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【熊野孝文・米マーケット情報】主食用米需要拡大より飼料用米生産に力を入れる千葉県2019年3月26日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 千葉県いすみ市で昨年より9日早く3月20日に31年産水稲の田植えが始まったとNHKや地元紙が報じた。田植えを始めたのは地元の大規模稲作法人で、品種は「五百川」。
 五百川は、2003年に福島県中通りの生産者、鈴木清和さんがコシヒカリの中から偶然早く穂をつけているものを発見、8年かけて育種した極早生種で2010年に福島県で品種登録された。ところが翌年の東日本大震災で福島県での作付を断念、宮城県小牛田町の農家が継承、JA古川やJA北あきたといった東北でも栽培されるようになった。最大の特徴と言うべき極早生を活かすべく千葉や山梨といった温暖な産地での栽培面積が広がった。とくに千葉県では、この品種を契約栽培して販路を広めようとしている大手卸や米穀店が生産者や集荷業者を集め説明会を開催したことなどから関心が高まった。大手卸や米穀業者が強調する五百川の魅力は「盆前に新米が収穫できること」で、食味評価もコシヒカリ並みに高いことから差別化商品として期待されている。五百川を生産している千葉県木更津市の農家は、卸と契約栽培する一方、自社で精米して道の駅等で販売しているが、5kg3000円という高値であるにもかかわらず、物珍しさもあってか並べたらすぐ売れてしまうというほど人気があるという。
 その千葉県の31年産主食用目安面積がどうなっているのかというと、5万34haで30年産作付面積よりも3866haも少ない。千葉県はもともと主食用米の過剰作付面積が多いところで、生産調整は始まって以来一度も国から示された配分面積にまで作付を減らしたことはない。言い換えれば自主作付の先進県のようなところだが、どうしたわけか国からの生産調整配分が廃止されたにも関わらず、目安面積を作成して市町村別に配分している。30年産では「千葉県産米には主食用としての需要がある」との理由で、それまでに国が示してきた配分面積を踏襲した面積より多い目安面積を策定していたが、31年産はうって変わって達成不可能と思われる目安面積を示した。それだけではなく、主食用米から非主食用米に転換する生産者に助成すべく県独自に予算を計上した。
 具体的には飼料用米では、定着支援型として前年から継続して飼料用米に取り組む生産者に対してはその面積に対して主食用米品種で10a当たり1500円。多収品種では10a当たり3000円を支給する。拡大支援型では新たに主食用米から飼料用米に転換した生産者にその面積に応じて主食用米品種で10a当たり5000円、多収品種では10a当たり1万円を支給する。この他、団地化加算や飼料用米に必要な籾乾燥機、フレコンバックの計量器等にも導入費用を助成することにしている。さらには加工用米についても県独自に10a当たり3000円を助成する措置もあり、31年産では国からの助成金も併せると10a当たり4万5000円以上になる。しかもこの助成金は市町村単位で目安面積をクリアーすれば助成対象になるとしており、仮に加工用米が10a10俵穫れるとすると1俵4500円の助成金が得られるわけで、実需者と1俵1万円で販売契約したとしても1万4500円の収入が得られる。飼料用米では多収品種で増収すれば10a当たりの収入額が12万9680円になるといったパンフレットを作成して、生産者に飼料用米作付を呼びかかけている。こうした効果もあってか農水省の調査によると千葉県の31年産米の取組状況は飼料用米、米粉用米、輸出用米が前年産より増えると見込まれている。ところが肝心の主食用米作付面積は横ばいになっており、一体何が減るのかよくわからない。
 良くわからないのはこれだけではなく、千葉県は先週、集荷団体や流通業界を集めて「千葉県産米需要拡大推進協議会」を開催したが、この会合はオープンにしなかった。しかも31年産に向けてどのような需要拡大策を検討するのかという資料も外部には出さない。
 今、コメにとって最も重要なことは減り続ける需要を何とか回復させることであり、こうした取り組みこそ積極的な対応策が必要で、情報発信を強化しなければならないはずなのだが、それらはクローズして餌米の宣伝に力を入れている。まさに県は迷走しているとしか言いようがなく、五百川を作付して新たな需要を開発しようとしている生産者や流通業者は自主作付先進県の名誉にかけて国や県の助成金に頼らず自らの力で経営基盤を確立するしかない。

 

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