【城山のぶお・リメイクJA】第27回 これまで准組対策とこれからの准組対策2019年3月1日
これまでの准組合員対策と、これから取り組むべき准組合員対策とはどこが違うのか。その最大の相違点は、これまでの准組合員対策が、准組合員の位置づけを「協同組合運動に共鳴し、JAの事業を安定的に利用できる者」(注)としているのに対して、これからの准組合員対策においては、准組合員の位置づけを「食とJA活動を通じて地域農業の振興に寄与する者」とすることにある。
(注)この考え方は、1986年の全中総合審議会答申によるものである。直近の全中による大会議案などでは、准組合員は「地域農業や地域経済の発展を農業者とともに支えるパートナー」、「地域農業振興の応援団」、「地域振興の主人公」であり、JAは、准組合員のメンバーシップ強化について、「食べて応援」「作って応援」に取り組むとしているが、准組合員の存在をあくまで地域の面から考えている点において、旧来の考え方を踏襲している。
それでは、これまでの准組合員の位置づけが、「協同組合運動に共鳴し、JAの事業を安定的に利用できる者」となっているのはなぜか。それは、准組合員が農協法で制度として与えられており、協同組合運動に共鳴する者であれば、農家でなくとも地区内に住所を有する者は基本的に准組合員として受け入れが可能であるからだ。
だがこうした位置づけでは、今後の准組合員対策は有効性を持たないばかりか、進展の妨げになるといってよい。その理由は大きく分けて二つある。その一つは、これまでの准組合員対策では、准組合員を協同組合運動に共鳴する者としており、准組合員を組織する目的が明確になっていないことにある。
これまでの准組合員対策は、准組合員を協同組合運動に共鳴する者として位置付けてきたが、これは言わば、准組合員として加入してもらうこと自体を目的としており、准組合員対策として実体のあるものではなかったとさえ言える。
例えてみれば、正組合員と准組合員は、協同組合という同じ船に乗っているものの、考えていることや夢は別々であり、言うところの呉越同舟もしくは同床異夢ともいえる状態にあったといって良いだろう。
JAという同じ協同組合の船に乗って、行先はそれぞれ考えることが別ということであれば、航海はうまくいかないのは道理である。このため、最先端な取り組みとされる、JAの組織・事業・経営などの諸活動において正・准分け隔てなく対応するという取り組みについてもそれぞれの目的が違い、それから先に進むことはできないでいる。
極論を恐れずに言えば、これまでの准組合員対策は、主に信用・共済事業の員外利用制限を回避するという目的のために行われてきたのであり、実体がなくてもそれが准組合員対策となり得たのである。
もちろん、これまでの准組合員対策は、JA運営への理解協力を求めるという点において効果があったことについて異論をはさむつもりはないが、同時にそれは大きな限界を持つものであったのである。
つまるところ、JAとして准組合員になって頂ければ、員外利用規制はなくなるのであり、准組合員の存在理由などは何でもよく、耳ざわりの良い「協同組合運動に共鳴する者」ということになったというのが実情であろう。
また、これまでの准組合員対策が有効性を持ちえないもう一つの理由は、JAが自己改革の中で謳っている、JAは職能組合であると同時に地域組合であるといういわゆる二軸論が、今次の農協改革における国会審議や農協法の改正において完全に否定されているということである。
これまでの准組合員対策は、JAは職能組合であると同時に地域組合であるといういわゆる二軸論に立脚した対策である。この点に着目したJA関係者や識者の議論は皆無の状況にあるが、このように実態を無視した態度ないし認識は間違っており、そこから正しいJA運動発展の方向を見出すことはできない。まずは、今次農協改革の正確な総括が求められる所以である。
これまでの准組合員対策に対置する、准組合員の位置づけを、「食とJA活動を通じて地域農業の振興に寄与する者」とすることについては、JAの目的は言うまでもなく農業振興なのであり、その目的を明確にしない准組合員対策は有効性を持ちえないという認識に立っている。
JAは協同組合なのであり、協同組合は組合員の幸せを実現できればそれでよく、農業振興はその手段に過ぎず目標にすべきではないなどといった協同組合の一般論は、この際JAにとって何の役にも立たない。
それどころか、今次農協法改正では、組合員の判断で株式会社や他の協同組合組織に転換することを促しており、農業振興以外に目的があれば、それはどうぞJA以外の組織に求めて下さいと言われかねない。
そこで必要になるのは、准組合員の加入目的を単なる協同組合運動への参加といった抽象的なものではなく、食とJA活動を通じて農業振興に寄与するという位置づけの明確化である。
もちろん、准組合員の位置づけを、「食とJA活動を通じて地域農業の振興に寄与する者」ことについては、将来のJAビジョンをどのように考えるかということと不可分である。
准組合員問題とは、総体として准組合員数が正組合員数を上回り、その差が拡大すると見通される中で、JA組織とはどのような組織なのかが問われている問題だということを肝に銘じて取り組むことが何よりも重要である。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(126)-改正食料・農業・農村基本法(12)-2025年1月25日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(43)【防除学習帖】第282回2025年1月25日
-
農薬の正しい使い方(16)【今さら聞けない営農情報】第282回2025年1月25日
-
JAしれとこ斜里と連携 冷凍食品に本格参入 カルビー2025年1月24日
-
パーパスを実現する「地域」と「差別化」の意味 静岡で第4セッション【全中・JA経営ビジョンセミナー】(1)2025年1月24日
-
パーパスを実現する「地域」と「差別化」の意味 静岡で第4セッション【全中・JA経営ビジョンセミナー】(2)2025年1月24日
-
【JA女性組織活動体験発表】(4)私のやる気は無限大 JA・地域・女性会の仲間と共に 和歌山県 JA紀州女性会 椎崎ひろ子さん2025年1月24日
-
【JA女性組織活動体験発表】(5)人と人とをつなぐ架橋~フレッシュ16いつまでも~ 愛媛県 JA越智今治女性部 德丸和江さん2025年1月24日
-
【JA女性組織活動体験発表】(6)仲間との絆を次世代につなげよう 熊本県 JAやつしろ女性部 山住久美子さん2025年1月24日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】サツマイモを消せば世論が収まると考えたお粗末さ2025年1月24日
-
TNFDの環境開示は何から始めるか 農林中金と八千代エンジニヤリングがセミナー2025年1月24日
-
JPIセミナー 農産物の環境負荷低減の見える化とJ-クレジット制度 今後の方向性を解説2025年1月24日
-
鳥インフル 米アラバマ州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月24日
-
「農山漁村」経済・生活環境プラットフォーム 設立記念シンポジウム開催 農水省2025年1月24日
-
(419)芸能アイドルと「卒論」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年1月24日
-
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 24日から開催 JA全農2025年1月24日
-
ブルボン×ニッポンエール「フェットチーネグミPREMIUM長野県産ぶどう三姉妹味」新発売 JA全農2025年1月24日
-
JAしれとこ斜里と原料ばれいしょの安定調達で連携 カルビーグループ2025年1月24日
-
「一村逸品大賞」受賞商品集めた特設ページ開設 JAタウン2025年1月24日
-
「素直な、おかか。かき醤油」 新発売 マルトモ2025年1月24日