人事2024 左バナー 
JA全農人事情報
左カラム_病害虫情報2021
新聞購読申込 230901
左カラム_コラム_正義派の農政論_pc
左カラム_コラム_米マーケット情報_pc
左カラム_コラム_地方の眼力_pc
左カラム_コラム_食料・農業問題 本質と裏側
左カラム_コラム_昔の農村・今の世の中_pc
左カラム_コラム_花づくり_pc
左カラム_コラム_グローバルとローカル_pc
左カラム_コラム_TPPから見える風景_pc
左カラム_コラム_ムラの角から_pc
241029 グレインSP SP
日本曹達 231012 PC
日本曹達 231012 SP

【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(156)今年の米国産トウモロコシを振り返る2019年11月15日

一覧へ

【三石誠司 宮城大学教授】

 今年の米国産トウモロコシは全体としてかなり遅れたが、ようやく落ち着いたようだ。11月10日時点の主要18州収穫進度は平年の85%に対し今年は66%で3分の2が終了した。だが、まだアイオワ州などは43%だ。春先の天候不順による作付けの遅れと生育後期の降雨が最後まで影響したが、何とか生産量136億6100万ブッシェル(3億4700万トン、前年比▲5%、トウモロコシ1ブッシェルは約25.4kg)が確保できたのは、少し前なら信じられない思いである。

 そもそも今年は春先から大変な日が続いていた。3月中旬には米国中西部で豪雨、降雪によりミシシッピ川流域と中西部の広範囲にわたる大洪水が起き、作付けの大幅な遅れが懸念された。少し時系列で追ってみよう。数字は左から今年、昨年、平年(過去5年間平均)の主要18州割合である。本当は毎週の数字を見るのが良いのだが、とりあえず代表的なポイントのみをまとめたのが下の表(数字は主要18州の進度%)である。
米国農務省資料より 

 これを見ると、作付けの遅れから生育の遅れ、受粉期直前の6月末(シルキングの時期)でも大幅に遅れている。7~8月の天候で進度はかなり回復したものの、7月末段階でのドウ・ステージはわずか13%で平年を大きく下回る。デント・ステージは9月でようやく4割に達した。9月中旬には降雨の影響もあり月末段階で完熟が例年の半分に過ぎないレベルであったことがわかる。
 収穫進度は11月3日で52%、11月10日で66%とようやく3分の2に達したが、昨年、平年はともに同時期で85%であり、本来は終盤の時期だ。
 全体進度を通して見ると、スタートの4割の遅れは夏場でかなり追いついたが、それでも最後は昨年・平年より2割ほど遅れている...ということになる。
 
 それにしても、2019年11月8日に発表された需給見通しによると、今年の米国の生産量は136億6100万ブッシェル、1エーカー当たりの単収は167ブッシェルである。品質は5段階評価で見た場合、上位2段階の合計が58%で昨年の68%より10ポイント低い。筆者が買付けをしていた頃は、一般的に「上位2段階の合計が6割あれば豊作」と言われていた。つまり、今年の作柄は絶対値としてはそれなりの水準にあるとはいえ、過去数年の使用感との比較になると微妙かもしれない。
 なお、1980年代には90億ブッシェル程度で史上最高の豊作と言われていたことや、2003年に初めて100億ブッシェルを超えたことを思い出せば、農地の総面積は変わらないのにここ20年で約40億ブッシェルの追加生産が可能になったということにある。
 
米国農務省資料より
 
 これに伴い、エーカー当たりの単収は、1980年代後半でも110ブッシェルで驚いていたものが、2000年代には140~150ブッシェル、2010年代に入るとトレンドとしては160~170ブッシェルが全米平均で普通になってきた。害虫や天候、その他のストレスをことごとく克服してきた技術の進歩は本当に驚くべきものがある。

 一方、需要面を見ると、現在、米国産トウモロコシは、総量の約半分が食品・種子・工業用に使用されている。エタノール及びその副産物は総需要の4割を占め、単一で最大の需要元である。エタノールとほぼ同量を占めるのが、かつて需要1位であった米国内畜産需要である。残った2割を半分ずつ、輸出用とその他(食品・種子)が占める。つまり、「4:4:1:1」という非常にわかりやすい需要構成になっている。
 この背景には、過去10年間でエタノール生産量が109億ガロン(2009)から161億ガロン(2018)へと大きく伸び、現在でも米国が世界のエタノール生産の56%を占めている(2位はブラジルの28%、こちらはサトウキビが主たる原料)という現実がある。
 
 なお、2005年エネルギー政策法による「再生燃料基準」の導入で本格化したバイオエタノールは、現在では米国産トウモロコシにおいて飼料用需要を上回るまでに成長してきたということになる。この政策には批判もあるが、中長期的に見れば、トウモロコシの生産量向上に伴う余剰分を輸出市場の開拓ではなく国内新規マーケットの開拓で補った(正確に言えば、石油燃料から再生可能燃料への転換)という点では、日本のコメ減反とは全く正反対のアプローチである点が興味深い。もっとも国内市場が巨大な米国だからこそ可能であったのかもしれないが...。

米国農務省資料より


本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

重要な記事

20241118 トウキョウX SPSP

最新の記事

クミアイ化学右カラムSP

みどり戦略

Z-GIS 右正方形2 SP 230630

注目のテーマ

注目のテーマ

JA共済連:SP

JA人事

JAバンク:SP

注目のタグ

topへ戻る