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【小松泰信・地方の眼力】女性の地位向上と基本的人権2019年3月13日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 蔵書の整理中に、『家の光』創刊号(1925(大正14)年5月1日発行)の復刻版(1985(昭和60)年2月7日発行)が現れる。ページをめくると同誌記者による「農村振興は先ず婦人農会から」と題した論考があった。(以下、旧字体は新字体で表す)

◆農村振興と女性の力

小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) この一文、1923(大正12)年の初頭第46議会頃が農村問題に関する議論のピークで、同年9月の関東地方大震火災に耳目が集まり、農村問題は議論されなくなったことを「遺憾千万」とすることから始まる。
 「今日迄の農村振興策は何れも空鉄砲である、不渡手形である、そこで何とか局面を転回して農民の実生活方面から根本の改造しなければ今後二十年三十年は愚か五十年たっても、百年たっても今日のような状態では農村振興の実績は決して現れるものでないと思う。此の見地から見て、農村の改造は男子のみでは到底ものにならぬ是非共内助の力を持っている主婦......否農村婦人全体の力によって家庭の内面から改造しなければならぬと云う大理想」のもとで、1916(大正5)年から千葉県農会が農村婦人のために婦人農事講習会を開催し、大好評で効果が着々と現れていること、さらには全国的に普及していることを紹介している。
 そして「此の会が近き将来に日本の農村婦人全部を統一して一大努力の源泉となる可能性がある、又当然さうなるべき事を心から祈ってやまぬものである」と、大いなる期待を寄せている。

 

◆嗚呼あれから一世紀

 「農業界全体で経営や地域社会、方針決定の場への女性参画が十分とは言えない。業界を挙げた意識改革と環境整備、支援が不可欠だ」で始まる、「農山漁村女性の日」(3月10日)の日本農業新聞の論説は、およそ一世紀前の熱気は遠い昔のこととなり、農村女性の地位がさほど向上していないことを伝えている。
 「1JA当たり役員2人以上の登用」という目標は2年連続で達成。しかし「全役員に占める女性の割合は8%。農業委員会に占める女性の割合は12%。市議会は14%、町村議会は10%」という数値から、「男女が対等に運営に携わる社会は程遠い」と嘆く。
 そして「年齢や性別、障害の有無にかかわらず、多様な人の発言やアイデアを受け止められる社会をつくること」を目指せとした上で、「女性の活躍なくして農業界と地域の発展はない」と結んでいる。

 

◆女性の足かせを外せ

 女性の地位向上がはかどっていないのは、農業界だけではなく、わが国全体の問題である。
 琉球新報(3月9日付)の社説は、3月8日の国際女性デーに合わせて国際労働機関(ILO)が発表した報告書から、「管理職に占める女性の割合を見ると日本は12%にとどまり、先進7カ国(G7)で最下位となった。G7では米国の39.7%を筆頭に日本を除く6カ国はいずれも20~30%台となり、世界全体でも27.1%」であることから、「日本の低さが際立っている」とする。
 沖縄県内でも、小学校教諭は女性が7割以上を占めるが教頭以上の管理職に占める女性の割合は22%。中学校は16.2%、高校は10.4%と、女性の管理職の少なさを例示している。
 女性の登用が進まない要因のひとつとして、「家事や育児、介護を『女性の仕事』とする性別役割分担意識が根強い」ことをあげ、「家事や育児などの無償労働の負担を女性に押しつけたまま、職場での活躍を求められるのは理不尽」とする。
 そして、「まずは男性を含めた社会の意識改革を進めて女性の足かせを外し、政府が本気になって待機児童解消、長時間労働の是正などに取り組むべき」とする。

 

◆ポストが人をつくる

 3月9日付の多くの新聞が、都道府県庁の女性管理職登用も、重要な意思決定に関わる上位の役職ほど割合が低くなることを伝えている。2018年4月1日現在で内閣府のまとめたところによれば、都道府県庁の女性管理職(課長級以上)の割合の全国平均は9.7%。最も高いのは鳥取県(20.0%)、これに東京都(16.6%)、岐阜県(13.5%)が続く。最低は広島県(5.4%)である。
 山陽新聞(3月9日付)は鳥取県と広島県の女性管理職登用事情を紹介している。
 鳥取県は、1999年に片山善博前知事が就任し、「女性ばかりに庶務をさせない」と宣言してから状況が変わったとのこと。「ポストが人をつくる」というトップの掛け声で、「男性限定」との暗黙の了解があったポストに女性を充てるなど積極的な登用を進めた。また、勤務時間に制限がある人に配慮し、庁内用資料の簡素化などを進めた。その結果、管理職569人中114人が女性、20~30代の女性職員は4割を占めるまでになったそうだ。
 広島県では、育児参加がしやすい職場整備に取り組んだ結果、男性の育休取得率は14年度の3.2%から17年度は30.2%に飛躍的に伸びている。「男性も家事や育児に参加する機運が県全体に広がればいい。負担が減れば、女性自身も昇進に意欲を持てるのでは」とは、担当者の声。

 

◆女性議員への期待

 神戸新聞(3月9日付)の社説が、衝撃的な調査結果として取り上げているのは、2018年の国会議員に占める女性の割合。世界全体では24.3%、日本は10.2%。前年より7位下がって193カ国中165位。
 「政治の極端な『男性中心』が続けば、現実に沿った政策をとるのは難しい。セクハラや育児、介護といった課題はこれまで軽視されがちだった」と、女性議員が増えることの意義を指摘し、「女性自身も挑戦を恐れないでほしい」とする。
 その一方で、「『男は仕事、女は家庭』という固定観念は、ともすれば男性を追い詰めかねない。長時間労働を助長している、とも指摘される。男性の自殺率が女性より高いことと、全く無関係といえるだろうか」と、男のつらさも併記。
 「性差別をなくすことは男女双方の生きやすさにつながる。その認識を、広く共有したい」と結んでいる。
 京都新聞(3月10日付)の社説も、「暮らしに身近な問題を議論する場で男女の不均衡が続くのは好ましくない。女性が議員活動していくうえで妨げになっている要因を解消し、参画を後押しできるよう機運を高めたい」と、議会改革を訴えている。
 さて、女性の地位向上とは、男性と比して、女性には、「人間が人間らしく生きていくために必要な基本的な自由と権利」、すなわち「基本的人権」が保障されていない場合が多く、その解消を目指すものと考える。だとすれば、「労働力不足の中で女性の活用を目指す」といった視点から「地位」の向上がはかられても、女性に待ち受けるのは新たな苦海であることを忘れてはならない。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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