【JCA週報】松岡公明「蝶を集めるには花を育てよ」2019年11月25日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田英一日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、2010年秋号の巻頭オピニオン「蝶を集めるには花を育てよ」です。JCAの協同組合研究誌「にじ」は当時JCAの前身である協同組合経営研究所で発行していました。本稿は常務理事に着任したばかりの松岡公明氏が書いたものです。
協同組合研究誌「にじ」2010年秋号「蝶を集めるには花を育てよ」
協同組合経営研究所 常務理事 松岡 公明
「蝶を集めるには花を育てよ」という言葉がある。蝶を捕まえようと追いかけ回しても、逆に蝶は逃げていってしまう。花を育て、蝶が「集まってくる環境」をつくること、つまり、物事何でも「いきなり」ではなく、ワンクッション置いて考えることの重要性を指摘している。組合員の「顧客化」が問題となっている今日の協同組合運動のあり方を考える上で意義のある言葉だろう。
JAの事業推進を揶揄する言葉に「逃げる組合員、追うJA」がある。協同組合の「出資・参画・利用」の三原則を大上段に振りかざしても、組合員はついてこない。組合員を「顧客」として追いかけるだけでは、もう沢山だと嫌がられ、それこそ逃げられてしまう。
「集める」と「集まる」とでは、「め」と「ま」 の一字で大きな違いがある。協同組合は、当然、組合員が「集まる」でなければならない。では、JAにとって「集める」花は何か。それは、やはり営農経済事業だろう。しかし、農業生産基盤の脆弱化に追走するかのようにJAの営農指導も弱体化しているようだ。参加・民主的運営システムのもと、JAが情報開示と説明責任を果たし、組合員と共に考え、共に悩み、共に学び合うなかで、組合員が事業・活動を理解し納得することが「集まる」前提となるだろう。
現在、政府で議論されている「新たな公共」は協同組合の位置づけが不明瞭のままとなっている。地域に根ざした協同組合活動の社会化について議論を深め、協同組合陣営の社会的評価の実績づくりをすすめていかなければならない。自分たちだけの活動に留まらず、開かれた組織として、地域のいろいろな組織とネットワークを組み、協同の輪を広げていくべきだろう。そのネットワークを通じて「JAがあってよかったね」と地元住民の評価が高まり、支持や共感が広がっていけば、多様な人びとや組織との接点ができ、それが社会的存在感の醸成となっていくだろう。
JAが地域社会の一つの「器」としていろいろな「小さな協同の花」を咲かせ、地域住民がそこに集まってくる、その「花」の種は「地元学」、すなわち地域課題や地域資源の掘り起こしからいろいろ見つけ出すことができるだろう。 そうした「花を育てる」運動論が重要である。
(協同組合研究誌「にじ」 2010秋号より)
「にじ」最新号(2019年秋号)のご案内
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
(「にじ」ご購読のご案内)
日本協同組合連携機構(JCA) 基礎研究部まで電話・FAX・Eメールでお問い合わせください。
(TEL:03-6280-7252 FAX:03-3268-8761 E-Mail:kenkyu@japan.coop)
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
コラム一覧【JCA週報】
重要な記事
最新の記事
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日
-
厚木・世田谷・北海道オホーツクの3キャンパスで収穫祭を開催 東京農大2024年11月22日
-
大気中の窒素を植物に有効利用 バイオスティミュラント「エヌキャッチ」新発売 ファイトクローム2024年11月22日
-
融雪剤・沿岸地域の潮風に高い洗浄効果「MUFB温水洗浄機」網走バスに導入 丸山製作所2024年11月22日
-
農薬散布を効率化 最新ドローンなど無料実演セミナー 九州3会場で開催 セキド2024年11月22日
-
能登半島地震緊急支援募金で中間報告 生産者や支援者が現状を紹介 パルシステム連合会2024年11月22日