【リレー談話室・JAの現場から】 新しい中央会に期待する2019年8月19日
自覚とプライド持って
◆組織力の強み発揮
いま農協が変わる。全中が一般社団法人に、県中が連合会組織となる。どう変わるか、県中職員であった私の関心は高い。県中の大先輩から教わったことがある。「農協の最大の強みは組織力」「農協が発展した訳は3つある。それは①ほとんどの農家が組合員として農協に参加したこと、②単協・県連合会・全国連と全国的な組織であること、③組織の頭脳として中央会があること」の言葉が魅力的であった。
そんな言葉とともに、組織力をどう発揮したらよいのかを意識する農協、組織力を発揮する事業が求められた。それは、協同経済効果を最大限に高めるために農協事業を利用し、営農と暮らしをよくしたいと思って農政運動に参加する農家の姿を求める農協であろう。さらに中央会は、農協事業が農家のためになっているのかを監査し、問題を発見して改善策を示そうとする指導が求められた。こうして中央会の役職員は、組織の頭脳になれるよう、組織の自浄作用を発揮する組織になれるように、と仕事に対するプライドや能力を身につけるべき高いレベルが求められる風土があった。
そして政府や地方行政、関係団体や企業、国民の多くは、農協に結集する多くの農業者の姿が見えることによって農協を高く評価する、と教えられた。だから当初の農協法では、農業者の地位を高めるため、農協の強みである組織力を高めるための中央会制度があったといえよう。
従って先の農協法による中央会制度廃止の最大の問題は、農協の強みである組織力を高めるための中央会制度が廃止されたことにあるといえよう。特に農業者の権利として農協法で明記されていた行政への建議権を取り上げられたことは許されない暴挙であると考え、認識されるべきものでなければならない。こうした問題意識に立って新しい中央会に何を期待するのかを考えてみよう。
◆営農と暮らし根幹に
今の農協に求められる組織力とは、いうまでもなく組合員の営農と暮らしを守るための事業に参加する組織力である。営農面では、農業者の所得が確保・保障される事業であり、農業者の所得向上ができる事業であり、地域農業を振興する事業であり、国民の食料自給向上に貢献できる事業であって、こうした事業を確立することである。
暮らしの面では、組合員の暮らしを守る事業であり、暮らしの向上ができる事業であり、地域福祉を充実する事業であり、地域社会に貢献できる事業であって、こうした事業を確立することと、こうした事業に参加する組合員を確保することである。
組織力を高めるためには、先ず組合員に対する協同組合員としての意識改革・組織づくり・仲間づくりが求められる。そして、組織力を発揮できる事業規模の確保が求められる。さらには、組織力を高めさせる側の役職員に対する協同組合役職員としての意識改革・教育・リーダー育成が求められる。また、組織力を高めるための協同組合としての仕組みづくり、経営戦略・事業づくりが重要となる。
今の農協にとっての最大の組織力発揮は、第1に総合事業としての全国ネットワークをどう確立するかにかかっている。第2には、農業者と消費者が共に協同組合の組合員として食料自給率向上をすすめる地産地消事業としての全国ネットワークをどう確立するかである。
◆生・消でネット事業
農協法による中央会制度が廃止された中、新しい中央会に何を期待するのかは、その組織構成員である組合員が何を求めるのかに答えがある。私の答えは、協同組合である農協の組合員が求める新しい中央会には組合員の営農と暮らしをよくするための農協の組織力を高める仕組みづくりを進めてもらいたい。
具体的には、第1に総合事業としての全国ネットワークづくりである。例えば生産者と消費者が組合員として参加・利用する農村・地方の生活の経済拠点となる総合事業店舗サービス(農協コンビニ、名前はローソンならぬ改めノウソン、ネット総合事業サービスなど)のシステム構築と物流構築である。
第2に食料自給向上としての全国ネットワークづくり。例えば生産者と消費者が組合員として参加・利用する地産地消事業サービス(直売所・インショップ・通販など) のシステム構築と物流構築である。
第3に組織力を高めるための組合員に対する協同組合員としての意識改革・組織・仲間づくり、役職員に対する協同組合の意識改革・教育・リーダー育成、協同組合としての仕組みづくり(経営戦略・事業づくり)指導である。
第4に農協による社会貢献・国際貢献事業の展開、そして第5に国民や世界への農協のPR・理解づくり活動である。
以上、新しい中央会には、中央会役職員としての自覚とプライドを持って、新しい農協の組織力を高めるための役割を発揮することを強く求めるとともに、元中央会職員としての〝中央会愛〟の思いと、現在の農協役員としての大いなる期待がある。
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