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【熊野孝文・米マーケット情報】先行き不透明感増す元年産米の相場動向2019年11月19日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 先週末に行われた米穀業者の席上取引会。取引会前の情報交換会では、産地側からは関東の業者から収量の低下と品質の劣化が伝えられたのに対して、消費地の業者からは荷捌きの停滞と販売先との値上げ交渉が難航している状況が伝えられた。

 具体的な情報内容はその月によって違うが、元年産米が出回り始めてからの情報としては売り手、買い手とも同じトーンである。

 では、実際の取引がどうだったのかというと買い手が茨城コシヒカリ1等を持込1万4400円の買い声を上げたのに対して競り合った結果、1万4500円で1車成約したのに続き、茨城あきたこまち1等が置場1万3900円で2車、千葉コシヒカリ1等が置場1万4250円で1車、埼玉彩のかがやき未検が置き場1万3300円で1車、この他6月末までの引取り条件で秋田あきたこまち1等が1万5050円で1車成約した。
 成約した価格だけ見ると相場的にはやや軟調ということも出来るが、趨勢としては出回り期から大きく変動していない。変動しない要因は需給が均衡しているというよりも先行きが不透明で判断しづらい環境になっていることが大きい。元年産水稲の作況も10月15日現在は前回に比べ2ポイント下がって99になり、その後の台風・大雨被害は農水省が調査するたびに被害額が大きくなっており、冠水した水田や施設の被害状況がどの程度なのかはっきりしないことも一つの要素になっているが、元年産米の品位が昨年産とは大きく違うことも影響している。
 新潟県のコシヒカリの検査数量は19万8774tまで積み上がったが(10月15日現在)、等級比率は1等25.1%、2等62.8%、3等11.0%、規格外1.1%になっており、2等、3等が大半を占めるという状況になっている。地区別の
1等比率は一般が20.1%、魚沼28.2%、岩船50.9%、佐渡54.2%で、等級落ちの原因は白未熟粒(シラタ)であり、精米した際の歩留まりが落ちることが想定されるため大手卸の中にはトータルの供給量としても量販店で販売する新潟コシヒカリの数量が足らなくなると見ている卸もいる。
 こうした見方は新潟コシ先物市場の価格にも反映、15日の引値は端境期にあたる6月限は1万7130円、8月限は1万7190円まで上伸した。ただし、令和2年産の最初の受渡し限月になる10月限は1万6340円で850円もの新古逆ザヤになっている。この新古逆ザヤがどう変化して行くのかは令和2年産の作付け動向にもよるが、少なくとも現時点では、この価格を見る限り2年産の主食用コシヒカリの作付が増えると予測されていることになる。
 全国的な動向はどうかというと元年産主食用生産量は作況が低下したことにより、前年産より5万7000t少ない727万tになった。気を付けなければならないのが作況低下の主な要因は九州でのウンカ被害等による大幅な生産量低下であり、商品化率の高い北海道や東北は平年作を上回る作況指数で、必ずしも主食用の供給量が減少するとは限らない。問題は品質で、農水省の調査では元年産米の整粒歩合は68.6%で前年産を0.6ポイント下回っている。さらに乳白・着色粒は5.2%も発生、数量ベースでは38万tにもなる。
 加えて米穀業者がもっとも懸念しているのが、中米の発生減少と品位の低下である。中米とは農家やライスセンターなどで選別する際に使用するライスグレーダの網目から篩われた玄米を再選別して主食用増量原料として使用されるもので、精米コストを下げる際に欠くことができない原料米である。原料米搗精業者によると30年産米は無選別のくず米を再選別すると40%ぐらいの中米が採れたが、元年産米は30%も採れないという。30年産米は中米の豊作年であったが、元年産は乳白・着色によりさらに歩留まりが低下しており「真逆の状態」だという。
 検査1等米を精米すると歩留まりは90~91%というのが普通だが、元年産は89%にしか上がらないという。もちろん産地にもよるが、主食用米搗精業者の多くからそうした声が聞かれ、精米コストの増高要因になっている。精米コストが上がったからといって相手先に値上げ要求してもそれが通るような環境ではない。新米の値上げが通った量販店も販売が芳しくないことから店頭価格の引き下げに動くところは増え、大手量販店の中には今月に入って精米商品の全品値引きセールを実施するところも出始めた。


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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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