【JCA週報】農村と「家の光」の風雪100 年2019年7月16日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「農村と「家の光」の風雪100 年 草の根の夢と現実の狭間」です。
協同組合研究誌「にじ」2018年秋号に寄稿いただいた、文芸アナリスト大金義昭氏の論文冒頭部分を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2018年秋号「特集:協同組合と文化」
農村と「家の光」の風雪100 年 草の根の夢と現実の狭間
大金 義昭 文芸アナリスト 食料・農業・農村ジャーナリスト

「共存同栄」の理想に燃えて
『家の光』は、産業組合の「通俗家庭雑誌」として創刊された。1925年(大正14年)だから、93年前になる。「通俗」には、「世間一般の人々に親しみやすく、わかりやすい」といった字義がある。『家の光』は読者対象を往時の「大衆」に設定し、産業組合の普及・拡大を目指した。
したがって、その濫觴期から産業組合の「啓蒙主義」を貫いた。しかし、いつの時代も、剥き出しの啓蒙主義ほど「大衆」にとって味気なく鼻持ちならないものはない。「おもしろくて為になる」「通俗家庭雑誌」に挑む草創期の苦心が、そこから生まれた。
世は、大正デモクラシーの花盛りであった。大正デモクラシーの時代区分には諸説があるが、その期間は概ね、国内に米騒動が勃発し、欧州を主戦場にした第一次世界大戦が終結する1918 年(大正7年)前後の20年余と見てよい。
この期間は、産業の独占資本主義的な発展に伴い、都市化が急速に進んだ。併せて政治的な市民権が成立し、労働者や農民が「不特定多数の無産階級」として時代の前面にせり出してくる。彼らこそ、この国の近代に初めて登場した「大衆」であった。
その「大衆」を、誰がどのような立場からどのように組織するか。「大衆」の争奪戦が展開し、マス・メディアが発達した。
折しも、吉野作造の民本主義などに基づくデモクラシーの気運が盛り上がり、労働者や農民の労働・小作争議などが激増。社会運動が勢いを増すこの時期に、産業組合法発布25周年を迎えた陣営は、全国に14,500余の組合を有し、400万人余の組合員を擁していた。
その内実はしかし、多数の組合が経営不振に陥り、設立と解散に明け暮れていた。このため、「産業組合振興刷新運動」が企画され、『家の光』がその一環として刊行された。
ドイツの「産業および経済組合法」をモデルにした産業組合は、国家主義的な殖産興業政策の円滑な推進を至上命題に、「勤倹貯蓄」「相互扶助」などを推奨する組合精神の見地から、組合員の経済・社会的な軋轢や矛盾を解決しようとする。台頭する社会主義思想とは、明確な一線を画した。
『家の光』はそうしたミッションを体現し、産業組合が「大衆」争奪戦に参入するツールとして誕生している。労働・小作争議などの原動力にまで成長した「大衆」を産業組合の陣営に誘導し、「偕和協調」主義に基づく協同の原理と「共存同栄」の精神とによって社会を改良しようとする活字メディアの機能を付託された。
したがって、『家の光』は産業組合の派生物、言い換えれば、産業組合のプライベート・ブランドあるいは産業組合思想を普及するコンセプト・マガジンとしての媒体特性を有し、ナショナル・ブランドやクラス・マガジンとは異なる独自の位相をマス・メディアの世界で堅持していくことになる。

(以下 略)
協同組合研究誌「にじ」 2018秋号より
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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