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【熊野孝文・米マーケット情報】スマート農業で有機米は作れるか?2019年3月5日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 オーガニック実践拠点連携セミナーという有機農産物普及拡大のためのセミナーが2月26日に虎ノ門で開催された。
 有機米については以前このコラムで有機米を原料にしてコメ由来のバイオエタノールを精製、それをオーガニック化粧品向けに販売している女性経営者のことに触れたことがあるが、そうした新たな用途が生まれ始めているが、現状は有機米の市場が拡大しているとは言い難い状況が続いている。そのことに触れる前にこのセミナーで農水省が作成したばかりの資料をもとに有機農業をめぐる事情について説明したので要点だけを記してみたい。
 (1)平成18年に有機農業推進法が成立、平成26年に基本方針が定められ、平成30年までに有機農業取組み面積を総面積の1%にするという目標が定められたが、現状は0.5%どまり、(2)世界の有機食品売り上げは右肩上がりで、現在10兆円規模に達しているが、日本は緩やかに伸びているとは言うものの1850億円どまり、(3)1人当たり年間有機農産物の消費額は最も多いスイスが3万2880円であるのに対して日本はわずか960円、(4)2017年の消費者アンケートで「ほとんどすべて有機で購入しているものの割合」1.68%、(5)オーガニックという言葉を知っている人は90.6%。言葉は知っていたが、表示に関する規制があるとは知らなかった58.1%、(6)週1回以上有機食品を利用17.5%。購入経験のある食材有機野菜62.5%、有機米48.6%(複数回答)、(7)購入している有機食品のイメージ、安全である86.0%、価格が高い82.8%(複数回答)、(8)生産者の有機農産物の販売価格への満足度、満足10.9%、どちらかと言えば満足54.3%-など。
 これ以外にもスーパーでの有機農産物の売り場面積の割合など有機農業について興味深いデータが記されているので詳細については農水省のホームページを見て頂きたいが、有機米に焦点を絞ると有機JASの格付けを得た数量は、平成28年で9250tで総生産量に占める割合は0.11%に過ぎない。一時1万tを超えていた時もあったので停滞しているのが実情だ。その一方で海外から輸入される有機農産物は3万3000tでこの内コメは4.1%を占めている。
 セミナーではオーガニックビジネス実践拠点づくりの事例として6県から報告がなされたが、この中で学校給食向けに全量有機米を提供しているいう千葉県いすみ市が取組みの成果を報告したのに対して、会場から「有機米を使用すると給食費が上がると思うがどうしているのか」という質問があった。いすみ市の担当者は「一ヶ月200円程度のアップになるが、これは生徒の保護者の負担にはせず、市の一般会計で予算化している。有機農業の取組は市の産業、環境、教育にとって必要なもの」と答えた。有機米の生産者手取りは60kg当たり2万円以上。30年産は前年に比べ作付け面積が62%増加して21haになった。いすみ市では有機栽培農産物の生産量を増やすため生産者を対象としたセミナーや新規就農者、転換者を対象に熟練者による栽培指導なども行っている。そうした取り組みにより学校給食用のコメが全量有機米で賄えるようになった。
 有機米栽培は除草等大きな労力を要するが、ドローンとAIを使って農薬散布量を大幅に軽減できるというIT企業が同じ週に記者発表会を開催した。ドローンで空撮した圃場をAIで画像解析、農薬が必要な箇所だけドローンでピンポイントで散布するという手法で農薬使用量を極限まで抑えられるという。そうした手法で生産されたコメが「スマート米」という商品名で会場に展示され、試食提供されたが、2合入りのサンプルには「農薬使用量100%OFF」と表示されていた。しかもこの栽培方法を取り入れる生産者には無償で技術を提供するというのだから驚く。経費はどう賄うのかというとこの栽培方法を取り入れてコメを生産すると、生産されたコメはこの企業はその時の実勢価格(30年産は1万4000円程度)で買い取る。そのコメは有名百貨店や通販で3倍の価格で販売するというビジネスモデル。記者発表した代表者が「もし売れなかったら社員に給与の替わりにスマート米を現物支給する」と言ったので会場から笑い声が漏れたが、代表者は有機農産物の栽培面積はイタリアでは総面積にたいして14.5%まで拡大しているが、日本は0.2%に留まっている。この原因は有機農産物生産には大きな労力が必要だからで、これをロボットとAIで大幅に軽減することができる。世界の農法はこれが主流になると断言した。

 

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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