【熊野孝文・米マーケット情報】お米のマヨネーズまで登場したコメ由来のグルテンフリー食品2019年11月5日
11月1日、2日の2日間にわたり池袋のサンシャインシティで開催された実りのフェスティバル。全国の都道府県がそれぞれブースを構え、自慢の農水産畜産物を紹介・即売した。コメ関連は各産地とも新品種を試食提供するなどPRに力が入っていた。全中のブースでは米粉で作ったワッフルやペンネ、タピオカ風のミルクティーなどの米粉食品を販売、午前中に売り切れるほど人気があった。
販売ブースの隣には「米粉作り体験コーナー」を設置、すり鉢で精米から米粉を作るというイベントも行い、家族連れが大勢参加していた。その会場にはパネルで「グルテンフリー」が大きく紹介されていた。
米粉と言えば「グルテンフリー」が切り口になっており、全中のブースで担当に聞いてみると米粉食品を買いに来た人はグルテンフリーのことについて知っている人が多かったという。ただし、米粉食品が順調に伸びているのかと言うとそうでもない。
日本米粉協会がまとめた「近年の米粉市場動向について」と題する資料によると平成21年に5000tの米粉需要があり、国の推進策もあり平成25年には2万5000tにまで伸びた。
その後低迷、平成29年まで横ばいか減少傾向がつづいた。30年に3万tまで伸び、今年は3万6000tの需要があると見込まれているが、今度は生産量が足りないというチグハグな状況にある。改めて解説する必要はないかもしれないが、米粉用米は、制度上は転作作物扱いで新規需要米の括りの中に入っており、助成額は飼料用米と同じである。違うのは確実に需要が見込まれないと後々面倒なことになる。例えば作付段階で米粉製粉業者と契約して米粉用米を作ることになった生産者がいるとする。ところが製粉業者が予定した需要が見込めず、契約した米粉用米が必要なくなったとしても簡単にはキャンセルできない。実際に米粉用米を契約した業者の中には3年間も米粉用米を抱える羽目になったところさえある。
また、逆のパターンもある。20億円もの資金を注ぎ込んで米粉専用工場を作ったものの肝心の米粉用米の手当てが進まず、行政に飼料用米からの転用を求めたもののそれが認められず行き詰まった企業さえあった。米粉製粉業者の中には新規需要を開拓すべく、30㎏の米粉用米を試験製粉したところ農政事務所からぬかの行き先まで聞かれるなど徹底的に調べられたことから、経営者は「これ以上農水省はわけの分からない法律を作るのは止めて欲しい」と憤慨していた。この経営者ではなくても同じコメを用途によって法で流通を縛るのが産業政策として正しいのか根本的な議論が必要なはずなのに、相変わらず需給のミスマッチが起きたと言って騒いでいるに過ぎない。財政当局も飼料用米も含めこの制度の在り方に疑問を持っており、水面下で調査を始めているので遠くない将来、抜本的な見直し議論があるかもしれない。
制度論はひとまず置くとして、米粉の将来需要はというと大変明るい情報を提供する人もいる。
日本米粉協会が主催したノングルテン米粉普及会議で、グルテン検出キットを販売している会社の元社長が海外のグルテンフリー食品の市場規模について、世界市場は、2017年は7300億円であるが年率9.5%の伸びで2026年には1兆3300億円になるというデータを示し、健康志向の人はグルテンの摂取を控えると言っていた。
新宿で開催されたアレルギー展ではパンメーカーやソースメーカーなどが米粉を原料にしたパンやたこ焼き、お好み焼き、ケーキなど様々なグルテンフリー食品を紹介していた。その中でひときわ人だかりが出来ていたのが「お米で作ったマヨネーズ」を紹介していた会社だ。この会社は滋賀県の会社で、お米マヨネーズはコメを乳酸菌で発酵させたものを原料にして作っているのだが、その乳酸菌は「鮒ずし」を発酵させる際に詰めるご飯の中で発生する乳酸菌のうち特に酸に強い3種を使っている。
同社によると一般的な牛乳から作るヨーグルトの乳酸菌に比べ、コメ由来の乳酸菌は胃酸に強く腸まで届くため、腸内環境改善効果や花粉症軽減、免疫機能向上もあるとされ、医師が評価しており、テレビ番組でも紹介された。また、腸の潰瘍を持つ著名人も摂取して改善効果があったという。この乳酸菌を使って特別栽培米や有機JASのコメと地元の酒蔵が使用する湧き水を使ってお米のマヨネーズを作った。試食すると一般的なマヨネーズに比べかなり酸っぱいが、この酸っぱさが胃酸に強いことを表している。
活きた乳酸菌に期待される効果はプロバイオティクスと呼ばれているが、コメ由来の乳酸菌がこうした効果を持ち、かつアレルゲン物資を使わずに製品化されている。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日