【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】本末転倒の消費増税論2019年5月30日
「低所得世帯が増えている→教育などの無償化が必要→消費税の増税が必要」という主張を見受けるが、本末転倒に思われる。必要なのは、労働に対する適正な対価を支払うことにより、低所得世帯そのものを減らすことである。消費増税は、さらに低所得層を圧迫する。
日経新聞が、「賃金水準、世界に劣後~脱せるか『貧者のサイクル』 ニッポンの賃金(上)」(2019年3月19日)で、次のグラフを示し、「日本の賃金が世界で大きく取り残されている。ここ数年は一律のベースアップが復活しているとはいえ、過去20年間の時給をみると日本は9%減り、主要国で唯一のマイナス。国際競争力の維持を理由に賃金を抑えてきたため、欧米に劣後した。」と述べている。
最低賃金が世界的に非常に低いこともグラフに示されている。
出所: 賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」(日本経済新聞)
全労連も同様の事態をグラフ化している。
賃金が上昇しているかのような統計偽装も発覚したが、要は、名目賃金は上昇したが、物価上昇率を下回っているため、実質賃金は下がり、生活は苦しくなり、消費も低迷している(明石順平氏のグラフもわかりやすい)。ここで、消費増税をしたら、事態は悪化するだけである。
◇ ◇
相対的貧困率(等価可処分所得が貧困ライン以下の世帯に属する国民の比率)は、世界的にも群を抜いて高い。所得格差が非常に大きい国だということである。
注: 内閣府「平成26 年版子ども・若者白書」より作図。元データはOECD(2014)。
・相対的貧困率は等価可処分所得が貧困ライン以下の世帯に属する国民の比率。
・世帯の可処分所得は税引後、所得再分配後(社会保障など受給後)の所得。
・等価可処分所得は世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で除した値(四人家族の場合は可処分所得÷2)。
・貧困ラインは全国民の等価可処分所得平均(中央値)の50%。
出所:森亮太「世界と比較しても日本の「相対的貧困率」が高い理由」(2017年2月22日)
世界の貧困率 国別ランキング・推移
しかも、日本の相対的貧困率、所得格差は、年々、大きくなってきており、貧困ラインは1997年の149万円から直近の122万円まで 低くなってきている(大西連氏のグラフ参照)。
出所:貧困率は16.1%から15.6%へ改善 一方、悪化した数字も 大西連(Yahoo!ニュース)
一方、企業が利益から税金や配当を差し引いた上で積み立てた「内部留保」(金融・保険業界を除く全産業)は、2017年度末で446兆円、前年度末から9.9%増え、6年連続で過去最高を更新した。
出所::【図解・経済】内部留保の推移(時事ドットコム)
かたや、企業が稼ぎを人件費に回す割合を示す「労働分配率」(人件費÷付加価値額)の低下が続き、2017年度は66.2%で、43年ぶりの低さになっている。企業が利益を雇用者に分配せずに、ため込んでいる構図が見てとれる。
以上からわかるように、低所得層にも負担を強いる消費増税が解決策になるとの議論は誤りで、増税をするなら、労働に対する適正な対価を支払わずに、巨万の富を築いている人達への増税である。 そして、何よりも、不安定で低い賃金で国民を働かせ、一部の人達の利益だけが増え続けるように画策し続けているオトモダチのための私物化政治を転換することなくして、根本的解決はないと思われる。
農業については、農業労働の成果である農産物を買いたたいて、正当な対価を支払わない流通・消費構造と、買いたたきを助長する制度撤廃・制度改悪と買いたたきへの対抗力となる協同組合の弱体化を図る政治の転換が不可欠である。また、欧米のような農業所得の下支えを強化するには、巨大企業や巨額所得者に対する増税による財源の拡充も検討されるべきであろう。
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