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【熊野孝文・米マーケット情報】関東早期米、業者間取引会で高値スタート2019年8月20日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 8月9日、千葉市で開催された米穀業者の席上取引会。昨年は8月17日に開催されたが、今年は暦の関係では1週間早めに開催された。取引会当日は首都圏の米穀業者だけでなく、近畿、北陸、東北からも参加、総勢60名が出席した。
 この新米取引会は、関東早期米の相場の位所を探るという意味で全国から注目されている取引会だが、事前の予想では成約が進まないのではないかと見られていた。成約が期待できないと見られていた最大の要因は、千葉、茨城の早期米の生育が7月の長雨・低温で1週間から10日遅れていることにあった。例年であれば早い生産者はあきたこまちを盆休み前に刈り取る人もいたのだが、今年は盆休み明けから月末にかけて刈取り時期になると予想されていた。
 当日の取引会では、場立ち3名を立て、参加者に売り買いの声を上げるよう催促、すぐに消費地の卸から千葉ふさこがね、ふさおとめ、9月中渡しでコシヒカリの買い声があがったが、一向に産地業者が売り声を出さず、買い人が9月3日まで渡し条件で千葉ふさこがね1等を1万4050円まで競り上げたところで産地業者が売り応じ、1車220俵が成約した。
 これを皮切りに続いて9月5日渡し条件で千葉ふさおとめ1等が1万4200円で買われた。その後、千葉ふさこがねが置き場1万4000円で次々に成約、千葉コシヒカリも9月20日まで渡し条件1万4600円で成約、これに続き茨城あきたこまちが1万4300円で成約した。
 終わってみれば25件8560俵が成約した。まだ、現物が収穫されていない状況下での取引としては成約が進んだ方だが、価格については昨年の取引価格より1俵当たり700円から800円高で、事前の予想よりは高値になった。買い手の卸の中には、新米にスムーズに移行するために量販店との精米値入交渉で1万5000円以下の玄米であれば採算が合うように値入を済ませていたところもあり、これも上値を買われた要因だが、それよりもやはり収穫遅れに加え、ちょうどこの時期台風10号が接近しており、進路コースによってはさらに刈り遅れが発生する可能性があり、産地側が慎重であったことが最大の要因。実際、昨年の取引会では即積み条件や8月中渡しでまとまって成約したが、今年は8月中渡し条件では成約がなかった。
 この成約結果は直ちに全国に情報が伝わり、元年産米の相場指標になったのは間違いないが、大規模稲作生産者や集荷業界団体や卸業界の受け取り方はマチマチ。それは第一に関東の早期米作柄は良くないとされているが、中生の主力コシヒカリについては、作柄は早生に比べると良いとされていることや北陸、新潟、東北の日本海側、北海道の作柄は良好との見方で、早いところでは今月の下旬、北海道も9月上旬には初出荷可能との情報が伝わっており、先安と見ている業者も多い。それと農水省が何としても主食用米を値上げしたいためか元年産新規需要米の認定期限をさらに一ヶ月先延ばししたことや政府備蓄米の買入入札をまだ止めないことから「米価の下支え政策」が本腰だと受け止められており、これが心理的に効いている。要するに年号は変わっても高米価政策の本質は何も変わらないということがハッキリしており、こうした要因が影響して新米相場を形成したとも捉えられている。
 ただし、そうしたコメ政策が取られているからといって新米価格が下がらないと見るのは早計だ。このことは量販店のコメ売り場を見て回ればすぐに気づく。量販店の中には東北の銘柄米を5kg1380円で特売を仕掛けているところもある。なぜこうした破格の精米商品が並べられるかというと、それはこの量販店に納入している米卸が在庫処分に動いているからに他ならない。この卸は過去に20億円近い在庫差損を発生させたこともあるが、いかに商社資本が入っているとはいえ、2度も3度も同じようなことを繰り返すわけにはいかない。
 在庫差損を減らすには新米が本格的に出回る前に30年産米を処分する事に越したことはない。在庫の過多の規模は卸によって違うが、新米が1週間早いか遅いかでもその差損に大きな影響がある。事前契約とは聞こえは良いが、それを実行するためには買い手の卸は大きなリスクを背負い込むという良い見本である。事前契約の中身が真に数量と価格がセットになっているものであったら、そのリスクは倍増する。そうしたリスクを背負い込んでまで事前契約をする卸がそう多くいるとは思えないが、農水省の取りまとめではそれが増えているというのだからこのことこそが新米相場動向を判断するうえで最も不思議な現象かもしれない。

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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