【熊野孝文・米マーケット情報】糖質77.9%オフというコメ2019年9月17日
SNSに「久しぶりにご飯が食べられるようになって嬉しいです」と言う書き込み。点滴を受けていた病人が通常食に戻って嬉しがって書き込んだものではない。ダイエット中の若い女性が、糖質が普通のコメに比べ77.9%も少ないというコメを使って炊いたご飯を食べた時の感想である。
このコメを最初に見たのは、先月末に東京ビッグサイト開催された外食ビジネスウイークという外食業界の専門展示会。事前にこうしたコメが展示してあるとはまったく知らなかったが、ブース正面に「糖質77.9%オフのお米」と大書きしてあったので、立ち寄って商品パンフレットとサンプルをもらった。
「TRICE」と名付けられたこの商品、パンフレットには「お茶碗1杯で食物繊維レタス9個分を含む、米粉とコーンスターチ由来の無添加食品です。普通のご飯100gには糖質が約36.8g含まれているのに対してTRICE100gの糖質はわずか8.1g。通常の食事として召し上がっていただくことで、腸内環境の改善をサポートします」とし、棒グラフで通常のご飯と比較したエネルギーやタンパク、食物繊維、糖質のパーセンテージが出ている。通常ごはん100gの糖質は角砂糖約12個分になるがTRICEは約2.5個分で約9.5個分もカットとイラストで記されており、ダイエット中でなくても通常ごはんでそんなに多く糖質は摂りたくないと思ってしまう。
ブースに立ち寄った際、この会社の代表者に話を聞くと、本業は印刷業だというので俄然興味が涌いてきた。というのは同じ印刷業で、山梨県でコメ作りの別会社を設立、タイであきたこまちの生産・販売に乗り出した経営者がおり、何度か会って話を聞いたが、コメビジネスに対する取り組みの発想がコメ業界人とは全く違うので、TRICEの代表者もコメビジネスについて独自の発想を持っているのではないかと思い、本社に出向いて再度詳しく聞いてみることにした。
代表者は本業の印刷業では3代目で老舗の部類に入る。コメビジネスに乗り出そうと思ったきっかけは、印刷業はピーク時には7兆円の市場があったものが年々減り続けて4兆円まで縮小、かつ寡占化が進み大手10社で3兆7000億円も占め、中小の生き残りが厳しくなっているため新たなビジネスを模索していた。この会社は単に紙に印刷するだけではなく、食品メーカーの包材など幅広い商品の印刷も手掛けており、大手卸や米粉製造業者のトップも面識があった。また、フットネスクラブにも友人がおり、そこでダイエットのために糖質制限している人が多いことを聞いた。糖質制限の代表が「ご飯」であり、これはおかしいと感じた代表者は、それなら糖質が少ないご飯を商品化すれば良いのではないかと思い立った。
思い立ったのが3年前で、すぐさま商品化に動き出したのだが、糖質が少ないコメなど無い。難消化性の成分が多いコメは知っていたが、炊飯して食べてみるとパサパサして美味しくない。そこで米粉とレジスタントスターチを混ぜて人工的にコメを作る方法を試してみたが、炊飯するとすぐ溶けてしまう。溶けないコメを作るのはどうすれば良いのか? そうした画期的な技術を持つ会社があった。この会社はその製法特許を公開していないが、この会社と共同で通常炊飯で糖質が77.9%カットされるコメが誕生した。
このコメを販売する会社を昨年立ち上げ、ホームページでサンプル提供のキャンペーンを売ったところ800人からサンプル依頼があるなど上々の滑り出しであったが、コメント欄に「サンプルが欲しいんですけど炊飯器がないんです」という若い女性の書き込みが多いことで、これには代表者も驚いたが、それならレンジでチンして直ぐに食べられるようにすればよいということで、このコメを使った白飯、鮭ピラフ、十六穀米、キノコのピラフの4種類の冷凍米飯を商品化した。嬉しいことに糖質制限している人向けに宅配弁当を提供している企業からこのコメを使いたいという申し出があった他、大手フットネスクラブからも商品の導入依頼があった。
これだけではなく今新たな商品開発に挑んでいる。それはこのコメを使った「パックご飯」で、出来たばかりの試作品を試食してみた。食べる前は「糖質をカットしたコメなど、ご飯にした時は美味くないだろう」と思っていたが、食べてみると普通のご飯とあまり変わらない。代表者は「ダイエットを気にせずにどんどんご飯を食べてもらいたい」という思いでTRYするという意味と日本の伝統的な「米食文化」(Traditional)を次世代につなげたいという思いからTRICEという名前を付けたという。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
GI取得「かづの牛」など農産物・加工品6産品 農水省2025年1月31日
-
岩手県から至高の牛肉を「いわて牛・いわちくフェア」2月1日から開催 JA全農2025年1月31日
-
「国産米粉メニューフェア」銀座みのりカフェ・みのる食堂で開催 JA全農2025年1月31日
-
「ニッポンの食」で応援 全日本卓球選手権大会(ダブルスの部)に特別協賛 JA全農2025年1月31日
-
サカタのタネの春キャベツ「金系201号」発売60周年 JA全農かながわがPRイベント開催2025年1月31日
-
特殊混和材製品 CO2排出量算定システムの第三者認証を取得 デンカ2025年1月31日
-
鳥インフル リトアニアからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月31日
-
地元新潟の米農家と共同出資 合同会社ナイスライスファームを設立 亀田製菓2025年1月31日
-
青果物の鮮度保持袋「オーラパック」紹介「SMTS2025」に出展 ベルグリーンワイズ2025年1月31日
-
国際協同組合年の意義テーマに「日本共済協会セミナー」オンラインで開催2025年1月31日
-
欧州農薬事業の拡大へ 再編・M&Aも視野に農薬販売2社を完全子会社化 住友化学2025年1月31日
-
BNI強化ソルガムの環境・経済へのメリットを評価 国際農研2025年1月31日
-
「米穀の需給及び価格の安定」要請書 農水省に提出 全米販2025年1月31日
-
「農業の楽しさをもっと身近に」農業クイズを公開 農機具王2025年1月31日
-
鳥インフル 国内47例目 千葉県で確認2025年1月30日
-
初動5年で農業の構造改革 28の目標掲げ毎年検証 次期基本計画2025年1月30日
-
営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが4月に連携開始 地域全体を簡単把握、現場データ管理がより手軽に JA全農と日本農薬(1)2025年1月30日
-
営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが4月に連携開始 地域全体を簡単把握、現場データ管理がより手軽に JA全農と日本農薬(2)2025年1月30日
-
2025年も切り花の品薄単価高が続く【花づくりの現場から 宇田明】第52回2025年1月30日
-
何かと言えば搗いた餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第326回2025年1月30日