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【熊野孝文・米マーケット情報】本上場を認められなかった堂島取の次の手は?2019年7月30日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】


コラム 米マーケット市場 見出し画像.jpg 大阪堂島商品取引所(以下堂島取)が農水省にコメの本上場を申請したが認められなかった。堂島取は7月29日に臨時総会を開催し、試験上場の再申請を行う。試験上場の延長申請は5回目になるが、これをしないと4か月間、先物市場でコメの売買ができないということになりかねないため、堂島取としては唯一残された選択手段ということになってしまった。 農水省が本上場を認めなかった理由について文書で回答している。そこには以下のように記されている。「試験期間中の平成29年8月8日以降の取引量(1日当たりの出来高)は、平成27年8月8日以降の2年間と比べて大幅に減少していることに加え、試験上場開始の2年間と比べても、それを下回っている状況にある。このような試験上場期間中の取引の状況を勘案すれば、取引を公平かつ円滑にするためには十分な取引量が見込まれると認められなかったため」。農水省は試験上場中の出来高を重量換算したものを作成している。それによると第1期(平成23年8月8日から25年8月7日)が1日当たり3791t、第2期(平成25年8月8日から27年8月7日)が7380t、第3期(平成27年8月8日から29年8月7日)が1万283t、第4期(平成29年8月8日から令和元年6月30日)が3173tになっている。農水省は前回堂島取がコメの試験上場を再延長申請した際に食料産業局長名で、本上場については「十分な取引量が見込まれること」が要件の一つになっていたが、その具体的な取引高の数値は示されていない。このことについては当時何度か担当部署の商品取引室に具体的な数値をどう考えているのか聞きに行ったが、答えは得られなかった。今回も同じ答えだったので商品取引室長に聞きに行ったが、なんと室長席は空席になっていた。コメの試験上場の期限が切れる時期は以前から分かっているはずなのに肝心要の室長席が空席になっているなど考えられないので驚くしかなかったが、代理の専門官が「2年ごとの試験上場期間中で直近の出来高が最も少ない」ことを本上場を認可しなかった理由に挙げた。
 本上場を認めるか否かの判断では、もう一つの要件がある。それは「生産者や集荷業者等の幅広い参加を得ながら、安定取引の拡大といった今後のコメ政策の方向に沿ったものとなっているかどうか」である。
 直近のコメ先物シーズンリポートによると、3市場合計の総建て玉に占める当業者の割合は39.4%になっている。期近限月に限ると65.9%に上る。新潟コシは96.4%、秋田こまちは95.0%で、ほぼ生産者や集荷業者、流通業者といった当業者同士で取引されていることが分かる。特に生産者の参加者は倍増しており、食料産業局長の言うところの「生産者や集荷業者等の参加」がなされていることになる。しかも日本農業法人協会や大規模稲作生産者が連名でコメ本上場の要請を行ったにもかかわらず無視された格好。専門官は「無視はしていない」というものの生産者の要請がどう判断されたのかには一切触れられていない。
 日本農業法人協会はこれからの日本農業を支える担い手で組織される団体である。そうした組織がコメの本上場を要請したにも関わらず、この要請は顧みられなかった。コメの生産者にとって、規模の大小を問わず、先行きのコメの価格が分かるという事は、先物市場を利用しようがしまいが大変メリットがあることだという事に異論はないはずである。しかも先物市場に売り繋げば作付前に所得が確定することにも経営上も大きなメリットがある。
 コメが先物市場に本上場されるよう要請書に署名した90名の生産者の中の1人は「全農がコメ先物市場に反対と言うのであれば堂々と議論すべきである。本上場されれば、海外に向けて輸出される際に輸出地での値決めもやりやすくなるが、それができなくなった。折しも中国の大連でジャポニカ米が先物市場に上場されるというニュースがあった。中国の先物市場で形成される価格がジャポニカ種の指標になってしまう」と懸念している。大連商品取引所が共用品として新潟コシヒカリを売買、値決めするようになったら日本のコメの価格は中国で決まるようになる。そうなったときは取り返しが効かないので、堂島取は試験上場の延長を勝ち取るとともに、まったく新しいやり方でコメ先物市場を活性化するしかない。それにはまず組織を株式会社に衣替えし、売買規約を変更、コメを証券化して小口投資家に対してコメを現物でも買えるようにすることである。そうすることによってコメ先物市場の景色は必ず一変する。

 

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