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【熊野孝文・米マーケット情報】規模拡大で質的変貌が起きる水田作経営体2019年8月27日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 第14回「アグリフードEXPO東京2019」(日本政策金融公庫主催)が8月21日、22日の2日間、東京ビッグサイト南館で開催された。

 アグリフードEXPOは、国産にこだわり広域に販路拡大を目指す農業者や食品加工業者とバイヤーをつなぎ、ビジネスマッチングの機会を提供する展示・商談会で、今回は668社が出展、各社が自慢の農畜産物や食品を来場者に紹介、実商談に結び付きやすいように事前予約制の個別商談席を設けた他、ジェトロと協力、海外輸出の相談もサポートした。また、今回は物流相談コーナーを新設、小口対応可能な物流業者2社を招きアドバイスを行った。
 コメ関連では北海道から鹿児島まで全国からおよそ50社・団体が出展、こだわった栽培方法や機能性があるコメ、それらを原料とした米糀甘酒等飲料品、グルテンフリー食品、加工品を展示、来場者に試食提供した。
 宮城県大崎市は、大崎耕土が世界農業遺産に登録されたことから元年産米から「ささ結」を「世界農業遺産ブランド認証米」として販売開始する。大崎市はササニシキ直系のコメ東北194号のブランド化に熱心で「ささ結」という商品名で商標登録、市が音頭をとって生産者や農協、流通業者で組織されるコンソーシアムまで作っている。大崎市産業経済部農林振興課によると元年産のささ結の作付面積は130haで、市が定めた減農薬基準で栽培、タンパク値6.5以下のものを「ささ結」として販売することになっており、さらに農業遺産認証米として認証を得るために農家自身が生き物のモニタリング調査を実施、環境に配慮したコメ作りを行っていることを確認したうえで認証することになっている。
 クボタファームは、ブースにクボタファームが全国で展開している農場を日本地図上に示した。同社は、新規就農者づくりのために農業が儲かることを実証するために始めた全国13ヵ所のクボタファームの取組みを紹介したという。この内コメ作りでは富山、新潟、山形、兵庫、熊本で行っており、熊本で生産されたコメを原料に玄米を一晩寝かせ、高速ミキサーで微粒粉砕した「玄米ペースト」を使って製造した玄米パンを試食提供した。
 生産者では青森市の山田ふぁーむがリゾット用のコメ「カロリーナ」を1年間保管したものを紹介した。山田正樹代表によるとカロリーナは保管・熟成させたものの方が価値が高いという。佐賀県の光吉農産は、佐賀のオリジナル品種「夢しずく」と「さがびより」をペットボトルに入れ「実り咲かす」という商品名で紹介していた。
 出展した稲作生産者の中には、独特な請負耕作方式で急速に経営面積を拡大している株式会社形式の法人もあり、その会社の代表に元年産の販売予定を聞いてみると「外資系量販店だけで8万俵」と答えたので、自分の耳を疑ってしまった。8万俵というと米卸が量販店に納入する規模で、1農業生産法人が納入できるような数量ではない。それを可能にしているのが請負作業の代金を丸ごとコメで受け取るという手法を採用しているからである。請け負いした水田で生産されたコメは全て同社が買取るという手法で、収穫から籾摺り、精米、納品までを考えられないようなスピードでこなしている。このため新たに低温倉庫を建設、年内に精米工場も増設する計画である。
 生産者が量販店に直納している例はこの生産者だけではない。新潟の生産法人は、周辺の大規模稲作生産者と共同で有限責任会社を設立して、この組織を通じてまとまった量の新潟県産米を首都圏の大手量販店に納入している。
 2015年は農業センサスの調査では100ha以上の水田面積を耕作している経営体は334社ある。それが2020年には425社、2025年526社、2030年には624社になると予測されている。小規模面積の稲作農家数が急激に減少、その分20haから70ha規模の面積を耕作する経営体が増加するという予測もなされている。深刻なことはそうした担い手がいない場合、耕作放棄地が拡大するという予想もあり、秋田県では2025年には1万8000haが耕作できないという予想もある。大潟村の水田耕作面積が約9000haなので、大潟村2個分の水田が耕作されなくなるという予想である。まさに日本の水田作は危機的状況にあるという認識が必要だ。
 こうした状況を回避するためには、担い手になるべき稲作経営体が生産手法から販売手法までを大きく変える必要がある。経営手法の質的変貌が起きることは疑いようがない。

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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