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【熊野孝文・米マーケット情報】コシヒカリが美味しくないという世代2019年7月16日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

【熊野孝文・米マーケット情報】 早いもので今週には新米が取引される時期になって来た。今週18日に全国3会場で行われる日本コメ市場の全国取引会では令和和元年産宮崎早期新米が上場される予定。前日の17日に宮崎県内で地元の自治体や農協、集荷業者などが出席して作柄報告や集出荷に向けての会合が開かれることになっている。
 事前の情報では、元年産宮崎早期米の作柄は茎数や粒数不足で作柄が良いと言えるような状態にはなっていないが、問題は収穫時期で、消費地では7月中にどのくらいの数量が出荷できるかに関心が集まっている。その理由は30年産新潟コシヒカリや秋田あきたこまちのポット価格が想定外と言うべき高値に踊っており、30年産米の手持ち在庫が少ない卸は量販店向け用のコメは早めに新米に切り替えたいという思惑があるためで、多少でも30年産銘柄米のタイト感を緩和したいといったところ。
 では、実際、宮崎早期米コシヒカリはどの程度の価格でスタートするのか? 昨年の同時期は今ほど銘柄米のタイト感があったわけではないが、それでも7月中に受渡しされた新米は東京着で1万6000円以上の高値を付けた。ただし、その後に続いた新米は時期別格差が大きかったこともあって大幅に値下がりした。これは仕入れサイドのちょっとしたテクニックで、時期別格差を大きくすればトータルの仕入れコストが抑えられるので、精米で販売しやすい価格帯に設定できる。
 ひと昔前までは新米セールの第一便販売合戦が激化した結果、新潟コシヒカリ並みの価格で取引された時期もあったが、それは既に昔の話で、現在はそうしたいち早く新米が欲しいというニーズは消し飛んでしまった。南九州の早期米は収穫時期の天候により、入荷時期がずれ込むことが度々あり、新米セールを謳ったチラシが無駄になるといったケースもあり、消費地の卸がリスクの高さから手を引いたということも原因だが、もっと大きな原因は消費者が新米に対して価値を覚えなくなったということの方が大きい。これは早期米に限ったことではなく、以前良く見られた新米セールそのものが関心を惹かなくなったことにある。
 新米イコール美味しいというイメージが薄れ、実際、新米の方が美味しいのかと問われても自信を持って美味しいと答えられる流通業者はいないだろう。消費者の嗜好の変化と言ってしまえばそれまでだが、嗜好の変化でもっと大きなことが起きている。
 そのことが分かるのは福井県が新品種開発のために行った消費者の嗜好調査で、それには意外な結果が出ている。調査はコシヒカリとハナエチゼン、コシヒカリ系統とは違うA系統とB系統という4つの品種を1500名に食べ比べしてもらい、一番美味しいと思う品種を答えてもらった結果をまとめたもので、それによると第一位はA系統で33%、第二位がB系統25%、第三位はハナエチゼン23%、コシヒカリは最下位の19%という結果で、コシヒカリは最下位になった。年代別では60歳から70歳代はコシヒカリに軍配を上げているが、小学生はなんと9割がコシヒカリ以外の品種が美味しいと答えたという。
 以前このコラムで紹介したが、大手中食業者が行ったヒノヒカリとカルローズの食べ比べでも若い男性はカルローズの方が美味しいと答えており、若い世代ほどコシヒカリを美味しいと感じなくなっているということが窺える。小学生がコシヒカリが美味しくないと答えた最大の理由は「ネチャネチャして嫌だ」と言うものだった。
 以前、東京農業大学で開催されたコメのシンポジウムで、世界のコメの嗜好を地図上で紹介したものを見せられたが、世界の中には少数ではあるがもち米を主食としている地域もある。そうした食文化が日本にもたらされ、ジャポニカ種でももち米に近い粘りのあるコメが好まれる傾向が生まれたのかも知れないが、福井県の調査結果を見るとそうしたもちもち感のあるコメは必ずしも若い世代には好まれていないということも出来る。
 現在、日本で作付されている品種は7割以上がコシヒカリ系統である。消費者の嗜好が多様化しているという事であれば、このコシヒカリ系統の偏重は行き過ぎということも出来る。
 では、どんなコメが好まれるのかと問われると、それは消費者に聞くしかない。量販店やコンビニの米飯商品売り場を見るともち麦や雑穀を混ぜた米飯商品が次々に売り出されている。これらは美味しさプラス機能性がある米飯商品だといえば、それにマッチした品種がもてはやされることになるかもしれない。

 

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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