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【リレー談話室・JAの現場から】一社全中は協同組合である2019年9月25日

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【藤井晶啓】

 9月30日からJA全中が一般社団法人に組織変更する。この際、「一般社団法人・全国農業協同組合中央会は協同組合です」と明言してはどうだろうか。人も組織も、自らがなんであるかを常に意識することで変わっていくからだ。

◆技術論ではなく意識の問題

 一社全中になることが決まった当時、「一般社団法人ですから、協同組合とはいえません」と言った人がいた。日本は法人法定主義であり、各種協同組合法に基づいて設立された法人以外が「協同組合」を名乗ることはできないことが頭にあったのだろう。また、一般社団法人法が、協同組合原則のような厳格な民主的な運営まで求めていないことを言っていたのかもしれない。
 そんな技術論は先刻承知であり、協同組合としての意識を言っていたのだが、まったく理解されないことが悲しかった記憶がある。農協法にもとづく全中は制度としての農協の枠組みの中に位置づけられていた。「協同組合」の名を持ちながら、行政庁の監督業務を代位する特別の地位を与えられた。その役目が終わったのだ。
 労働者協同組合のみなさんは、NPOや企業組合などの法人格を取得しても「われわれは協同組合」と標ぼうしてきた。彼ら、彼女らの思いには頭が下がる。


協同組合らしい価値を大事に

 一社全中は、協同組合であるJAグループを代表し、総合調整する役割を果たそうという。また、「一社全中はJA綱領の実現をめざす」とある。だからこそ、一社全中は、協同組合原則にもとづいて民主的に運営されることは当然だ。
 協同組合原則では、「協同組合は、人々が自主的に結びついた自律の組織であり、経済的・社会的・文化的に共通して必要とするものや強い願いを充たすことを目的とする」とある。一社全中があてはまることはいうまでもない。
 そして、自助、自己責任、民主主義、平等、公平、連帯という社会的価値とあわせて、正直、公開、社会的責任、他者への配慮といった倫理的価値を大切にするのが協同組合である。これからは、指導機関である全中以上に、協同組合らしい価値を大事にする一社全中であることを期待している。

協同組合原則に基づく運営を

 協同組合運動がなぜ運動なのか。それは、協同たろうという意思が本当にみんなの共通した願いであるのかを常に確認し続けないと協同組合という組織自体が成り立たないからだ。
 常に共通した意思を民主的に確認することは手間がかかり、一見非効率的に見える。しかし、その手間こそが協同組合の力の源泉である。一社全中が代表調整機能を果たすとは、この手間がかかる意思決定に向き合うということだ。
 そのためには、指導機関時代以上に、情報をガラス張りにし、会員との対話を時間がかかっても丁寧にすすめることが求められるだろう。それが第2原則の民主的運営ではないか。
 また、第4原則の政治的な自主・自立および第5原則の教育をリードする役目は一社全中でなければできないことだろう。
 ところで、第1原則の「組合員としての責任を引き受けようとする人には、誰でも開かれている」とある通り、事業利用、出資、運営参画の三位一体は、加入した会員の責任でもある。
 一社全中が、会員から求められる機能を発揮するには十分な予算が必要である。当然、会員が納得して拠出できる範囲でなければならないことは言うまでもない。
 そのうえで強調したいことは、会員であるJA・県中央会・連合会の全面的な理解と責任を基礎にしなければ、一社全中そのものが成立しない、という点である。会員の判断が一社全中の経営に直結するという意味では、一社全中はより協同組合らしい組織になったといえるのではないか。


協同組合を体現する組織へ

 全中創設にかかわり、後に全中常務となった一楽照雄は、「協同組合は、組合員一人一人の経済的欲望を達成することだけでなく、自立の精神を前提に、お互いに助け合う精神を基本にすべき」と述べている。今、経済合理性だけでなく、協同する価値が問われている。一社全中が「協同組合とは」を体現する組織になることを会員となったJAグループはみんなが願っているはずである。


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