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【熊野孝文・米マーケット情報】棚田振興は生産現場への支援だけで良いのか?2019年4月16日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 棚田地域振興法案が議員立法で国会に提出されるというので、棚田の現状がどうなっているのか知りたくなって農水省農村振興局に行ってみた。そこで渡された棚田キラーコンテンツ化促進ガイドという冊子に山形県から宮崎県に至る15カ所の棚田が優良事例として紹介してあった。担当課長補佐がそのなかの一つ宮崎県高千穂にある秋元棚田の事例について説明してくれた。地区の特徴、取組み効果として「移住者を含む若者が中心となった(株)高千穂ムラたびでは、集落農家と共同で原料米の供給体制を構築し、高値で買い取った棚田米から、専門機関と連携してどぶろく・あまざけを生産し、約1億円の売上から雇用や地域還元の域内経済循環を創出している」と記されていた。甘酒で1億円という数字に目が釘付けになり、すぐに(株)高千穂ムラたびに電話してみた。
 対応してくれたSさん(役職名は隊長)によるとどぶろくや甘酒を作る会社が地元にあったわけではなく、まったくのゼロからのスタートで、最初は個人で製造許可をとったという。宮崎県食品開発センター等の協力を得て2014年にまろうど酒造を立ち上げ、そこで甘酒やどぶろくを生産し始めた。2年後に甘酒ブームが到来、毎年のように販売量が伸び、現在までに累計100万本が売れ、100万本達成記念キャンペーンを行っている最中。「ちほまろ」と名付けられた甘酒は、植物性乳酸菌と米糀で作られており、すっきりした飲みごこちが特徴だという。美味しさだけでこれだけのヒット商品になったわけではなく、もうひとつ大きな要因がある。それは物語性(ストーリー)で、この地区には夜神楽で有名な高千穂神社があり、ここには御神水と言われる超硬水があり、甘酒もこの水が使われている。
 折しも4月16日から高千穂神社では春の大祭が開催され、多くの観光客が押し寄せると予想される。(株)高千穂ムラたびでは、こうした催しをSNSで情報発信するだけではなく、フランスの旅行代理店と契約を結び、欧州から観光客を呼び寄せるということまで行っている。
 秋元の集落は人口100人で限界集落と言えるところだが、こうした取り組みで約4haある棚田は耕作放棄地ゼロになっている。
 棚田はその景観の素晴らしさから人気の観光スポットにもなっているが、棚田の魅力を発見したのは日本人ではない。
 そのエピソードは著名な経済学者東畑精一が著した「米」の中で紹介している。
 昭和13年ワシントンで開催された経済学会に出席した東畑は、ディナーで同席した外国人地理学者に突然「あなたの国にエジプトのピラミッドに比すべきものがあるのをご存知ですか」と訊ねられた。東畑は突然のことで答えられなかったが、地理学者は「それはあの日本の至る所、汽車から見える棚田ですよ。あの山の頂まで見事な段々をならして作られた水田のことですよ。あれをあんなに作り、そして見事に維持していくのは如何でしょう、実に驚くばかりの労働力が、幾百の農民によって幾十年の間に注がれていると言わなければなりません。あれはまさに農民の労働、勤勉の結晶であって、その点ではあのエジプトのピラミッドを立てるのに注がれたエネルギーに匹敵すると思いませんか。自分があなたの国に行って驚いたことは沢山あったけれども、あの日本のピラミッドを目のあたりに見た時の驚きに較べ得るものはありませんでした」と棚田に最大の賛辞を与えたという。棚田博士と称される中島峰広早稲田大学名誉教授はこの地理学者はウイスコンシン大学のトレワーサ教授ではないかと推測している。日本人でも棚田の魅力に気付いた人物がいる。
 それは国民的作家司馬遼太郎で、「街道をゆく」シリーズ27巻の「因幡・伯耆のみち、檮原街道」に記されている。司馬は兵役時代の同期兵と酒を酌み交わしていた時、檮原町史の口絵写真、檮原千枚田を思い出し「万里ノ長城も人類の大遺産だけど檮原に随所にある千枚田も大遺産やな」と言った。この発言が檮原町で全国棚田サミットが開かれることにつながる。 コメ業界にも棚田の魅力を多くの消費者に伝えようと頑張っている人がいる。川崎市で米穀店を経営するNさんは、全国の棚田を廻り、そこで生産された棚田米を商品化して販売している。現在、その数は20種類にもなり、そこまで品揃え出来るようになるまでは長い年月を要している。NさんもSNSなどを活用、遠方から棚田米を買いに来る人もいるようになったが、逆風が吹き始めている。それは運賃の高騰で、一般米に比べ高価な棚田米の売れ行きが落ち込み始めているのだ。

 

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