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【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(132)高齢者と非合法労働者が支える農業2019年5月24日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 高齢化は日本農業に特有の問題ではない。多くの先進国が似たような状況に直面しており、米国農業も同様である。少し古い数字だが、2000年のデータによると、米国の農場で働く人間の数は、1950年には約1000万人いたが、半世紀後の2000年には約319万人と1/3に減少している。

 農務省経済調査局によれば、1950年の約1000万人の内訳は、家族メンバーが760万人、雇用労働者が233万人であったが、2000年になると約319万人の内訳は家族メンバーが206万人、雇用労働者が113万人という形になる。もちろん、この中には無償の家族労働力がかなり組み込まれている。これがほぼ20年前である。
 一方、経済分析局のデータで穀物・畜産・その他の農作業支援業務等で賃金を得た人間のデータを合算していくと、2000年時点では、直接雇用で約87万人、支援活動で約44万人、合計約130万人強という数字を得ることができる。
 両者の違いは分類上の違いであるが、ここでは詳細には立ち入らない。ざっと見て、米国農業には約110~130万人の雇用労働者がいると理解しておけば十分であろう。

 

※  ※  ※

 

 さて、近年、この雇用労働者にも非常に興味深いいくつかの特徴が出てきている。
 第1に、過去10年間で雇用労働者が着実に高齢化していることだ。2006年には平均年齢が36歳であったものが、2017年には40歳弱となっている。これはある意味、先進国ではやむを得ない状況なのかもしれない。
 第2に、米国で生まれた雇用労働者の平均年齢はこの10年間で下がっているにもかかわらず、外国で生まれた雇用労働者の年齢が急激に増加していることである。図1を見れば一目瞭然だが、米国で生まれた雇用労働者の平均年齢はわずかではあるが10年前より下がり、36歳未満となっているのに対し、外国で生まれた雇用労働者の平均年齢は10年前の35歳代から41歳代へと伸びている。
図1はこちらから

 これが示している事実は極めて興味深い。理解するには、現在の米国の労働環境、そして農業現場で何が起こっているのかをよく考えてみれば、それなりに納得がいく。
 米国が新規の移民をかなり抑制始めたのは過去10年ほどのことである。その結果、若い移民が減少し、かつては若い頃に移民で入国した人間が、時間の経過とともに高齢化してきたというのが最もわかりやすい説明である。平均年齢を引き下げる若い移民が入らなくなったと言い換えてもよいかもしれない。
 一方、メディア等では米国における非合法入国者の話がよく出る。こちらはどうなのだろうか。これも少し古いデータだが、非常に興味深いものを示しておこう。穀物農場だけの資料(図2)であるが、1991年から2014年に至る米国の農場労働者の法的ステータスの推移である。ざっと見ればわかるとおり、過去20年間、外国生まれの非合法労働者の割合は約50%という数字が示されている。改めて見るとこれは凄いデータである。
図2はこちらから

 

※  ※  ※

 

 さて、米国は様々な意味で世界一の農業大国であることは間違いない。そしてその核の1つが穀物である。しかるに、米国の穀物農場における非合法労働者の割合がほぼ半数ということは、極めて「不都合な」状況なのかもしれない。
 米国で起こったことが数年のタイムラグを経て日本でも起こるという状況は、過去いくつもの分野で我々は経験してきている。また、現在の日本農業でも外国人労働者の問題が非常に重要であることは多くが認識している。外国人労働者の分野においても先行事例の教訓をどう活かすか、これも日本農業が抱える大きな課題の1つであることは間違いないであろう。

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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