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【小松泰信・地方の眼力】「アベ党」でよろしいんですかネェ2019年7月3日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 「安倍政権の危険性はいままでの保守政権の比ではないですよね。……いまは『アベ党』です。ものすごく強権的なファシズムに入ろうとしています」(前川喜平氏・元文部科学省事務次官、しんぶん赤旗、7月3日付)

◆「安倍農政」6年半で、農業生産の基盤弱体化は止まらず

小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 日本農業新聞(7月2日付)は、この6年半の「安倍農政」を検証している。
 安倍晋三首相は、「生産農業所得はこの19年間で最も高い水準」と、ことあるごとにその成果を誇るが、「伸びをけん引した畜産や野菜の産出額の増加の背景には、肉用牛の飼養頭数の減少など、生産基盤の弱体化による供給力の低下と、それに伴う価格上昇がある」ので、「手放しでは喜べない」と、くぎを刺す。
 もう一つの成果とされる農林水産物・食品の輸出額についても、「主力品目は水産物や加工食品」が多く、「農家所得の向上には直結していないとの指摘がある」とする。
 また、49歳以下の若手新規就農者が「統計開始以来、初めて4年連続で2万人を超えた」ことも強調されるが、「全体の新規就農者数は毎年5万から6万人で、離農者数に追い付」いておらず、「荒廃農地の面積も拡大が続いている」ことも伝えている。
 2014年に農地中間管理機構を創設し、あの手この手で担い手への農地集積率8割をめざしたが、そもそも目標が高すぎたのか、やっと5割を超えた程度。
 これらより、「政府が掲げた成果目標の進捗状況は芳しくない」として、「基盤弱体化止まらず」との大見出しとなった。

 

◆支持せず、評価せずとも、「アベ党」ですか

 翌7月3日付の同紙は、農業者を中心としたモニター587人から寄せられた意識調査結果を報じている。
 主な質問項目への回答結果はつぎのとおりである。
 「安倍内閣を支持するか」については、「支持する」が40.9%、「支持しない」が58.1%。
 「安倍農政」については、「評価する」(「大いに」と「どちらかといえば」の計)が27.4%、「評価しない」(「全く」と「どちらかといえば」の計)が65.5%。明らかに評価されていない。
 「評価する」とした回答者の「評価する政策(二つまで)」は、最も多いのが「農協改革」(38.5%)、これに「米の生産調整の見直し」(28.0%)、「農産物輸出」(26.1%)が続いている。
 「評価しない」とした回答者の「評価しない政策(二つまで)」は、最も多いのが「TPPなど貿易自由化」(53.9%)、これに「農協改革」(45.3%)、「米の生産調整の見直し」(22.1%)が続いている。
 「日米貿易協定は日本の利益になるか」については、「大いに利益になる」(1.5%)、「どちらかといえば利益になる」(12.9%)、「どちらかといえば利益にならない」(39.0%)、「全く利益にならない」(33.0%)である。大別すれば「利益になる」が14.4%、「利益にならない」が72.0%。明確な差が付いている。

 回答者の42.9%は自民党支持者。しかし、安倍内閣、そして安倍農政、さらには日米貿易協定、これらへの回答傾向から、自民党離れが進むかと思いきや、「参院選で投票する政党」で最も多いのが自民党の38.3%。これに公明党(2.4%)と潜伏与党の日本維新の会(2.9%)を合計すると43.6%。他方、野党を見ると、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の合計は26.4%。どう見ても、政権交代はもとより、安倍おろしにすら通じない雰囲気が漂っている。
 もちろん、「決めていない」は28.4%も存在するが、消極的政権与党支持層と位置づけなければならないだろう。

 

◆恫喝に買収!? JAグループは大丈夫ですか

 毎日新聞(6月30日付)によれば、自民党の二階俊博幹事長は、29日、徳島市内であった党参院議員の激励会で、土地改良事業関係者を前に挨拶し、参院選で「我々の方針と一緒にやってくれないところは予算は休ませてもらう」、「選挙を一生懸命やってくれるところに予算をつけるのは当たり前。やりましたよと胸張って言えるようにすれば、要求に満額お応えする」と述べたそうだ。この発言内容、どこから読んでも、国の予算編成に対する与党の影響力をたてに選挙活動への協力を迫った、まさに恫喝による買収行為である。これが、大問題として取り上げられないのが、不思議の国でアリンス。
 間違いなく、JA関係者にも同じ手口が使われている。
 二階氏と太いパイプでつながっているJA全中会長中家徹氏は、『地上』(2019年7月号)で、次のように語っている。
 氏は自らの経験から、「わたし自身も......地域コミュティーのなかで生きてきました。ところが、近年、農村の人手が不足するなかで、協同作業を業者に任せてしまうという例も見られます。お金を払えば解決できることもあるでしょうが、それでなにを失ってしまうのか、今こそわたしたちは目を向けなければなりません」と、語っている。
 お節介な当コラム、「お金を払えば」を「お金を貰えば」に差し替えて読むことをおすすめしたい。
 さらに、「10年、20年先を見すえ、この国の食や農業をたいせつにするという国民・消費者の心を育てていく視点が重要です」、「国民・消費者に支えられ、農業が元気になれば、地域が活性化し、食料の安定供給にたいするリスクも減らしていける」、「農業は、人の命を育む、いわば〝生命産業〟です。そこに携わっているというプライドを、JAグル-プ全体で持ち、国民に理解を広げていきたいと思います」と、決意が語られている。
 内容自体にはまったく異議を挟む余地なし。しかし、「JAグループは国民・消費者に信頼される組織です」、と胸を張って語れる段階には至っていない。これほどひどい「アベ党」やその中心人物らと懇ろの関係を続けている限り、信頼を得ることはない。

 

◆政権交代でくらしの危機を突破せよ

 安倍首相は、憲法問題を参院選の争点としたいようだが、憲法改正は争点にならない。にもかかわらず争点にしたいのは、野党つぶしのため。現政権を裏で支える、カネだけ目当ての広告業界人たちは、分厚く存在する支持なし層が「憲法に無関心」であることを知っている。これが争点になればなるほど、支持なし層は選挙に関心を失い棄権する。投票率が下がれば下がるほど政権与党は有利となる。それはさせじと野党は、「政権交代でくらしの危機突破」をメインに据え、年金、福祉、景気、雇用、消費税などを争点にすべきである。そこに、JAグループが誠実に関わっていくならば、少しは信頼されるんちゃいますか。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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