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【熊野孝文・米マーケット情報】「もち米をめぐる状況」から分かるもち米の構造変化2019年10月29日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 全国団体が10月にまとめた「もち米をめぐる状況」と言う資料にもち米のデータが詳しく出ている。詳しいだけでなく今まで公表されて来なかったデータも出ているので、長くなるが紹介したい。

 もち米については30万tを超える国産農産物であるにも関わらず農水省の統計情報部は調査していないので、推計に頼るしかないが、全国団体の集荷数量や検査数量は分かるので資料にはこれが整理されている。

 まず、加工用もち米を除いた一般もち米の集荷数量は、平成27年産10万3620tであったが30年産米は7万6372tにまで減少している。これは近年もち米の全体需給がだぶつき気味であったことから作付抑制策がとられたことに加え、北海道と新潟と言うもち米の2大産地の作柄が良くなかったことが原因。次に平成28年産から30年産までの主要もち米産地の平均検査数量とこのうち一般もち米として検査した数量が出ており、これは大変興味深いデータ。なぜなら農水省は制度別の検査数量を公表しなくなり、3年間平均でもこうしたデータが出て来るのは珍しい。総検査数量の多い産地ベスト10は、1位北海道4万1374t、2位新潟3万0844t、3位秋田2万7976t、4位佐賀2万4243t、5位熊本1万3037t、6位岩手1万0974t、7位千葉1万0320t、8位山形9279t、9位宮城6574t、10位富山4919tという順。このうち一般もち米として検査した数量が極めて少ないのが新潟、秋田、千葉県で、その比率は新潟県が23%、秋田県が9%、千葉県に至ってはわずか3%の278tしかない。この3県に共通しているのは、いずれも減反政策下ではいわゆる「過剰作付県」であり、これを解消すべく転作作物扱いになる加工用もち米に生産をシフトしたことにある。
 秋田県は一大過剰作付地であった大潟村がこぞって加工用もち米にシフトしたことから県全体が減反を達成したばかりは深堀県になってしまったほどである。千葉県はそこまで行かなかったが、国の助成に加え、加工用もち米に地元自治体が手厚い助成措置を講じたことから一般もち米を生産するより生産者手取りが良くなり、大規模生産者が組織的に加工用もち米を作りに乗り出し1万tを超えるまでになった。このことを生産構造の面からみると全体の生産面積は減少しているものの転作作物扱いの加工用もち米の作付が増えたことにより、供給面では一般もち米と加工用もち米のウエイトが逆転するという現象が起きている。そのことは当然のこととしてもち米を使用する側にも表れている。

 業種別のもち米使用状況は農水省の食品産業動態調査をもとに推計された数字が出ている。
 米菓業界はあられの原料としてもち米を使用しているが、平成27年度は8万1461tを使用していたが、平成30年は6万3907tに減少している。平成30年度で使用しているもち米を制度別にみると最も多いのが国産加工用もち米で2万6243tになっており、全体の41%を占めている。次に多いのが一般国産もち米の1万5500tで比率は24%。これ以外に外国産もち米が2110t、輸入もち粉調整品が8007tとなっている。

 米穀粉業界は、平成27年は3万1681tであったものが平成30年には2万6760tに減少している。制度別には最も多いのが一般もち米で8958t、次に多いのがいわゆる特定米穀や三県のもち米で6820t、その次が新規需要もち米(米粉用もち米)で5631tになっており、加工用もち米は5238t。
 包装餅業界の使用量は平成29年度までしか出ていないが、その数量は5万4742tで、平成26年との比較では4820t増加している。制度別使用量では一般もち米は3万324tで最も多いが加工用もち米2万3375t使用している。農水省が加工用として認定する条件は「外国産もち米の使用を止め国産米に振り返る」ことと「新規需要が見込まれる」ことの二点だが、包装餅業界は、国産もち米使用を謳って来たにも関わらず、いつの間にか加工用もち米の使用量が2万tを超すまでになっている。

 加工米飯業界も29年は2万1621tのもち米を使用しているがこの内1984tは加工用もち米である。つまり農水省が加工用米と認定すれば加工用もち米として使用出来るようになっているのである。


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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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