【JCA週報】協同会社における職員への協同組合教育2019年11月18日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「協同会社における職員への協同組合教育」です。協同組合研究誌「にじ」2019年秋号に寄稿いただいた株式会社ジェイエイ越智今治 村上 浩一代表取締役専務の実践報告を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年秋号
「協同組合と教育 -組合員・職員の学びと研究者からの発信」
協同会社における職員への協同組合教育
「協同組合理念に基づく人づくりの取り組み」-株式会社ジェイエイ越智今治の実践報告-
村上浩一 JAおちいまばりグループ 株式会社ジェイエイ越智今治 代表取締役専務
1.はじめに
JAおちいまばりグループは、第7次中期経営計画(平成28年度~平成30年度)において、「創造的自己改革への挑戦」~農業者の所得増大と地域の活性化に地域協同組合として全力を尽くす~ をテーマとして掲げるとともに、農業振興計画(ochiimaレインボープラン)を策定し、消費者の信頼に応え、安全で安心な管内農畜産物を持続的・安定的に供給できる地域農業の実現とJA事業を通じた生活インフラ機能を発揮し、暮らしやすい地域社会の実現を目指して取り組んでまいりました。中でも、地域の活性化に地域協同組合として全力を尽くすためには、生活事業を主体とした協同会社の社員従業員全員が協同組合の理念を理解し、組合員・利用者の事業利用を通じて地域の活性化に貢献するという意識を持つことで役割を最大限に発揮できものと考えました。そのためには、社員従業員一人ひとりの意識改革に取り組み、事業運営の基本方針である「社員自らが考え行動する職場風土づくり」を醸成するため、当社手作りの人材育成を行ってまいりました。
(略)
8.なぜ子会社が協同組合と同じ理念で経営するのか
JAの子会社である協同会社の設立は、多様化・高度化した組合員ニーズに対応するため積極的な「迅速な意思決定と機動的な運営」「高度な専門知識と柔軟な労務管理」を目的とした場合と消極的な「赤字事業部門の合理化・効率化」の場合があります。当協同会社への移管時は取扱高の大半を占める店舗事業が赤字であり、収支改善への取り組みと運営の強化を目的に出向者を社員へ転籍し、役員社員従業員全員が不退転の決意で取り組んできました。幸いにして会社全体で利益確保ができており、10年間以上なんとか協同会社として地域に根ざした事業活動ができていると思っています。
その事業活動において、利用者は親組合の組合員であり、組合員は親組合の出資者であり、出資者であるからJA事業の運営者でもあります。そのため、事業を通じて組合員の生産と生活を守り向上させることを会社経営の目的とするならば、親組合である協同組合と同じ理念を持ち、地域の中ではJAおちいまばりグループとして認知されなければ地域に根ざした事業活動ができないことになってしまいます。組合員から見れば、協同会社の社員従業員であっても親組合であるJAおちいまばりの職員と何ら変わらない認識を持っており、協同会社も協同組合と同じ理念で経営することは当たり前のことだと思っています。
9.協同会社として事業を通じて組合員・地域に貢献できる人づくり
生活事業を中心とした協同会社として356 人の要員体制で事業運営を行っていますが、正社員は68名で19.1%しかいません。言い換えれば、80%以上が臨時社員で、その内49.6%が短時間勤務のアルバイト社員となっています。そのため、日々の業務はそれぞれの立場や役割に応じて行ってはいるものの、臨時社員は自分に与えられた業務以外は中々知ることもできませんでした。特に、終日勤務のパート社員の方々に会社全体がどのような業務を行っているか、どのような目的で業務を行っているか、また、今何が求められているかなどを知っていただき、それぞれの立場で会社に貢献し、自分の職場や会社を良くしてもらいたいという思いに駆られました。その思いを形にするためには、正社員や一部の者への教育研修だけでは理解されないと考え、平成28年7月から協同会社独自で社員従業員の人材育成に取り組むこととしました。
(略)
研修に出席したパート社員からは、(略)「今回の研修で各事業所がどのようなことをしているのか、地域社会へどのような貢献をしているのか、今までは他の事業所のことはあまり知らなかったので、大変勉強になりました。グループ討議では、各事業所の方と色々な意見の交換ができ、違った視点からの意見や考え方にふれ、解決策も一つではない事を再確認し、自ら考え行動し、チームワークにつなげて行くことが自分達の力になっているのではないかと考えました。」など、とても前向きな考え方を持っていただけたと思います。
(略)
12.まとめ 「社員が自ら考え行動する職場風土づくり」を基本として、組合員・地域住民から必要とされる協同会社であり続けるための今後の展開について
今まで述べてまいりました「協同会社における協同組合理念に基づく人づくりの取り組み」は、当社は株式会社ではありますが、地域の中では親組合であるJAおちいまばりと同一と見なされており、それゆえに協同会社としては「地域に根ざした協同組合」の考え方を前面に出し、「農家生産者とともに何ができるか」「親組合と連携して組合員や地域住民に何ができるか」を役員社員従業員全員が常に問い続け、事業活動に生かしていく必要があります。
現在、経営環境が非常に厳しいために当社としてはコスト削減による利益優先になりがちですが、営業利益確保を模索しながら、それでも事業を通じて組合員・地域住民の願いに応えるために、赤字店舗も存続できるよう最大限の努力をしていくことが求められています。経営が厳しい時だからこそ、人づくりが大切であり、協同組合理念と経営理念を念頭に組合員・地域住民から信頼される人材が育ち、組合員・地域住民から必要とされ続けるため、協同会社としての役割を発揮していきたいと考えています。
協同組合研究誌「にじ」 2019秋号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
(ご購読のご案内)
日本協同組合連携機構(JCA) 基礎研究部まで電話・FAX・Eメールでお問い合わせください。
(TEL:03-6280-7252 FAX:03-3268-8761 E-Mail:kenkyu@japan.coop )
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
コラム一覧【JCA週報】
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(1)新しい仲間との出会い 次世代へつなげるバトン 青森県 JA八戸女性部 坂本順子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(2)この地域を、次世代に繋ぐ、私たち 山梨県 JA南アルプス市女性部 保坂美紀子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(3)私たちの力で地域をささえ愛 愛知県 JA愛知東女性部 小山彩さん2025年1月23日
-
旧正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第325回2025年1月23日
-
地元産米を毎月お届け 「お米サポート」スタート JAいずみの2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日