえ現れる。
こうした考えのもとにある准組合員対策は、どのような利益をうるために准組合員になってもらうのかが目的とされるのではなく、いわば加入してもらうこと自体が目的となる。
准組合員に特段の意思が持たされることはなく、他方では現実として、JAは員外利用制限を逃れるため、また利益の上がる信用・共済事業の利用を拡大するため、准組合員の加入を進めてきた。
しかし、こうした地域組合路線に基づく准組合員対応は、表面的なJA組織の拡大には有効であっても、一方ではJAの協同組合としての目的を不明確にするとともに、国民目線から見た准組合員の存在に説得力を持ちえず、また組合員の自発的な協同組合運動の発展にとって有効といえるものではない。
こうした加入推進の結果からか、准組合員の実態を見ると、もともとJAと関係のあった組合員子弟や、当面必要とされる住宅ローンの利用者などであり、農業振興への貢献などの組織本来の自主的な目的をもって協同活動に参加するというような状況にはなっていない。
こうした状況の中で、JAの今後の准組合員への対応姿勢をどのように考えればいいのか、このことについてとりあえず二つのことが重要のように思える。
一つは、准組合員もしくは加入推進対象者に対して地域農業振興への貢献を求めるなどの目標を明確にすることだ。
加入にあたり、具体的な目的を持たず漠然と協同活動のためにという人はいないだろうし、加入にあたりほとんどの人は何らかの目的を持っている。この点、以前に全中総合審議会がまとめたような、「協同組合活動に共鳴し、安定的な事業利用が可能な者」という整理は、JAは地域組合であるという前提に立っており、現在では適切なものとは考えにくい。
現在のJAは第1条の法律目的からして農業振興のための組織であり、このことから逸脱した准組合員対策は有効なものとはいえない。
このこととの関連で考えると、准組合員の皆さんの加入の動機はどうあれ、農業に関心を持たない人は少なく、多くの人々は、様々な面で農業振興に貢献できることを願う潜在的な意識を持っているのではないか。
JAはこうした准組合員もしくは加入対象者の潜在意識に強く働きかけることが重要だ。また、准組合員・加入対象者にも大きなメリットがある。地元農産物を購入することで、食にとって最も重要な安心・安全を確保できるし、また農産物を買い支えるという意識を持つことで農業振興貢献への満足感が得られ、さらには食農教育・学童教育等を通じて、孫子の世代に対して農業の良さ・大切さを教えることができる。
もう一つは、農業振興への貢献について、農産物をつくる人・生産者・正組合員と農産物を食する人・消費者・准組合員という立場の違いを明確にして取り組むことが重要だろう。
もちろん、准組合員にも家庭菜園や体験農園の利用など生産段階への取り組み、場合によっては生産者・正組合員になってもらうなどの取り組みも重要であるが、基本的には、以上のように正組合員と准組合員の対場の違いを明確にして対策を進めることが准組合員対策にとって有効なものになると考えられる。
付言すれば、以上のように、准組合員を、食とJA活動を通じて農業振興に貢献する意思ある組合員と位置づければ、JA運営における准組合員の権利もまた保証されなければならない。
JA運営における准組合員の権利行使については、これまで事業利用のほか部会活動への参加や理事などとして経営に参画を求めることなどの対策がとられてきているが、共益権の中で最も重要である議決権についても、正組合員の利益を侵害しない範囲での制限付き議決権の付与を考えるべきであろう。
制限付き議決権については、議事は正・准組合員の過半で決するものの、一方で正組合員の過半の賛成を必要とすることで、正組合員の権利を保証するなどの方法が考えられる。
こうした方法は、農協法に抵触しない、意思決定ではなく准組合員の意思反映のための議決権付与であり、総会の運営規約の制定で可能だ。これならすぐに取りかかれる現実的で有効な対応策となりうる。
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