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【小松泰信・地方の眼力】紳士協定の重さ2019年9月11日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 西日本新聞(8月29日付)によれば、長崎県に大雨特別警報が発表されていた8月28日午前、中村法道長崎県知事は、長崎港の整備を求める陳情で国土交通省へ。同特別警報は午前5時50分に出され、午後2時55分に解除。「副知事2人は地元におり、突発事態にも対応できた」とは県の弁明。「既に災害が起きている状況を示すのが特別警報。県の危機管理のトップが不在にしていいのか。急ぎでない陳情は延期すべきだった」と指摘するのは、災害リスク学を専門とする広瀬弘忠東京女子大学名誉教授。

◆一国依存リスクが顕在化する対馬

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生) 「長崎・対馬の観光地が閑散としている」ではじまる日本経済新聞(9月6日付、九州経済面)によれば、韓国・釜山から約50kmと近く、今春まで韓国人観光客でにぎわっていた飲食店や観光名所から人が消えた。地元観光産業は大きな打撃を受け、韓国に依存した集客策から、国内客や東南アジア客の取り込みへ転換を急いでいる。「韓国人団体客は8月に入ってほぼゼロ。コストを抑制するため、照明は落としている」と語るのは、対馬市厳原町にあるホテルの専務。

 同紙によれば、2018年に同市を訪れた韓国人は41万人で、市の人口の10倍以上だった。19年の上半期は前年同期比1割増の22万人であったが、7月の政府による対韓輸出規制の発動などが転機となり、韓国人観光客は急減。「日韓関係が好転しない限り、より厳しくなる」(対馬振興局)との見方が多い。
 一国依存体制から脱却するために、県は国内旅行会社に新たな旅行商品の企画を働きかけているとのこと。また、対馬観光物産協会会長も「一国依存のリスクが顕在化し、国内や中国、台湾、東南アジアから誘客する機会ととらえたい」と語っている。

◆IR(カジノを含む統合型リゾート施設)誘致にもご執心

 スナップをきかせて記者会見用資料を見事に放り投げた、林文子横浜市長の手のひら返し参戦で、IR誘致の動きが活発化している。長崎県も佐世保市の大型リゾート施設ハウステンボスへの誘致を掲げている。
 西日本新聞(9月2日付)によれば、長崎県知事は、8月下旬の定例会見で横浜参戦に関して「全国各地で動きがある中で、厳しい競争に勝ち残っていかなければならない。しっかりとした魅力のあるIR計画を組み立てていくことが最重要課題だ」と応じている。ただし、横浜市と大阪市が本命視される中で、長崎県は「地方枠」を狙っているそうだ。
 「ギャンブル依存症対策」などクリアすべき課題は多いが、全国平均の4倍のペースで人口減が進むことなどから、2014年3月に県議会で正式に誘致を表明し、17年10月にはIR推進室を新設したとのこと。
 国際的賭場という不健全な大規模迷惑施設がもたらす貨幣換算できない外部不経済(公害)についてよりも、賭場の開帳による経済波及効果が年間約2600億円に及ぶとの皮算用を重視していること間違いなし。
 記事では、九州新幹線西九州(長崎)ルート、いわゆる「長崎新幹線」の先行きが見通せないことや、道路網の整備の遅れを指摘している。ちなみに、県の資料にも「輸送力不足」「容量不足」との文言が並ぶとのこと。


◆「長崎新幹線」の迷走

 その長崎新幹線で佐賀県内を通る未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)を巡り、与党プロジェクトチーム検討委員会は8月5日、建設中の区間と同じフル規格で整備することを決めた。しかし、佐賀県はまったく納得していない。
 もともと同区間は、車輪をスライドさせて、狭軌の在来線も走ることのできる新型車両フリーゲージトレインを開発・導入することで在来線ルートを活用する方針がとられていた。ところが、技術開発が間に合わず、政府は導入を断念していた。
 この間の長崎県と佐賀県の対立をめぐって、毎日新聞(9月7日付)の社説は、「佐賀県の怒りは無理もない」とする。その理由として、「九州新幹線・長崎ルートを巡る計画が当初同意した内容と大きく変わってしまった」ことや、「もともと佐賀県には魅力の乏しい計画だった」ことなどをあげている。そして、「地元の県が求めていないのに、フル規格で整備すると中央が押し付けるやり方は、地方自治の観点から大きな問題だ」とする山口祥義佐賀県知事の主張に理解を示している。
 

◆"イシキ" の叫び、再び 

 当コラムが2018年10月17日に「"イシキ"の叫び」として取り上げた、長崎県川棚町川原(こうばる)地区における「石木ダム」建設問題が重大局面を迎えている。 
 タウン情報紙「ライフさせぼ」は、「長崎県と佐世保市が計画を進めながら、約半世紀もこう着状態が続いてきた石木ダム問題。ついに国や公共地方団体が必要とする土地を強制的に収用することができる法律(土地収用法)に基づき、地権者所有地の「強制収用」を決定。おりしも9月19日(九十九島の日)に、土地の所有権が、国に移転する手続きが実施され、11月までに家屋を含む土地の明け渡しを求めることになりました」として、『石木ダム緊急集会』(9月8日開催)を告知している。
 その集会の参加者からの伝聞であるが、ダム建設予定地で半世紀以上も反対運動で頑張って来た岩下和雄さんが、「1972年、私たち住民と県知事と川棚町長で、覚書を結びました。そこには『ダムを造る必要が生じた場合には、改めて書面で住民の同意を得てから着手する』と記しています。この覚書について『ちゃんと守ってほしい』というと、県は『紳士協定だから、法的な拘束力はない』と言い放っています」と、訴えたそうである。
 確かに入手した「石木川の河川開発調査に関する覚書」は、長崎県東彼杵郡川棚町字川原郷、岩屋郷、木場郷(以下「甲」という。)と長崎県(以下「乙」という。)の間で、1972(昭和47)年7月29日に取りかわされている。「甲」は三郷の総代、「乙」は当時の長崎県知事久保勘一氏。立会人は当時の川棚町長竹村寅次郎氏。
 そしてその第4条には、「乙が調査の結果、建設の必要が生じたときは、改めて甲と協議の上、書面による同意を受けた後着手するものとする」と記されている。
 また同日、三郷の総代と川棚町長との間で取りかわされた『覚書』の第1条には「石木川の河川開発調査に関して甲と長崎県知事との間に取りかわされた覚書はあくまで甲(地元民)の理解の上に作業が進められることを基調とするものであるから、若し長崎県が覚書の精神に反し独断専行或いは強制執行等の行為に出た場合は乙は総力を挙げて反対し作業を阻止する行動をとることを約束する」と記されている。ここでの乙とは川棚町のことで、今日の情況を想定していたかのような極めて重い内容である。
 紳士協定の核心部分は、「信頼」にあるがゆえに、局面によっては法的拘束力以上の力を有している。それを平気で反古にする長崎県は、地方自治の精神を自ら蹂躙する信頼に価しない存在であり、総力を挙げて戦うべき対象である。
 「地方の眼力」なめんなよ

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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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